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ファンタジーデイズ  作者: Sumi
第六章
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第六章 少年期・学園武闘大会編:人生、それは予想外の連続。

<Side:アルト>


『ソロモンの指輪』の開発以降、

フェイトへの護衛らしい護衛はあまり必要がなくなった。

(尤も、それ以前も護衛らしい護衛でもなかったが…)


だが、アルトは取る授業の兼ね合いなどから…

比較的、フェイトと一緒にいる時間は多くなっていた。


そして、今しがた午前の授業が終わり…

二人はいつものメンバーの待つ食堂へと向かいつつ、雑談を交わしていた。


「学園武闘大会?…」


「あれ?…知らない?…

学園の行事で…結構、有名だと思うんだけど…」


聞き覚えなさげな様子のアルトに…

隣を歩いていたフェイトはそう問い返す。


「え、そうなの?…

学園祭?…って、やつなら…知ってるけど…」


「あれは後期の行事で…

その対になる前期の行事が…学園武闘大会だね。」


「あ、そういう感じだったんだ!?…」


学園では、前期と後期…

それぞれの期で一度ずつ…大きな行事が行われる。


前期に行われるのは…学園武闘大会。

その名の通り、学園一の強者を決める武闘大会である。


後期に行われるのは…学園祭。

その名の通り、様々な出店や出し物が行われるお祭りである。


学園武闘大会は…例年、四月。

学園祭は…例年、十月。

それぞれ、三日間ずつの日程で行われる。


しかし、アルトが学術都市に来たのは…去年の七月。


そのため、学園祭のことは知っていたものの…

学園武闘大会のことは知らなかった。


「うん…といっても、僕もそんなに詳しいわけではないんだけどね…

実際に見たのは去年の一回だけだし…

でも、その時は学術都市外からも結構な数の人が見に来てて…

かなりの大盛り上がりだったよ。」


武闘大会自体は世界各地で行われており…

学園武闘大会は規模だけで言えば…

それほど、大きいというわけではない。


参加出来るのは学園の生徒のみで…

外部の者は観戦することしか出来ないからだ。


ならば、なぜ…

学園武闘大会はそこまで、有名なのか。


それは…

たとえ、規模は劣っても…

質までは劣らないからである。


他の有名な武闘大会と比べても…

遜色がないほどのハイレベルな熱い戦いが…

毎年、繰り広げられる。


それが学園武闘大会であり…

そのため、世界的にも有名な武闘大会の一つとなっていた。


だが…


「ほーん…」


「なんか、あんまり興味なさげだけど…

アルトは出たりしないの?」


あまり、興味が湧かないのか…

どこか、気の抜けたような返事のアルトに…

フェイトはそう尋ねる。


「うーん…まあ、大会のこと自体…

今さっき、知ったばかりだから…

特に考えてもなかったけど…

別に強制参加ってわけじゃないよね?…」


「まあ、そうだね…

学術科や芸術科の生徒もいるし…

って、そっか…

一応、アルトも学術科なのか。」


「一応、って…」


取って付けたような言葉に…

若干、引っ掛かるアルトだったが…


「あ、いや…

単に学術科や芸術科だと…

戦えない人もいるって話だよ。

でも、アルトはそうじゃないでしょ?…」


「あ、なるほど…まあ、それはそうだね。」


そんなフェイトの言葉で納得した。


学術科や芸術科の生徒は…

アルトのような一部の例外を除くと、

魔術や武術などの戦闘訓練を行っておらず…

戦う力のない者も多い。


そんな生徒たちにも参加を強制するのは酷であるため、

学園武闘大会は強制参加ではなく…任意参加となっていた。


「でも、なら…

僕は出ないかなぁ?…

授業でも受けてる方が…よっぽど、有意義だし…」


別に参加が強制ではないと聞き…

アルトはそんなことを口にするが…


「え!?…いや、学園祭の時もそうだけど…

期間中、授業は行われないよ?」


フェイトは驚きつつも、そう否定する。


「(あ、よく考えたら…そうじゃん。

前世でも、運動会やら文化祭やらの時は授業なくなってたもんな…)」


アルトは頭からすっかり抜け落ちていたが…

当然、学園武闘大会期間中及び学園祭期間中の三日間は…

通常授業の一切が中止される。


「大会には各国からスカウトとかも来るらしいけど…

アルトはそういうのには興味ないの?」


