表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/53

42『マクギャバンCEO・1』

千早 零式勧請戦闘姫 2040  


42『マクギャバンCEO・1』





 あららぁ…………



 アカリン市長は思わず見入ってしまった。


 朝は専用のパソコンで天気予報を確認するところから始まる市長なのだが、梅雨の中休みを伝える予報の下にニュースが表示されている。



『クロクマトヤマの配達ロボット運用先送り』


 クロクマトヤマの配達ロボット・クロックは試験運用されていましたが、コミニケーションギミックに不具合が見つかり、クロクマ配達事業部はクロックの運用を中止しました。同事業部によりますと「コミニケーションギミックが気持ち悪い」「無駄な機能だ」「おしゃべりし過ぎ」「プライバシーの侵害だ」「子どもが真似をする」等の苦情が寄せられており、実用試験機であるクロック・03の運用を中止、後継機04の整備、試験運用に切り替えると発表しました。



「ああ、わたしは好きだったんだけどなあ……」


 窓の外を見るとホログラムのゼロ戦がゆったりと市庁舎の周りを飛んでいる。先日の派手な空中戦のバグ(ゼロ戦が全機撃墜される)の後改修されて、市庁舎の周囲をゆっくり飛ぶだけになったが、幻の42型が日に二回飛ぶ仕様になって、カメラを持ったファンが戻りつつある。


「さて!」


 気合いを入れて、今日のスケジュールを確認する。


「あ、今日だったんだ!」


 コンコン


 小さく叫ぶのと、市長室のドアがノックされるのが同時だった。


「はい、どうぞ」


「市長、マクギャバンさんが……」


「お着きになった!?」


「いえ、あと30分でお着きになります」


「あ、ありがとうございます小野寺さん」


「そろそろご準備のほどを……」


「はい、心得ています」


「では、失礼いたします」


 父の時代と変わらぬ礼をして退出する小野寺秘書。親子ほど歳の開いた秘書だが、父に対するのと同じ対応をしてくれる。ありがたいとは思うのだが、自分がミスや勘違いをしていた時は、小学校で宿題を忘れた時のように緊張してしまうアカリン市長。


「やっぱり白紙撤回を申し入れてくるんだろうなあ……」


 想定問答集は十通り考えて「これで問題は無いでしょう」と小野寺秘書も言ってくれたが、その十通り全て、ロボファクトCEOのマクギャバンが計画の白紙撤回を申し入れることに対してなのだ。


 工場誘致予定地の尾畠地区(通称バブルの森、古称糺の森)は原因不明の地盤軟弱化を起こし、とても、大規模な工場施設を作れる状態ではなくなってしまった。


 岐阜市や各務原市に押されて勢いのない九尾市としては、なんとしても誘致したい企業なのだ。先年亡くなった先代市長、つまりアカリン市長の父親の頃からのプロジェクト、いよいよ中止ということになれば、どうしても顔に出てしまう。マクギャバン氏はアメリカの先端産業界に隠然たる力を持った産業人。悪印象や困った印象を持たれるのは避けなければならない。


「よし! お出迎えに行こう! よし!」


 前後二回も「よし!」の気合いを入れて、それを察していたかのように廊下で待っていた小野寺秘書を伴って、市庁舎の車寄せまで出迎えに出る市長であった。


 梅雨の中休みと言えば、空は晴れても湿度が高くジメジメしているものだが、まるで『ゼロ戦生誕百周年フェスティバル』をやった三月のように空気もカラリと爽やか――広大で風通しのいい濃尾平野、そのど真ん中に存在している九尾市の立地条件のお蔭――めげずに頑張ろう!


「よし!」


 もう一度気合いを入れると、斜め後ろで小野寺秘書が小さく頷くのを感じた。


 やがて、予定の五分前に庁舎前の国道にロボファクトのボックスカーが現れ、ゆっくりと車寄せに進入してくる。穏やか、かつ正確な運転に感心、思わず運転席に目をやる市長。


「え?」


 なんとハンドルを握っているのは、先ほど運用中止とニュースに出ていたクロックだった。

 


 

☆・主な登場人物


八乙女千早          浦安八幡神社の侍女

八乙女挿かざし      千早の姉

八乙女介麻呂         千早の祖父

八乙女和彦          千早の父

神産巣日神         カミムスビノカミ

天宇受賣命           ウズメ 千早に宿る神々のまとめ役

来栖貞治くるすじょーじ  千早の幼なじみ 九尾教会牧師の息子

天野明里           日本で最年少の九尾市市長

天野太郎           明里の兄

田中             農協の営業マン 部下に米田瑞穂

マクギャバン         ロボファクトCEO

先生たち           宮本(図書館司書)

千早を取り巻く人たち     武内(民俗資料館館長)

神々たち           スクナヒコナ タヂカラオ 巴さん

妖たち            道三と家来(利光、十兵衛)

敵の妖            小鬼 黒ウサギ(ゴリウサギ) 蜘蛛ウサギ


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