40『霊岩渓谷の化物・2』
千早 零式勧請戦闘姫 2040
40『霊岩渓谷の化物・2』
蜘蛛? ウサギ?
一瞬悩む千早。
悩んだ分だけ勧請が遅れてしまった。
ブシャ!
遅れたジャンプになってしまい、そいつが吹き出した糸が勧請したばかりのウズメの緋袴に触れた! 絡めとられることはなかったが、犬山城ほどの高さに至ったとき、ウズメの緋袴は千早の制服のスカートほどに短くなってしまっていた!
「その糸は神の衣をも溶かすのか!?」
ブシュゥゥゥゥゥゥ!!
「おのれ、蜘蛛ウサギヽ(#`Д´#)ノ!」
ウズメは蜘蛛ウサギに決めてしまった。
毒糸を吐きながら首を振る蜘蛛ウサギ!
シャワ! シャワワワ!
「セイ!」
ジュジュジュジュジュジュ……
今度は飛翔しながら結界を張ったので、蜘蛛の糸は結界の表面に触れると蒸発するように消えていく。
しかし、その表面には数秒間痕が残ってしまい、前方がよく見えなくなるウズメ。
「フフ、そうか、ならばこうだ!」
悟った蜘蛛ウサギは、ウズメの動きに合わせて首を振り、間断なく糸を吐き続ける。弾かれたり外れたりした蜘蛛の糸は弧を描いて付近の木々や岩に当る。
ジバ ジババババ ジババババ ジババババ
糸が触れたところは、白い煙を上げながら溶けていく。
強力な糸だが、長くはもつまい……ウズメは考えた。
それに、神社に逃げ戻った道三たちの傷の多くは打撃、斬撃によるもの……こいつ、別の手を持っている?
シュッ! シュシュ! シューーーーーーーー!
軌道を読まれないように気を配りながら上空に占位する。
「それ、どうじゃ、ここまで糸を届かせてみよ!」
シャラン☆彡 シャラララ~ン☆彡
連続でアラベスクを決めるウズメ。
しかし、糸を避けるため高度は岐阜城の天守よりも高くなってしまい、アラベスクの威力が届かない。
「これでよし、糸の吐きようにも力が無くなってきたぞえ」
シャラン☆彡 シュララララーーーーーーーー☆彡
勢いをつけ急降下! すると、蜘蛛ウサギは勢いをつけて首をもたげ、一気に首を縦に振る!
シュバ!
なんと、蜘蛛ウサギの耳が外れ、いや、発射され、ミサイルのように上空のウズメを追いかける!
「飛び道具か!?」
思った瞬間、ウサ耳は分裂して数が増えていくではないか!? ウサ耳は二つ一組でウズメを追いかけてくる。その数の多さと勢いにアラベスクを決めている余裕もない!
バチ! バチバチバチバチ! バチバチバチバチバチバチバチバチ!!
わずかにウズメの速度が早く、ウサ耳アタックはウズメを捉える寸前で空振りになり、空振りを二三度続けると力尽きて消滅していく。しかし、いかんせん数が多い。少し息切れはしているようだが、相変わらず蜘蛛ウサギは首を振ってウサ耳ミサイルを発射し続ける。
――ちょっと、だいじょうぶ?――
「起こしてしまったか」
あまりの衝撃に、眠っていた千早は目を覚ましてしまった。
バチ! バチバチバチバチ!
――キャーーー(@△@)!――
「千早、一言主を勧請せよ!」
――ヒトコトヌシ? ええと……――
「一言多いの一言に主人公の主、字を間違わなければ勧請できる、やってみよ!」
――う、うん……我は霊式艦上戦闘姫千早なり。神産巣日神の力によりてかしこみかしこみ勧請する、いざや顕現せられよ、一言主、一言主大神!――
ウズメも千早本人も驚いた、今までになく、千早の勧請は祝詞の作法に則ったものになってきているのだ。
シャラーーーーン!
綺羅星のようなエフェクト包まれて一言主が顕現した。
☆・主な登場人物
八乙女千早 浦安八幡神社の侍女
八乙女挿 千早の姉
八乙女介麻呂 千早の祖父
八乙女和彦 千早の父
神産巣日神 カミムスビノカミ
天宇受賣命 ウズメ 千早に宿る神々のまとめ役
来栖貞治 千早の幼なじみ 九尾教会牧師の息子
天野明里 日本で最年少の九尾市市長
天野太郎 明里の兄
田中 農協の営業マン 部下に米田瑞穂
先生たち 宮本(図書館司書)
千早を取り巻く人たち 武内(民俗資料館館長)
神々たち スクナヒコナ タヂカラオ 巴さん 一言主
妖たち 道三と家来(利光、十兵衛)
敵の妖 小鬼 黒ウサギ(ゴリウサギ) 蜘蛛ウサギ