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53『マクギャバン、千早に気づく』

千早 零式勧請戦闘姫 2040  


53『マクギャバン、千早に気づく』





 工場建設の見通しがついたマクギャバンCEOは、あとの折衝を後発の部下に任せるとクロックを伴って九尾市とその周辺を見て回ることにした。


 ロボファクト九尾工場の操業環境を見ておくためなのだが、半ばは自分の趣味だ。アイルランド系移民の子孫であるマクギャバンは妖精や妖の話が大好きなのだ。

 おばあちゃん子であった彼は、子どものころからアイルランドやスコットランドの妖精の話を聴いて育った。同郷のラフカディオハーンが好きで、ハーンの『怪談奇談』は擦り切れるほど読んで、ハーンの枝分かれと言っていい日本のアニメにも造詣が深い。


『蛇池の画像が入ってきました』


 ロックの声で後部座席のモニターが起動。上空からの蛇池の映像が映し出される。手始めに『美濃の蛇池』を見てみようと、岐阜市を過ぎて長良川を渡ったところでソボ(ソープボックス型ドローン)を飛ばしたのだ。


「VRに切り替えてくれ」


 そう言うと、VRグラスを付けるマクギャバン。


 ロックは路肩に寄せて車を停めた。走っている車の中でVRグラスを付けると確実に酔ってしまうからだ。


「ん……画面がボケボケだけど」


『あ、魔除けの十字架が垂れているんです……ヨッっと』


「う、気持ち悪い~」


『宙返りして、十字架を後ろにやりました』


「ああ、そういうことは言ってからやってくれる(^_^;)」


『了解しました』


 

 2040年のドローンは操縦者の微細な目の動きや焦点の切り替えを察知して、レンズの倍率や指向を変えるのだが、マクギャバンはあえてコントローラーを使っている。初めての場所、それも妖の観察なので、万一パニックになってしまうとコントロールを失ってしまうからだ。近くの木の天辺近くの茂みに隠れると、レンズを旋回させる。レンズは360度旋回し、たちどころに10以上の退路を確認して記憶する。


「まずは逃げ道の確認だからね……これはオートでやるようにプログラムし直した方がいいかな……」


 どこまでも製品の開発と改良が頭にあるCEOである。


「ん……この映像は?」


 とつぜん自分の操作と無関係な映像が現われた。


『昆虫ロボットを付けておきました、R1ボタンを押すと方向キーに対応したカメラに切り替わります』


 カチャ カチャ カチャ カチャ


「なるほど、客観視点で自分の居場所が観られるわけだ……しかし……」


『はい、製品版にこれを付けると価格が倍になって商売になりません』


「なるほど、クロックも研究熱心なんだ……ん、この緑の点滅は?」


「あ、それは、クロック本体のメモリー……(''◇'')」


 あっという間に暗号キーを打ち込んで映像を出すCEO。


「ああ、アカリン市長!?」


『か、隠し撮りじゃありませんからね、配達でまわった時にタマタマ』


 それは、市役所の近くで配達している時、最上階のレストランで昼食をとりながら景色を見ているアカリン市長だ。


『あ、バックログは読まないで……(;'∀')』


 コンニチハ アカリンシチョウ(^▽^)/


「ほう……なるほど『クロックの配達日記』か。おお、返す笑顔がいいなあ、アカリン市長……ほかにもいろいろ……ん、この子はどこかで……あ、バブルの森で出会った高校生……ほう、神社の娘さんなんだ」



『クロクマトヤマのクロックと申します。これからは、この地区を担当しますのでよろしくお願いいたします(^▽^)。はい、お荷物です』


「ありがと……なんか本職さんよりソフトねえ」



「いいなあ、何気ない会話だけど、この場に相応しいやりとりだ。空気感がいいねえ……」


『あ、接近してくる者がいます』


「え?」


 慌ててカメラに戻ると、VRのモニターに栗毛の馬、それが空中を飛んで蛇池に向かって来る。


 馬の背中には、男女の高校生、アップにすると、たった今まで見ていた神社の娘。


「そうか、バブルの森の二人だ……」


 女子が鞍から飛び上がると、キラリと輝いて巫女服に変り、手には両刃の剣を握り、内から力を漲らせて輝いた!

 男子は、そのまま馬首を巡らせて地上に降り、木々に紛れたが、木の間にチラチラと後姿が覗いて、CEOのワンボックスとそう離れていないところで停まった。どうやら後ろの方に控えるつもりのようだ。すぐにカメラを少女に戻す。



「まるで魔法少女……」



 祖母が古いスマホに残している何百という魔法少女の画像が思い浮かぶCEO。


 その目は、ロボファクトCEOというよりは、オタク趣味のダックという輝きを見せていた。



☆・主な登場人物


八乙女千早          浦安八幡神社の侍女

八乙女挿かざし      千早の姉

八乙女介麻呂         千早の祖父

八乙女和彦          千早の父

神産巣日神         カミムスビノカミ

天宇受賣命           ウズメ 千早に宿る神々のまとめ役

来栖貞治くるすじょーじ  千早の幼なじみ 九尾教会牧師の息子

天野明里           日本で最年少の九尾市市長

天野太郎           明里の兄

田中             農協の営業マン 部下に米田瑞穂

マクギャバン         ロボファクトCEO 愛称ダック

先生たち           宮本(図書館司書)

千早を取り巻く人たち     武内(民俗資料館館長) 重森歌子(同級生)

神々たち           スクナヒコナ タヂカラオ 巴さん

妖たち            道三と家来(利光、十兵衛)

敵の妖            小鬼 黒ウサギ(ゴリウサギ) 蜘蛛ウサギ


 

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