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第十二話  魔性の女

第十二話    魔性ましょうひと



「花~ 工藤様の所へ配達に行ってくれる?」

雪は晋太郎の家に配達があると、当然のように花を使う。



もちろん花が晋太郎の事が好きなのを知ってのことで、『花が喜ぶ』と思って使っている。



「はーい♪」 と、ウキウキで返事をして支度をすると



「荷物は少し多いから外に出してあるわよ」

母は店の外に用意した荷車を指さす。



「こ、こんなに?」 確かに凄い量であった。

以前の花なら、荷車を引けるか心配になるほどだ。



「では、いってきます」 婦人隊で鍛えている花は荷車を引き、晋太郎の家に向かった。




「ぜぇぜぇ……この距離は流石にキツイ……」

花は歯を食いしばって、なんとか晋太郎の家に到着した。



「こんにちは~」 

花は玄関から声を掛け、門を開けて荷車を敷地の中に入れると



「あらあら花さん、沢山の荷物ありがとう。 重かったでしょう?」

そう優しく声を掛けてくれたのは、晋太郎の母の咲である。



咲は、荷車に乗っている荷物の小さいものから家の中に運びこんだ。



(もう手の火傷も良くなったみたい。 良かった♪)

花は咲の手を見て安心したが


「お母さま、まださわりがあってはいけないので、私が運びます」 

と、咲をいたわった。



テキパキと荷物を家の中に入れて、全ての荷物を運び入れ終わった時


「ご苦労様でした。 少しお茶でも飲んでいってね♪」

咲は居間に通してくれたが先客が居たようだ。



先客の女性は咲より若く見えて、とにかく美人だった。

その女性は笑顔で挨拶をしてくれた。 


「はじめまして。 白木しらき りょうと言います」 白木は上品な笑みで挨拶をすると

「はじめまして。 近藤 花と言います」 花も挨拶をする。



(この発音、少し違うな……京の人かな?)

花は白木が会津の人じゃないと分かり、


「白木様は、京のお方ですか?」 花が聞いてみると

「えぇ。 よくお分かりですこと♪」 白木は笑顔で答えた。



「なんか品があって、素敵でしたので。失礼しました」

花は照れくさそうに答える。 



「白木さんは私の主人の知り合いでね、今も京に居る主人と幸太郎の面倒をみてくれている方なのよ」


咲は、白木の事を花に話していた。



「初めて会津に来て、良かったわ~。 良い町だし、良い人にも会えて」

白木は終始ニコニコしていた。



 

「では、お母さま そろそろ仕事に戻りますね。 お茶、ごちそうさまでした。白木様もありがとうございました」


花は頭を下げて荷車を引き、帰宅していった。




翌日、花は薙刀の練習に来ていたが


“―あれ? 城の中なのに……? ”

そこには、白木が婦人隊の視察に来ていた。



花は白木に気づき、会釈をして練習に戻っていく。



(なんで? 晋太郎さんのお母様だけではなく、城の内部にも知り合いがいたの? 何者なのだろう……?)


誰もが簡単に城に入れる訳でもなく、会津にも初めて来たと言っていた白木が? と、花は不思議でならなかった。



その夜、花は鈴と共に外れの民家に向かい、二人組の男に白木の話しをした。



「白木? なんだ……会津に来ているのか?」


……どうやら知り合いのようだ。



しばらくして花と鈴が家に帰ろうとした時、二人組から 

「この時間なら良いものが見れるぜ。 行ってみるかい?」

そう言って、男たちは花と鈴を誘う。



流石に状況を知らない鈴は、家に帰っていく。



男たちが花を連れてきたのは、城下町にある宿屋やどやであった。



男たちが宿屋の店主に話しをして、二階の部屋に案内される。

部屋に入ると男たちの一人が口に人差し指を縦にあてた。



これは『喋るな』の合図だ。

もう一人の男性が隣の部屋に指を指す。


花は隣の部屋に向かい聞き耳をたてた。



「……」 小さい声で途切れ途切れだが、話しが聞こえる。



(人の名前? 山本? 工藤? まさか工藤って……?)

花は工藤の名前が、晋太郎の父の事じゃないかと思った。



現に白木は晋太郎の家に居て、晋太郎の母と会っていたからだ。

これは会津に良い事なのか悪い事なのかを知りたく、さらに聞き耳をたてた。



……しばらく聞いていたのだが、花は政治や軍事は知らない。

しかし、頭には残しておこうとする。 



花は、男性たちにお礼をして宿屋を後にした。



翌朝、花は河原に来て晋太郎を待っていたが、晋太郎より先に意外な人が歩いてきた。



白木である。 白木は城の偉い人と一緒であった。



「―っ」 花は咄嗟とっさに身を隠す。

なぜ隠れたかは花自身も分からなかったが、咄嗟に反応してしまった。



河原には話し声が聞こえる。

白木の横に居る人は、昨夜の宿屋で白木と話していた相手の声であった。



(あらあら……夜を一緒に居たんだ……それ、良いの?)

