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20『鳥居塞ぎの大岩に立ち向かうタヂカラオ』

千早 零式勧請戦闘姫 2040  


20『鳥居塞ぎの大岩に立ち向かうタヂカラオ』





 千早は二日連続で夢を見た。二日とも同じ夢だった。



 先日、尾畠の民俗資料館に行った時の夢だ。


 駐車場に戻ると、乗ってきた自転車に小鬼どもが憑りついて悪さをしている。千早は瞬間で戦闘姫に変身すると小鬼どもを追い、バブルの森を半周したところで、その鬼たちを成敗した(15『資料館の館長は前の校長だった』)、その時の夢だ。


 あの時の周っていない残り半分の森が気になった。


 あの時は、資料館で調べた九尾の狐のことや九尾市のあれこれ、館長が自分たちの学校の元校長であったこと、アカリン市長と館長が真剣な話をしていたことなどが気になっていた。

 それに、なによりお腹が空いていた。帰りの道のりを考えると、そろそろタイムリミット。お腹が減ると、とたんに思考力も行動力も落ちてしまうのが子どものころからの千早なのだ。


 残り半分も見て回るべきだったのでは……と問いかけるのは、自分の深層心理なのか、結びつきができてしまった神々の忠告なのか……いずれにしても、悶々として春眠を妨げられる千早なのだ。


 ドン!


 フニャッ( ゜Д゜)!?


 ベッドごと跳ね上げられるような衝撃で、完全に目が覚めた。


 地震!?


 いや、一発のドンだけで終わる地震なんてないだろう! 思いつくと千早は半纏一枚を羽織って飛び出した!


 ええ!?


 なんと、トラックほどの大きな岩が鳥居の前に出現して神社の正面を塞いでしまっているのだ!


「なんだ、どうした!?」「ええ!?」「おお!?」「なんとぉ!?」


 祖父の介麻呂以下、両親と姉の挿も起きてきて驚くばかり。ろくに言葉も出ずに呆然としている。


「け、警察を呼べい!」「いや、消防署でしょ!」「自衛隊よ!」


 ようやく何かを呼ぼうと狼狽える中、千早は一人――そんなものでは間に合わない――と思った。



 思った瞬間……時間が停まった。



 いつもなら、ウズメに変身するのだが、兆しの光がするだけで、少しも変わらない。


「ウズメノミコトでは無理なのでござろうよ」


「え?」


 振り向くと、斎藤道三が立っている。


 神社の境内に入ったところで等身大になった道三だが、さらにデテールがクッキリ立派になっている。貞治が集めているフィギュアで言うと、クレーンゲームで獲れるプライズ品ではなく、メーカー限定のビンテージかと思うくらいにグレードが上がっている。


「ねえ、居候なんだし、家来もいっぱいいるんだし、なんとかしてよぉ」


「はてさて……我らで間に合うか……みなの者、あの大岩をどけよ!」


 バサッ!


 道三が采配を振ると、百人ほどの家来が現われて鳥居の大岩に取りついた。


 エイサ! オイサ! ドッコイサ! エイサ! オイサ! ドッコイサ!


 さすがは道三の家来たち、ぴったり呼吸を合わせて岩を押す。


 しかし、岩はピクリとも動かない。


「殿、人数を増やし、外の方からも押した方がよろしかろう、辰巳の方角に押せば力は五割り増しにはなりまするぞ」


 家老風のが提案すると「よし、もう五十人出て、外から力を合わせよ!」と道三が命じる。


 その50人の家来たちが、鳥居の横から外に出ようとする……が、出られない!


「これは!?」「面妖な!」「出られぬぞ!」「なんとしたことじゃ!?」


 目に見えない障壁があって、家来たちは途方にくれるばかりだ!


「これは……どうも……あの大岩によって結界ができてしまったようだぞ」


「ええ……(-_-;)」


――タヂカラオを勧請せよ!――


 頭の中でカミムスビノカミの声がした。


「そうか、タヂカラオなら、天岩戸も動かす力持ちだ」


 そう思いついて、千早はタヂカラオをイメージした。


 シャラララーーン☆彡


 いつものエフェクトがしたかと思うと、保育所のころ絵本で見たタヂカラオに変身した!


「ああ、ちょっとハズイかも……(^_^;)」


 タヂカラオになったのはいいが、タヂカラオは相撲取りの神さまでもあってフンドシ一丁なのだ。


 しかし、不足を言っている場合ではない!


「うんしょっ!」


 大岩に取りつくと、道三とその家来たちも「どっこいしょ!」と合の手を入れる。


 お前らも手伝えよ! 


 一瞬思う千早だが、下手に手伝わせては、転がった大岩で踏み潰さないとも限らない。家来どもの大半は、まだ1/12スケールや1/6スケール、人の大きさは家老と他に数人いるだけだ。


 ようし、一人でがんばるか!


 ペッ!


 手に唾をして、ウンコラドッコイショ!!


 ジリ……


 少し動いたかと思うと、もう一息。勢いをつけて、さらに押すと、ガラガラッと一気に転がり始め、教会の前あたりまで転がったところで大岩は霧消した。


 ヤンヤヤンヤ(^▽^)/ ヤッターー! パチパチパチ(^▭^)!


 道三たちが拍手と喝采をあげる中、これは元を絶たなきゃだめだろう、その大元は、きっとバブルの森にあるのだろうと思う千早であった。


 



☆・主な登場人物


八乙女千早          浦安八幡神社の侍女

八乙女挿かざし      千早の姉

八乙女介麻呂         千早の祖父

神産巣日神         カミムスビノカミ

天宇受賣命           ウズメ 千早に宿る神々のまとめ役

来栖貞治くるすじょーじ  千早の幼なじみ 九尾教会牧師の息子

天野明里           日本で最年少の九尾市市長

天野太郎           明里の兄

田中            農協の営業マン

先生たち          宮本(図書館司書)

千早を取り巻く人たち    武内(民俗資料館館長)

神々たち          スクナヒコナ

妖たち           道三(金波)

敵の妖           小鬼

 

 

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