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第十五話  白河宿

第十五話    白河しらかわ宿じゅく



「落ちついて話せ! 何があったのだ?」

婦人隊長の中野は、男性を落ち着かせた。 そして男性が話し出す。



「……わかった」 


それは何者かが会津の若者に文を渡し、江戸に呼び寄せることで途中の白河で待ち構えては軟禁なんきんして会津の戦力を下げる……


「そして京への援軍の阻止そしをすること……で、間違いないんだな?」


 中野は、逃げてきた男性に話し確認した。

 男性は頷き、落ち着きを取り戻していく。



(しかし本当か? 何故に白河なのだ?) 中野は考えをめぐらせていた。



その中で、「でも、貴女たちは旅の方でしょうから、大丈夫ですよ。」


と、男性は言い出しす。



婦人隊はキョトンとして

「旅? いや、私たちは会津の……」



中野は男性に説明しようとしたが男性は話しを被せてきた。

「ほら、その女性ひとの恰好……たび芸人げいにんの方でしょ!?」



「って、えぇぇぇー??」 花の恰好を見た男性の言葉に、婦人隊が驚く。



(うぅぅ……まさか、この恰好が思わぬ誤解ごかいを生じている……婦人隊じゃなく旅芸人と思われている……威厳いげんなしだわ……) 花は母親を軽くうらんだ。



「それで貴様は、どうして宿場から逃げ出したのだ?」

中野は男性に問いただす。 



「えっと……なんか怖い感じだったし、会津の人が沢山と集められていたので監禁かんきん奴隷どれいとして何かをされるのでは……と」


男性はそう言ったが、見ても聞いてもないことだった。



「それで、貴様が易々《やすやす》と逃げ出せたのは何でだ?」


中野が男性に問い詰めたが、反応がイマイチであった。


「それはすきをみて……」


男性の言葉に歯切はぎれが悪くなったのを、花は見逃さなかった。



「そうですか。 では私たちが貴方を保護いたします。 では、こちらへ」


花はそう言って、男性を道横みちよこの林の中まで案内をすると




「―えっ? 何をするのですか?」

男性が花に手を後ろで縛られ、思わず声を上げる。



「あなた、会津の人ではないですね?」 

花は男性に向かって言い出した。



「えっ?」 婦人隊、全員が驚いた。



「……」 男性は無言ではあるが、顔に少し変化が出る。



婦人隊はしばらくの間、無言で男性を見つめていた。



そうすると男性は口を開く。

「とにかく会津の人間だ。 早く縄をほどいて会津に帰してくれ!」

と、花に言うと



「会津の掟の最後は?」 花が男性に聞く。



「それは……」 男性は言えなかった。

 

「 “ならぬことは ならぬことなのです ” つまり貴方の縄をほどく事は出来ません」 花が男性に言うと



「ぐっ……」 男性は悔しそうな顔になっていた。



「私が貴方に聞きたい事が三つあります。 まことの事を話して頂きたいのです」 花は、顔を近づける。



「一つ、貴方が何処の人であるか?」

「二つ、貴方が白河で会津の人を呼び寄せている理由わけ

「三つ、工藤晋太郎は何処に居るか?」 花は男性に回答かいとうを求めた。



男性は返事を渋った表情だったが、段々と口を開き始める。


「私は京で、佐久間さくま 象山しょうざん先生の元にいる者です。 来たるいくさの準備にて白河で陣を作るようにと命じられました」


「ここで会津進行の足止めになると思い、動ける人を借り、部隊の訓練を行おうとしておりました。 ただ……工藤晋太郎様と言う方は知りません。 本当です」


男性は正直に話したようだが、婦人隊は京の事は分かっていない為、聞き入れるしかなかった。



(会津の人も大事なんだけど、晋太郎さんが無事か知りたいんだよな……それが白河に来た一番の用事だし……)