参加に後ろ向きなアルトの様子に…

フェイトはそんな言葉を口にする。


学園武闘大会には…

毎年、各国から騎士団などの人事担当者が優秀な学園の生徒をスカウトするために視察へと訪れる。


各国の人事担当者にとっては、

次代を担う才能の原石を発掘する数少ない機会であり…

学園の生徒にとっても、日頃の鍛錬の成果を披露し…

将来を左右する大事な機会となっていた。


しかし…


「(むしろ、余計に出たくなくなったな…

変に悪目立ちしても困るし…)」


フェイトのその言葉はアルトの心の天秤を…

より一層、不参加へと傾けていた。


「うーん…そうだね…

やっぱり、出な…」


アルトがそう答えようとすると…


「出ないって…何によ?」


後ろからそんな声が掛けられた。


「!…」


「ああ、グレア…ちゃん?…」


アルトたちが振り返ると…

そこにはグレアの姿があった。


どうやら、グレアもアルトたちと同じように…

午前の授業を終え、食堂へと向かおうとしており…

たまたま、前の方に歩いている二人の姿を捉えたらしかった。


「別に…言いにくいなら、ちゃんなんて付けなくていいし…

呼び捨てでいいわよ?」


「あ、良いのかい?…

女の子と…というより、同年代の子と話す機会があんまりなかったから…

どうにも、接し方がわからなくてさ…」


「…まあ、私も似たようなものね。

ここに来るまでは…アルトくらいとしか、ちゃんと話したことはなかったし。」


フェイトとグレアがそんな会話を交わしている中…

アルトは一人、焦っていた。


「(まずい…

グレアが武闘大会なんてのがあるってのを知ったら…)」


アルトが知らなかった時点で…

一緒に来たグレアも…ほぼ、間違いなく学園武闘大会のことは知らないだろう。


だが、好戦的なグレアのことだ…

そのことを知ったら…

ほぼ、間違いなく…参加すると言い出すに違いない。


だが、そこには…一つの懸念があった。


「(さっきの話では…

各国からスカウトが来るらしいし…

その中には…多分、サザーランド王国の関係者もいるだろう。

まあ、さすがに…

侯爵家の人間がそんなピンポイントでいるわけはないと思うけど…

でも、グレアが大会に参加したら…

その情報は何らかの形で侯爵家へと渡ってしまう可能性が十分にある。)」


アルトの懸念…

それはサザーランド王国関係者などから、グレアの情報がゴルディアス侯爵家に渡ってしまうこと。


せっかく、情報を秘匿し…

影響力の及ばない国外へと避難してきたが、

居場所がバレてしまえば…

アルトがいつの日か、危惧したように…侯爵家の魔の手が伸びてしまうかもしれない。


とはいえ、グレアも強くなっており…

魔の手が伸びたとしても、そう簡単にどうにかはされないはずではある。


だが、それでも…


「それで…アルトは何に出ないのよ?…」


「出ない?…何の話?」


アルトは不必要にリスクを高めるべきではないと判断し、

グレアが学園武闘大会に参加することを阻止しようと…

グレアからのその問いにとぼけたふりをした。


「え?…さっき、言ってたじゃない。」


「言ってない。」


「言ってたわよ。」


「言ってない。」


「言って…」


「ない。」


アルトの食い気味の否定に…

グレアは訝しげな顔をする。


「嘘よ…何か隠そうとしてるわね。」


「してない。」


「なんで、そんな頑なに隠そうとするのよ?…

なら、フェイトでもいいわ…

一体、なんの話なのよ?」


埒が明かないとばかりに…

グレアは尋ねる矛先を変える。


「え?…いや…」


「フェ、フェイト!」


アルトは慌てて、人差し指を口元にあてるジェスチャーをし…


「?…話しなさいよ。」


グレアは早く話せと催促する。


「え、あ…ど、どうすれば…」


フェイトがアルトとグレアの二人に板挟みにされ、困惑していた…そんな時。


「何やってんだよ、お前ら?…

そういや、聞きそびれてたが…

お前らは学園武闘大会のエントリーはもう済ませ…」


ディエスがさらに後ろから現れ…


「!?…ちょ、おい…馬鹿、お前!」


「むが…いきなり、なんだよ!?」


アルトは慌てて、ディエスの口を塞ごうとしたが…

時、既に遅し。


「学園武闘大会?…何よ、それ?」


「あー…あはは…」


グレアに学園武闘大会のことを知られた時点で…

アルトの目論見は完全に破綻していた。

時、既におすし。

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