花も思春期の女の子であり、興味はアッチに向いていた。



しばらくすると、晋太郎が鼻歌を歌いながら歩いてくる。

花が驚き (最悪……このタイミングで来たわ……)


物陰から晋太郎を睨んだが、晋太郎は花の事は見えていない。



『ドンッ!』

白木は人の気配に気づき、咄嗟に城の者を突き放した。



(この慌てぶり……? 何かあるな……)

花は、頭を整理し始める。



すると、白木は晋太郎に近づき何かを話し出した。


(聞こえないな……近くに行きたいけど、無理だ……)


花が白木を見ていると、晋太郎を抱き寄せる。

 (晋太郎さんに何してるのよ~) 花は慌てていた。


その時、ビュンと音がして白木の頭に何かが飛んできた。


「――うわっ!」

晋太郎と白木は叫んだ。



(―何が起こっているの? えっ? 鈴ちゃん? 何で?)

鈴は無言のまま仁王立ちをしていた。



「―あなた、何をするの?」 当然ながら白木は怒っている。

よく見ると、鈴が白木に向けて飛ばしたものは水鉄砲だった。



「あなた、こんな事をしてタダじゃ済まないわよ!」

白木は怒り心頭である。



「たくさん城の役人の方をそそのかした挙句あげく、今度は晋太郎さんまで?」


鈴は、白木に食って掛かっていた。



これを隠れて見ていた花は、

(鈴ちゃん、でかした♡ なんならそのまま刺し違えても……)   

たまに人として、クズ発言する花である。



「そんな訳ないでしょう! あなた、何をやっているのか分かってるの?」


白木も子供相手とはいえ、凄く怒っていた。



これでは収集もつかず、大変なことになりそうなので


 『ポイッ』

花が何かを二人にめがけて投げて、 『ポトッ ポトッ』 と二人の頭の上に落ちる。

 


「んっ? 何これ……? ってカエルじゃない!」

白木と鈴はビックリして、河原から逃げ出していった。



二人が逃げたのを確認してから、ゆっくりと花が出てくる。



 『ヒョコ ヒョコ……』

花は長い時間、しゃがんでいたので足が痺れていたようだ。



「晋太郎さん、災難だったね……」

花は漁夫ぎょふで、転がり込んだ勝利に余裕の口ぶりになっている。



「花さん、居たんだ……」 晋太郎は、一瞬でゲッソリした顔になっていた。



「実は……」 晋太郎が白木の事を話し出す。



晋太郎の父と兄が京での戦で、負傷したこと。

その手当ての為に、白木の屋敷でかくまってもらっていることだった。



そして会津の兵などの近況報告の為に、白木が京から会津に来ていることだった。



花は、聞けば聞くほど顔が青ざめていく。

(うぅ……鈴ちゃんと同じく、完全に誤解してたよ~。 カエルも投げちゃったし……)



「花さん? 目が泳いでいるけど大丈夫? 聞いてる?」

晋太郎が心配そうに花の顔を覗き込むと


(あわわ……心配そうにしないで~ 私は罪人ざいにんなのよ~)

花の罪悪感が増していくのであった。



その後、花は晋太郎の家に出向き白木に謝罪をした。



「―この度は私の友人が大変失礼をいたしまして、誠に申し訳ありません」

花は土下座をして白木にびていた。



「まったく災難さいなんだったわよ~ それで……何であなたが謝りに来たの?」

白木がキョトンとして花に聞くと


「友人の事でも、突然に晋太郎さんを抱き寄せる所を見たら、晋太郎さんが好きな人ならきっと……」 花は、オデコを畳に付けたまま話した。



「まぁ 水鉄砲だったしね。 あなたが謝ったことに驚いたけど、あなたに免じて許すわ」 白木の温かい言葉に花も救われた。


「そうだ、花さんだよね? これから私とお茶でも飲まない? あなたの家は茶屋もやっているわよね?」


白木の提案に、花は自宅まで案内して白木とお茶を飲んだ。

“鈴ちゃん、来ないでくれよ…… ” 花は、そう思いながらソワソワしていた。



花と白木は楽しく時間を過ごした。



「花さん、晋太郎様の事が好きなの? お母さまにも伝えたの?」

なんと白木から、ガールズトークをしかけてくる。


お母さまとは晋太郎の母、咲のことだ。

花は、アタフタしながらでも否定はしなかった。



「さすがに晋太郎さんのお母様は壁が高すぎます……」

花が落ち込みながら話すと、


「そんなことないわよ。理解してくれるわよ♪」 と、にこやかに白木は話す。



空が夕方から夜になりかけた頃、民家の二人組が花の店までやってきた。

二人組は白木を見ると姿勢を正しく礼をして、同じ席に腰を掛ける。


“やはり顔見知りのようだ ”



白木は辺りを見渡して誰も居ないのを確認すると、二人組に合図をする。


二人組が持ってきた木の箱を花の前に置くと、


 「なんですか? これ……」 



白木は微笑み、そして木の箱のふたを開ける。


「えっ―?」 花は驚く。


「これは会津で花さんに良くしてもらった、感謝のあかしね♪」

二人組は箱の蓋を閉じると脇に抱え、「向こうの家に置いておくぞ」

そう言い残して店を出て行った。 



「なんで……私に?」 花は驚きを隠せなかった。



「私の直感! あなたに渡した方が良いって、私の直感が言っているのよ」

白木はそう言ってお茶を飲んだ。



しばらくの時間、二人の会話もなく沈黙が続いた。



「じゃ、私は明日に京に戻るわ。また会いましょうね♪」

白木は手を振り、晋太郎の家に帰っていった。



花は白木を見送った後、しばらくの時間 夜空を眺めていた。











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