ちょっとだけ目的が違う花と鈴であった。



「では、会津の人たちが集まっている場所まで案内してもらおうか。 妙な真似をしたり、逃げ出したら分かっているだろうな」 中野は、男性に凄む。



こうして男性の案内のもと、婦人隊は白河の宿場しゅくばまちに入った。


町には小さい宿場が立ち並んでいて、人の往来おうらいも盛んなようだ。



「あそこです……」 男性は、小さな宿場を指さした。


男性が案内した宿場に到着すると、「入るぞ」 と中野が声を掛けた。



宿場に入ると沢山の会津兵士がいた。 中には白虎隊の隊士もいた。



中野は会津の兵士に声をかける。

「おい。大丈夫か? ここにはどれくらいの期間いるのだ?」 


「四日ほどになります。 しっかり訓練もしていますし、食事にも困っていませんが……」 


「おい、会津の人はこの宿場だけか? 他の場所には居ないのか?」



「はい、ここだけです」 中野の問いに男性は答えたが、花はちない顔をしていた。



「貴方の仲間は何処ですか? 貴方、一人でこの人数の管理は出来ないはずですが……」


花は、とららえた男性にる。 



「これから案内いたします。 こちらへ」 男性は宿場の外に案内した。



宿場を出て、少し歩いた場所に訓練が出来る広場があり

そこには沢山の兵士が訓練をしていて刀、銃なども用意されている。


そして、見る限りでは部隊としても機能しているように見えた。



すると男性の仲間が歩み寄ってきた。



「私は佐久間象山先生の所に居ます、多田ただ 五郎ごろうと申します。 この白河にて責任者となります……ここからは私が説明していきましょう」


多田は、婦人隊に礼をする。



そうして多田から京の状況と、白河での任務や状況などの説明を受けた。



「そうか、分かった。 しかし何故に会津に使いを出さず、誘拐のような真似をしたのだ?」 中野は、そこが納得していかなかった。



「それは、会津に余所者よそものまぎれていれば情報がれる。 城の者に使いを出せばおおやけになるし、象山先生が幕府への肩入れが明るみになってしまうからな……」

多田の説明はもっともだ。 婦人隊は納得した。



「そうか……これは内密に行ってくれ。 私たちは会津に戻る。 くれぐれも会津の人を大切に頼む」 中野は、多田に頭を下げる。


 

「わかった。 ただ……」 多田は何か言ったが、最後の方は聞き取れなかった。



「ん? なんて言った?」 中野は、多田に聞き直す。



「えっ、あっ、その……この娘は……」 多田は相変わらずハッキリ言わない。



「その……旅芸人か?」 多田の言葉で婦人隊は唖然とした。


“また言われた…… ” 花は落ち込んでいた。

 


「その……珍しい服だし、気になっていると言うか……」 多田の顔が赤くなる。



「うん? あぁ花か?」 



(えーーっ 多田さん私が気に入ったの? 晋太郎さんがいるのにマイッタな~) と、最後まで聞いていないのに照れる花がいた。



「じゃ、花が残るか……」 中野は呟く。



(いやいや、献上品けんじょうひんあつかいしないで……) 苦笑いする花である。



「ふふふっ……花さんのおものだけに気を取られているようですわね。 多田様……本来、女子の魅力みりょくはココじゃないかしら?」


そう言って鈴が乱入し、胸を寄せてアピールを始めた。


目的は不明だが、何故か花と張り合ってしまうイタイむすめになってしまったようだ。



「なんだか話が変な方に進んでしまいそうだから、もう少し全員で帯同しよう……」

中野の言葉によって婦人隊は白河に残り、訓練の視察を行うことになった。



そして、数日が経った。

婦人隊は晋太郎の手がかりを探していたが、見つからない。


(何処にいるの……? 晋太郎さん……) 花は焦っていく。



花は翌日、多田に白河から江戸までの道筋みちすじを教えてもらっていた。 



(やはり白河を通過しないと江戸に向かえない……) 


花は、晋太郎が見つからない心配と、事故にでもあったのではないかと不安をよぎらせていた。



その後、婦人隊は晋太郎を探すことに尽力じんりょくする。


宿場の一軒一軒に入り、町のいたるところにも足を運んだが晋太郎は見つからなかった。


(晋太郎さん、見つからないな……こんなに会津の人がいるのに……)

