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46『十兵衛、黒ウサギに伝える』

千早 零式勧請戦闘姫 2040  


46『十兵衛、黒ウサギに伝える』





 ( ゜Д゜)!?



 気配を感じると同時に塔屋(とうおく=屋上の階段室)に飛び移る黒ウサギ。飛びながら気配の軽重を測ると、自分よりも数段格下に思えて一喝した。


「何者だ!?」


 屋上の風上側の手すりの上、黒づくめの男が腕組みして立っている。背中に風を受けて髷が頭の上ではためいて、昭和の忍者物のドラマのようだ。


「先の山城守斎藤道三が家来、明智十兵衛光秀だ」


「光秀だと……笑わせるな、気配は付喪神ではないか」


「いかにも、十兵衛光秀の兜の前立てが年を経てたまを宿したものだ。しかし、本地の光秀が没してからの四百五十年、この前立てが十兵衛光秀の魂。神道でいうところの垂迹である。そう心得よ」


「クローンの一種か」


「まあそうだ」


「下位互換のクローンだな」


「ほほう、劣っていると申すのか」


「ああ、劣っている。人を探るのに風上に立つとは無能なバカだ」


「バカはお前だ」


「なんだと!」


 ウサ耳を逆立たせる黒ウサギ。見かけが一年生の女子なので文化祭のビラまき係りのように可愛くなってしまう。


「わたしは七日も前からお前の後ろに付いている。風上に立って悟らせたのは用事があってのことだ」


 そう言うと十兵衛は手すりから下りて塔屋に近づいていく。


「く、来んな!」


「そう言わずに下りてこい、パンツ見えるぞ」


「ググ(;#'∀'#)」


 

 不承不承下りて来た黒ウサギに十兵衛はザっと説明して、校庭の残念石に連れていってやる。



「なんだ、この汚い石は?」


「これが、お前の棲家だ。さっき説明しただろう」


「おまえは家と言ったんだ、どう見ても石じゃないか」


「まだ祓えを済ませていないからな。休み時間に準備はしたが、時間が無いからお祓いそのものは放課後だ。さっきも言ったが、元々は古墳にあった魂石。祓えの神事は外と内でやらねばならん、お前もよく見た上で、納得して住め」


「こんなところに住まなくても……」


「おまえ、ずっと風呂に入ってないだろ」


「な……妖は風呂になんか入らない(#;'∀'#)」


 と言いながら、襟を摘まんで鼻を寄せる黒ウサギ。


「そういう臭いではない、穢れが溜まると言っているのだ」


「しかし……」


「気にするな、千早殿は巫女だ、巫女や神主は穢れを払う者だ。年に何度もやっている。宮参りや地鎮祭やら、通りすがりに蟠りを見つけても、そっと呪を唱えたり、そういうものの一つだ。払ったからと言って支配するものではない」


「でも……」


「まあ、放課後の祓えを見ていろ、外の祓えが済んだら屋上に居ても中の様子が見える。その上で嫌ならば勝手にしろ、よいな、しかと伝えたからな」


「ちょ、十兵衛……」


 身を翻したかと思うと足早に校舎の方に戻っていく十兵衛。


「み、見るだけだからな!」


 振り返らず、軽く手を挙げる十兵衛に「チ」と舌打ちするしかない黒ウサギだった。





☆・主な登場人物


八乙女千早          浦安八幡神社の侍女

八乙女挿かざし      千早の姉

八乙女介麻呂         千早の祖父

八乙女和彦          千早の父

神産巣日神         カミムスビノカミ

天宇受賣命           ウズメ 千早に宿る神々のまとめ役

来栖貞治くるすじょーじ  千早の幼なじみ 九尾教会牧師の息子

天野明里           日本で最年少の九尾市市長

天野太郎           明里の兄

田中             農協の営業マン 部下に米田瑞穂

マクギャバン         ロボファクトCEO 愛称ダック

先生たち           宮本(図書館司書)

千早を取り巻く人たち     武内(民俗資料館館長) 重森歌子(同級生)

神々たち           スクナヒコナ タヂカラオ 巴さん

妖たち            道三と家来(利光、十兵衛)

敵の妖            小鬼 黒ウサギ(ゴリウサギ) 蜘蛛ウサギ



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