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第十話  秘密です

第十話    秘密です



夏祭りも終わり、いつも通りの日常が帰ってきた会津の町。


暑い夏の中、晋太郎は稽古に力を入れていた。

自宅で木刀の素振すぶりをして、終われば河原に向かう。



そんな変わらない毎日の中、花が手を振りながらやって来た。



「晋太郎さん、み~つけた♡」



「はい、手ぬぐい」

花は晋太郎に手ぬぐいを渡し、汗を拭いている。



「晋太郎さん、私にも剣術けんじゅつを教えて欲しいのですけど……」

花の申し出に晋太郎は面食らった表情になる。


「花さんが? 必要あります?」 晋太郎が不思議そうに聞くと、



「間者の事もありましたし、いつ物騒ぶっそうな事が起きるか分からないので習いたいのです……」

花は真面目な顔をして説明をする。 



「確か、城でも そんな手習い所はありますが……」 

少し晋太郎はにぶい反応を見せるが、それには事情があった。



(花さんが剣術とか覚えたら、町で僕に近づく女子はみんな斬られちゃうからな~。 花さんが罪人ざいにんになっても嫌だし……)

そんなことを晋太郎は気にしていた。  



花は晋太郎の鈍い反応を察知し、次の手に出る。


「そうね……私が晋太郎さんより強くなったら、面子メンツにかかわるものね……」

そう言って、“晋太郎をあおる作戦 ”である。 

 


案の定、晋太郎は食いついた。


「そんな事ないです。 女子に負けることはありません!」

まさに花の作戦通りである。



花が晋太郎の木刀を借りて素振りを始めると



「うぅ……手が痛い……」 

さすがに女子の力では数回が限界であり、 見かねた晋太郎は剣術の形だけ教える。



花は少し汗をかいて、晋太郎花から貸してもらった手ぬぐいを渡したのだが……



 「クンクン、 スーハー、 クンカクンカ……」 

結局、こうなってしまうのである。



晋太郎は毎度のことで慣れてきたが、少し待って花の奇行きこうが収まるまで時間を潰していた。



「も、もう済みましたか?」 晋太郎が苦笑いで聞くと、


「えぇ ご馳走様」

嗅いで満足した花は、普通の顔に戻っていた。



二人は帰宅して花は店の手伝い、晋太郎は隊士たちと稽古をしていた。



 花が河原にいた頃は曇り空であったが、次第に天気が悪くなり雨が降り出した。



雨も強くなり始めた夕方、

「母様、少し出掛けますね……」 花はそう言って、家を出ていく。



その後も雨の日や、次の夜にも外出する事が度々《たびたび》あった。


「……」 雪は気にはなっていたが、花に聞くことはしなかった。




ある日、晋太郎は稽古の後に河原で涼んでいたが、花は来なかった。



「あれ? いつもなら花さんが来るはずなのだけどな……」

晋太郎は、いつもと違う日常が気になっている。



「こんにちは……」

晋太郎は、花の自宅の店に来ていた。



「花さんはお出かけですか?」 晋太郎が花の母親に訊ねると、



「なんか風邪でもひいたのかしら……ずっと横になっているの。 たまに夜に出かけることもあって……あれ、晋太郎さん、一緒じゃなかったの?」


晋太郎は、雪の言葉にビックリしている。



もちろん花と夜に会うことなどしていなかったし、夜に花が出掛けているのを初めて聞いたからだ。



晋太郎は、花の母親と少し会話をした後に店を出る。


晋太郎が店を出た後に花は目覚めた。

居間で食事を摂っていると、雪が様子を見に来て


「晋太郎さん、来ていたわよ」 雪が伝えると、花は下を向いたまま

「母様、少し休みます……」 そう言って布団に入っていく。



晋太郎は花の外出を気にしていた。 



(最近、なんか雰囲気が違うんだよな~。 剣術を覚えたいとか……何があったのだろう……) そんな事を考えている。



翌日、花は元気になり河原で晋太郎を待っていたが、晋太郎は来なかった。 


「あれ? 晋太郎さんが来ない……何かあったのかしら?」

花はその後も待っていたが、晋太郎は現れなかった。



花は城下をウロウロして晋太郎を探し、ようやく晋太郎を見つけた。


「―晋太郎……さん?」

花は晋太郎に声を掛けようとしたが、言葉が止まってしまう。



晋太郎の様子が、いつもと違った。

色々な人に声を掛けていて、慌てているようにも見える。



花は少し離れた場所から、隠れて晋太郎の様子を伺っていた。



しばらくすると、晋太郎が声を掛けた三人が花の近くに歩いてくる。


 花が、その三人に目を向けると話し声が聞こえてくる。

 