花は焦っていく。 


晋太郎に会っていない生活が初めてで、いきどおりさえ感じていた。



「まいったな……こんなに人が多いと食事を用意するのも大変だぜ~」

こう言ったのは多田の仲間である。


花は、多田の仲間の声が耳に入ってきた。


ここの食事など世話係をしているらしいが、多田に愚痴ぐちをこぼしていた。



「あの……私も手伝います!」 花は聞いた手前、手伝いを志願をする。



「それなら、俺と一緒に魚をりに行けるかい?」 多田は、花にお願いをした。


「はい。 近くに川でもあるのですか?」 


すると、 「私も行きたい♪」 と、鈴が寄って来た。



「よし、三人で行こう♪」 そう多田の言葉で三人は川に向かう。




さほど大きな川ではないが小さな橋もあり、三人は橋の上から並んで釣りを始めた。


(戦の準備をしている時に、こんなのって平和だな……晋太郎さんも一緒なら幸せなんだろうな……)

花は少し寂しげな表情で釣りをしていた。



「釣れた♪」 鈴が叫んだ。 初めて魚が釣れて鈴は、はしゃいでいた。



(鈴ちゃん、本当に可愛いんだよな~ 子供っぽい顔や仕草……でも、あの胸なんだよな……) 鈴の歓喜かんきに、花の表情は複雑であった。 

 


釣りをして、食料の確保が出来た三人は、帰る準備をしていたのだが……


「あれは……?」 多田は、川に人が浮いているのを見つけた。

 


 「人だわ!」 

三人は川へ入り、川に浮いている人を引き上げた。



「おい、しっかりしろ!」 多田は浮いていた男性を揺すり、意識を確かめたが返答がなく死んでいる。



三人は宿場まで戻り、荷車を使って亡くなっていた男性を宿場まで運んだ。



「誰がこんなことを……」 亡くなっていた男性は会津の服を着ていた。


この遺体には刀か何かで切り刻まれている跡があった。



(これが戦なのだ……気を許せば同じ目にあう……)

平和に暮らしていた婦人隊は、悲しみの中に覚悟が芽生え始めた。



翌日


「どうやら亡くなったのは彼だけじゃなかったようだ……」

多田の言葉に緊張が走る。 



何人もの会津の人が犠牲になっていた話しを聞いた。


この白河宿では、はぐれた会津の人が次々と犠牲になっていたようだ。



「こうしちゃおれない。 会津の人を救おう!」 中野の言葉に会津藩全員の心に火が付く。



探すこと数日後、見知らぬ男たちが宿場の前に現われた。



「俺達を探していたのか?」 


「貴様らが会津の兵をったのか?」 中野は男に言った。



「あぁ、そうだ。 ここに会津の兵が集まっているのを知って、お前らを長州の所へ連れて行く。 ここで名乗りを上げるんだよ。 大人しくしてれば、命を助けてやるよ」



男たちは山賊さんぞくのようであった。

白河といえば幕府の領地ではあるが、必ずとも幕府に従う者だけではない。


江戸を追われ、領地ギリギリの白河に巣くった山賊も居ない訳でもない。 そんな彼らは会津と対峙したのだ。



「お前ら、たった五人程度で会津の兵 全員を相手にするのか? こちらは十倍以上いるんだぞ。 諦めろ!」


中野は男に向かっておどすように言うと



「ふん!」


男は仲間に合図を送ると刀を抜いた。 その後方から山賊の仲間の男たちが十数名やってきた。



「さて、ついてきてもらおうかな!」 山賊の男が笑いながら手招きをする。


「行く訳ないだろう。 まだこちらの方が優勢ゆうせいだ! お前らが降参するべきだろう?」


中野が山賊に言ったが、降参する気はないようだ。



「それより何故にお前が話しているのだ? そちらの娘がかしらだろ?」

山賊が花に指をさす。 会津の兵はポカンとしていた。



「このむすめだけ恰好が違うし、なんか 変な所をチラチラ見せてくるし……」


山賊が少し照れたように言った。



どうも花の服が目に入り、足元から上に入った切れ込みから見えている部分が気になっているようだ。


 “また私ですか~? ” 花は、自身の服にウンザリしていた。



「私が婦人決死隊の隊長だ。 彼女は服が……訳あってだな……」


中野は山賊にどうでも良い説明をし始めた所で、会津の兵が山賊におそかった。



婦人隊も刀や薙刀を持ち出し、戦いに参加したが男の強さに押され気味でいる。


そこに、 「まてぃ!」


戦いの中、一人の男が現れた。


なんと、晋太郎であった。









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