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43『マクギャバンCEO・2』

千早 零式勧請戦闘姫 2040  


43『マクギャバンCEO・2』





「クロックはうちの子会社で開発したロボットですから」


 驚く市長にマクギャバン氏は説明してくれる。


「体力のないベンチャー企業ですので、クロックがNGになると潰れかねません、それで自分が引き取って使っていれば見直してくれる人も……と思いましてね」


「まあ、そうだったんですか! よかったわね、クロック(^▽^)」


『はい、ありがとうございます』


「クロクマに関する情報は消去されてますが、天野市長に関するものは残してあります。かまいませんか?」


「もちろんです! あ、わたしのことは公式の場でなければ明里とかアカリンでけっこうです」


「それは嬉しい。うちの息子が市長、いや天野明里のファンでして、きっと羨ましがります。じゃ、明里さんで、わたしのことはマックで」


「いえ、そんな(^_^;)」


「ファーストネームはマイケルです。マイケル・マクギャバン、子どもの頃はダックって呼ばれてましたから」


「え、ダックですか?」


「マイケルもマクギャバンも略すとマック。ダブルマックの短縮形です」


「アハハハハ(^〇^)」


『そろそろ出発してもいいですか?』


「ああ、頼むよ、アカリンもいいですか?」


「あ、はい、いいわよね小野寺さん?」


「はい、大丈夫です」


『では、出発進行!』


 クロックが指差し確認すると、ダックのボックスカーはバブルの森を目指した。



「おや、立派なお城がありますねえ……」



「あ、九尾市の民俗資料館です。尾畠地区が再開発された時に合わせて作られたんです、駅前の総合ビルが完成したら移転の予定です」


「え、ビルの中に入ってしまうんですか?」


「はい、もう築70年に近いですから、あちこち傷みもありますし」


「そうですか……惜しいなあ」


 城のバルコニーに辺境伯(館長)の姿が見えたが、市長は話題にはしなかった。


 森の入り口に車を停めると、クロックを含めた四人で少しだけ森の中に入ってみる。


「このあたりが限界ですね」


 タブレットを見ながら小野寺秘書が注意を促す。足元はすでに体操のマットほどの弾力を持ってしまっている。


「場所によって違いはあるんですが、緩みは深いところで30メートルを超えます……これが分布です」


 小野寺秘書のタブレットを囲んで思案する市長とCEO。


「クロック、ドローンを飛ばしてくれないかい」


『イエッサー('◇')ゞ』


 頭のふたが開くと銀色の石鹸箱のようなものが飛び出した。


「クロックのCPUは胸にあるんで、頭は格納庫に使えるんです」


「おお……ブレード(プロペラ)が付いておりませんね!?」


 小野寺秘書が息を呑んだ。


「量子エンジンを積んでましてね……」


「エエ! ひょっとして、反重力エンジンですか!?」


 アイドル時代のように目を丸くして驚く市長。


「と言いたいんですが、上空の人工衛星と引き合うことで飛んでます。重量は10キロが限度で、一機の衛星で十個まで。まだまだ実験の段階です」


「名前とか付いてるんですか?」


「SOBO21型です」


「ソボですか?」


「ええ、ソープボックス(soap box)を約めてSOBOです」


「アハ、まんまですね」


「でも、素朴で気に入ってます。ハンスと同期させます……」


 ダックの手首に画面が現れ、彼が指で操作すると、32型テレビほどの大きさになり、森全体の様子が映された。


「フィルターをかけてと……」


 土壌の軟弱さを現わしているようで、全体が薄い水色、いくつかの地点は深い水色や青、紺色になっている。色が濃いほど軟弱になっている様子である。


「うちの調査よりも精密な感じですねえ」


 小野寺秘書は自分のタブレットと見比べて感心する。


「月面開発用に作ったんです、費用対効果の問題でまだまだなんですが……うん、より精密な調査をしなければ分かりませんが、ディープブルーのところ以外はケーソンや土壌改良でいけるかもしれません」


「すごい技術ですね!」


「いえいえ、これは日本の技術ですよ。関西空港などは、この技術で作られたんですからね、この技術が無ければ、海の中にあんな大きな人工島は作れません」


『そうです、関西空港ができたんで、大阪は日本一狭い都道府県の汚名を返上で来たんです』


「フフ、クロックは物知りね。で、いま一番狭いのは?」


「香川県です」


 小野寺秘書が先を越す。


「おお、小野寺さんもさすがぁ!」


「いえ、自分の出身県ですので……」


「あ、アハハハ……ごめん、笑っちゃって(^_^;)」



 和やかなうちに、ダック……マクギャバンCEOの視察は、おおよそ計画継続の方向で決まった。



「そうだ、少し時間があるようですから、民俗資料館に寄ってみたいんですが」


「あ、はい、三時からは懇親会を予定していますので、それまでなら」


 一行は、再び五分間だけボックスカーに乗って辺境伯の城に向かったのだった。


 


☆・主な登場人物


八乙女千早          浦安八幡神社の次女

八乙女挿かざし      千早の姉

八乙女介麻呂         千早の祖父

八乙女和彦          千早の父

神産巣日神         カミムスビノカミ

天宇受賣命           ウズメ 千早に宿る神々のまとめ役

来栖貞治くるすじょーじ  千早の幼なじみ 九尾教会牧師の息子

天野明里           日本で最年少の九尾市市長

天野太郎           明里の兄

田中             農協の営業マン 部下に米田瑞穂

マクギャバン         ロボファクトCEO 愛称ダック

先生たち           宮本(図書館司書)

千早を取り巻く人たち     武内(民俗資料館館長)

神々たち           スクナヒコナ タヂカラオ 巴さん

妖たち            道三と家来(利光、十兵衛)

敵の妖            小鬼 黒ウサギ(ゴリウサギ) 蜘蛛ウサギ


 

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