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10『スクナヒコナ』 

千早 零式勧請戦闘姫 2040  


10『スクナヒコナ』 





 ぶちまけられたカードは大方回収されたが、何枚かが書架と書架の間に入り込んでしまった。


「ああ、やっちゃったぁ……」


 カウンターから定規を持ってきて隙間に突っ込んで二枚は回収できたが、もう何枚かが奥に入り込んで定規では届かない。


「書架をどけなきゃ無理ですねぇ」


「ハァ~~」


 腰の後ろに手を当ててため息をつく宮本さん。首がうな垂れてお腹が前に出るので、ちょっとお婆さんじみてしまう。


 書架は図書室の中で最大のもので、動かすには中の本を全部出さなければならない。書架自体も男子が三四人でかからなければビクともしないしろものだ。


 なんとかならないのかなあ……?


 そう思うと――そうだ、これも練習になる――とウズメが呟く。


 シャラン☆


 鈴の音がしたかと思うと、時間が停まって目の前に親指ほどの神さまが現れた。


『スクナヒコナよ』


「寝てるし……この大きさじゃ、まだあの隙間は無理かも」


『いきなり何ミリってサイズじゃビックリするでしょ。千早の鼻息じゃ飛んでしまうかもしれないし。この子はいくらでも小さくなれるから大丈夫よ』


「あ、やっぱりわたしが変身するわけぇ?」


『そうよ、目をつぶって』


「あ、うん……」


 シャラン☆


 あっという間に小さくなると、目の前にツインタワー……いや、二つの巨大な書架。その隙間は、やっとスクナヒコナの首が入る程度で、ちょっと厳しい。


『二分の一って念じてみて』


 少年の声がした。


「あ、スクナヒコナ?」


『うん、慣れないだろうから、最初だけアドバイス』


「あ、よろしく」


 ひとこと挨拶して1/2をイメージする。


 フグ!?


 両側の書架が暴力的に迫って来て千早の首を両側から押しつぶしそうになった!


 え、なんで!?


『ああ……馴染まないまま念じたから、元の千早のサイズの1/2になってしまったんだ。もう一度やってみて』


「う、うん……」


 一度もとのスクナヒコナのサイズに戻って、しっかり親指サイズであることを自覚してからイメージしなおす。


 チロリン☆


 小さなエフェクトがしたかと思うと、その隙間は家の廊下ほどになった。


 よし、これなら大丈夫!


 谷底のような隙間を進んでいくと、三枚のカードが見えた。


「でも……このサイズで見るととんでもないよぉ(^_^;)」


 カードの厚みは50センチほどもあって、大きさはテニスコート以上だ……それに、とんでもない量のホコリが絡みついて、この小さな体では不可能に思われた。


『だいじょうぶ、この程度なら風を起こして飛ばせるから』


「あ、そう……じゃあ……」


『あ、それじゃ無理っぽいかなあ(^○^;)』


 千早は、蝋燭の火を消すように手をハタハタさせていただけだった。


「それじゃあ……」


 思い切り空気を吸い込んで、体の反動をつけて吹いてみた。



 フゥーーーーーーーーー!!



 ボワ!!


 三枚のカードがホコリと一緒に飛び出した。



 気が付くと閲覧室のいちばん端っこの書架の前で、元の千早の姿でひっくり返っている。


「あれ?」


『風を起こす時は、しっかり踏ん張っていないと反動で飛ばされてしまうからね。大丈夫かい?』


「そうなんだ、でも、どこも打ってないみたい」


 少しホコリがついているが、どこも打ってないので安心しながらも驚く千早。


『僕の姿の時は、蓑虫(ひむし=蛾)の衣を被ってるからね、それがクッションになったんだと思うよ』


「そうなんだ」


 ホコリを払って書架の向こうに戻ると、貞治と宮本さんが不思議がっている。


「なんだったんでしょうねえ……」


「勝手にカードが出てきたわねえ……」


「あ、千早、どこに行ってたんだ?」


「あ、ああ、向こう側からね、息を吹きこんだら出てくるんじゃないかって……いやあ、やってみるもんねえ(^▢^;)」


 貞治と宮本さんは不思議そうに千早の顔と書架の隙間を見比べて、それでも無事にカードが戻ってきたので、春一番の隙間風かと納得した。




☆・主な登場人物


八乙女千早          浦安八幡神社の侍女

八乙女挿かざし      千早の姉

八乙女介麻呂         千早の祖父

神産巣日神         カミムスビノカミ

天宇受賣命           ウズメ 千早に宿る神々のまとめ役

来栖貞治くるすじょーじ  千早の幼なじみ 九尾教会牧師の息子

天野明里           日本で最年少の九尾市市長

天野太郎           明里の兄

田中           農協の営業マン

先生たち         宮本(図書館司書)

千早を取り巻く人たち

神々たち         スクナヒコナ

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