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41『霊岩渓谷の化物・3』

千早 零式勧請戦闘姫 2040  


41『霊岩渓谷の化物・3』





 顕現したヒトコトヌシは貴人が狩りをするような出で立ちで、尊くはあるが、それほど強くは見えない。 


「我は変化へんげの神、一言主なり!」


 そう言い放つと、たちまちウズメは百余に増殖し、どれが本性か妖は分からなくなってしまった。


「グヌヌ……」


 蜘蛛ウサギは歯ぎしりすると、わずかに空中で尻込みして後方に跳び退る。


 ピョン


「臆したか、蜘蛛ウサギ」


「なんだと!」


 短く言い返すと、首をもたげて百余のヒトコトヌシにシャワーのように糸を吐きかける!


 シャワ! シャワワワワワワワワワワワワ! 


「それだけか、哀れな妖よのう」


 シャワワワワワワワワワワワワワワワワワ! 


 さらに分裂したヒトコトヌシは霊岩たまいわ渓谷の空一面に増殖して、蜘蛛ウサギを覆いつぶすような勢いになってきた。


 シャワワワワワワワワワワワワワワワワワ! シャワワワワワワワワワワワワワワワワワ!


 やみくもに糸を吐き続ける蜘蛛ウサギ。数万に増えたヒトコトヌシは、器用にそれを避ける。いや、糸が届く寸前に姿を消して、蜘蛛ウサギの死角に現れなおし、さすがの蜘蛛ウサギも息が上がり始める。


 ゼーゼーゼーー(;//́Д/̀/)'


 すると、蜘蛛ウサギの死角に立っていたヒトコトヌシは太刀を抜いて蜘蛛ウサギの後頭部に一撃を食らわせた。


 ポコン!


「グエ!」


 短い悲鳴を上げ、前脚二本で頭を頭を庇うが、音の割には傷が深く、脚の間から空気や妖気が抜け出てしまい、あっという間に縮んで消滅してしまった。


「これで良いであろう」


 満足そうな一言を残して、ヒトコトヌシは帰っていった。


「……だめだ……効き目はあったけど、ちから……使いすぎ……」


 ヒトコトヌシが力を使い果たしたところでチェンジしたウズメは二秒も留まることは無く、千早に戻してしまう。


「あ、ちょ、ここでわたしに戻すっ!?」


 千早は、ひとこと文句を言っただけで意識が途切れてしまった。



「千早ぁ……大丈夫かぁ……?」



 気づくと、先ほどの上級者コースの入り口。手鏡を構えた貞治が、心配半分、恐ろしさ半分で腰を抜かしている。


「あ、戻ってきたんだ……」


「千早、戦闘姫になったのは聞いたけどよ……」


「あ、ああ…………(-_-;)」


 貞治は手鏡の中から幼なじみが戻って来るのを見てしまったのだ。市庁舎で空中戦が起こった時にいちおうは話してあるが、今回はそれにも増して激しく、手鏡のことは何も話していない。


――これは、もう全部話しておかなきゃかなぁ――


「でも、めっちゃ疲れてるから、家に帰ってから話すね」


「お、おお……」


 

 取りあえずベンチで横になった千早。二時過ぎにはなんとか体力も回復しバス停に戻り、ちょうど土岐市の支店から戻ってきた農協の車に乗せてもらって家に帰った。米田瑞穂が美しく誤解していたが、それを正す気力も残っていない千早であった。


 


☆・主な登場人物


八乙女千早          浦安八幡神社の侍女

八乙女挿かざし      千早の姉

八乙女介麻呂         千早の祖父

八乙女和彦          千早の父

神産巣日神         カミムスビノカミ

天宇受賣命           ウズメ 千早に宿る神々のまとめ役

来栖貞治くるすじょーじ  千早の幼なじみ 九尾教会牧師の息子

天野明里           日本で最年少の九尾市市長

天野太郎           明里の兄

田中             農協の営業マン 部下に米田瑞穂

先生たち           宮本(図書館司書)

千早を取り巻く人たち     武内(民俗資料館館長)

神々たち           スクナヒコナ タヂカラオ 巴さん

妖たち            道三と家来(利光、十兵衛)

敵の妖            小鬼 黒ウサギ(ゴリウサギ) 蜘蛛ウサギ


 

 

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