『さっきの人って白虎隊の人よね? 夜中に女の人が歩いているのを探しているなんて……見てないわよね~』 そんな内容が聞こえてきた。



 “バレたか…… ”

 花は、晋太郎が聞き込みをしていた理由わけを知ることになる。




花が晋太郎を尾行して、城下を歩いていたとき

「晋太郎さん、こんにちは……」 鈴が晋太郎を見つけ、声を掛けた。



 晋太郎は花の事を鈴に聞いていたのだが、

「夜? もしかして舞踏ぶとうのことかしら?」 と、鈴は言い出す。



「秋に収穫祭しゅうかくさいがあるでしょ? たぶん、その練習ですよ」


「そうだったのですね。 とりあえず安心しました」

鈴の言葉に晋太郎は安堵あんどしている。 



それを影から見ていた花は、鈴と話している晋太郎に腹が立っていた。


花の心配をして話しているのだが、晋太郎が他の女子と話しているのが気に食わない。




「はぁ? 私の事を探りながら他の女とペチャクチャと……どんな神経しているのよ?」


花は親指をガリガリと噛みながらいきどおっていた。




そんな時、鈴がチラッと横を見る。


 鈴は会話を終え、花が隠れている場所へと歩いてくると



「晋太郎さんには秋の収穫祭の為の舞踏の練習だと言っておきました。 ご安心ください」 


そう言って、鈴は花に背を向けて歩きだしたが、

 

「待って!」 花は鈴の腕を掴み 引き留めたが、花は言葉が出せずに下を向いてしまった。



「貸しとかではなく、同じ男の子を好きになった女同士です。 晋太郎さんの困った顔を見たくはないのです……」



 鈴の言葉に、花は黙ったままだったが

「鈴ちゃんだよね? ごめんね……」 花は、鈴に謝った。



すると、鈴は話題を変えた。


「あの……私、城で薙刀を習っているのです。 良かったら、一緒にやりませんか?」


突然の勧誘に面食らった花は、そのまま鈴の話しを聞くことにした。 



なんでも鈴は、晋太郎と同じ十六歳であった。

歳も近く、同じ男子を好きになった女の子同士は不思議と会話が弾んでいった。


 「ちょうど、刀術とか薙刀とかに興味を持ちはじめてて……」

 花は晋太郎の部屋で刀を持ったことを思い出していた。



「でも、あの行商の時の服ではダメですよ~♪」 鈴が可愛く笑うと



「ここで、私の黒歴史に触れてくるとは……」

花は肩を落とす。



「まぁまぁ。 二人で強くなって、晋太郎さんのことを守りましょう♪」

そう言って、鈴が笑う。



 “この、悪い子じゃないかも…… ”

 敵ではあるが、不思議と会話が弾んだ鈴に嫌悪感けんおかんはなかった。




花は、家に帰ってから雪に話す。

城の『手習い所』と説明をし、許可をもらったのだ。



そして夜、花が二人組の待つ民家に向かおうと家を出ると



「花さん……」

そう小さく呼ぶ声が聞こえ、振り返ると鈴が笑顔で立っていた。



花は家の前ということもあり、鈴を少し離れた所まで連れて行く。


「何で? 鈴ちゃん、夜中に何の用?」 


「秘密はダメですよ。 私、晋太郎さんに夜の事を黙っていたのですから  ……さぁ行きましょう♪」 そう言って、鈴はワクワクしている。 


 花は唖然とした。


しばらく歩いてから 花が立ち止まる。


「ここからは人影や気配に注意して。 もし、はぐれたら 私の家まで戻ってね」 花は鈴に注意をうながす。



それに頷き、鈴は静かに花の後を歩いた。



「最後の注意ね。 これは誰にも言ってはダメよ!」

この忠告にも鈴は頷いた。



花と鈴は、集落から外れた民家にやってきた。

周辺に注意し、誰も居ないのを確認してから民家に入ろうとするが


“あれは? ”  

少し先から提灯ちょうちんの明かりが見える。



花は鈴の手を引き、民家から離れて物陰に隠れる。



そして、提灯の明かりが近づいてきたが、花が目を細め確認すると民家の近所の住人だった。



「ふうぅ……」 花は深く息を吐きだす。



花と鈴は、民家の中に入り、

「こんばんは……」


挨拶をしてから中に入り、鈴の事を話し始める。

民家の中での取り決めを鈴に話し、鈴は頷いた。




            ●

その頃、晋太郎は夜中に家を出て、舞踏の練習の場所を探していた。


「花さん、何処で踊っているのだろう……」


晋太郎は、すっかり信じていたのであった。






















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