第五章 少年期・学園生活編:学びワナビー
あけましておめでとうございます!
年末年始のバタバタなどで少々、体調崩しており…中々更新できてなくてすみません!
本年もよろしくお願いします!
<Side:アルト>
「こ、懲りないねえ…コイツらも。」
目の前に広がる光景に…アルトは思わず苦笑する。
そこには、数日前と同じように…ぐっすりと眠りこける暴行犯たちの姿があった。
「ごめん…アルト。
また、僕のせいで迷惑かけて…」
フェイトは申し訳なさげに…そう口にする。
「え!?…いや、別にフェイトのことを責めてるわけじゃないよ?
ただ、コイツら…全然、学ばないな…
って、ちょっと呆れてただけで…」
そんなフェイトの様子に…アルトは慌てて否定する。
暴行犯たちによる待ち伏せはあれ以降も何度か行われたが、
それらも全てフェイトの護衛に回ったアルトの手によって、未然に防がれていた。
その度に今と同じような状況が繰り返されており、
普通なら、それだけ失敗すれば…
手を変え、品を変え、策を講じるはずなのだが、
暴行犯たちは変わらず…待ち伏せを繰り返していた。
それゆえ、アルトは呆れていたのだが…
暴行犯たちが同じような状況を何度も繰り返すのも無理はない。
アルトは待ち伏せを察知すると…
『睡眠霧』で早々に全員を無力化していた。
暴行犯たちの側からすれば…
気が付けば、なぜか待ち伏せが失敗に終わっており、
アルトたちとはもはや出会ってすらいない。
そんな状況では…
失敗の原因をアルトたちと結びつけることも容易ではなく、
もし、仮に結びつけられたとしても…
用いられたのはアルト独自の魔術である『睡眠霧』であり、
原因の解明はほぼ不可能。
はっきり言って…対策のしようがなかったのである。
「でも、僕がアルトに迷惑をかけているのは本当だし…」
フェイトは依然、申し訳なさげに顔を伏せる。
「…迷惑とかじゃないよ?
僕が勝手にやってることだし。
あ、それとも…僕とほぼ一日中、一緒は嫌だった?…」
「いやいや、嫌とかじゃないよ!?
でもさ、アルトは僕のためにかなり無理してるだろう?」
アルトはフェイトの護衛に回るため…
この数日は自身の選択する授業は取らず、
フェイトに付き添う形を取っていた。
フェイトの選択していた授業は魔術科のものと学術科のもので…
一日、四時限。
取っている授業の量こそ、
アルトの半分以下ではあったが…
勤勉なフェイトは授業と授業の合間などの空いている時間には図書館で自習をしており、
護衛はほぼ丸一日に及んでいた。
その負担をフェイトは案じていたのだが…
「?…無理?…」
アルト本人は…苦だとすら思っていなかった。
そもそも、アルトはフェイトの護衛に回ってはいたが、
四六時中、ずっと警戒していた…というわけではない。
暴行犯たちもさすがに多くの人の目のある状況では…
そうおいそれとは手が出せないようで、
待ち伏せが行われたのは人目の少ない時間帯ばかり。
正直なところ…日中の警戒はほぼ必要なく、
むしろ、まだ取れていなかった授業や
きっかけがなかったことで訪れられていなかった図書館の書物などとの出会いを楽しんですらいた。
その結果…
「え?…」
「え?…」
二人の認識には齟齬が生まれており、
お互い、困惑した様子で顔を見合わせた。
「「…」」
二人の間には奇妙な沈黙が流れ…
「と、とにかく…無理にずっと僕についててくれなくても大丈夫だから!」
「え、ちょっ…」
フェイトはそう一方的に告げると、
寮の自室へと走り去った。
「(さっきはああ言ってたけど、
フェイトは俺に守られるのが本当は嫌なのかもしれないな…)」
一人残された(厳密には眠りこけている暴行犯たちもいるため、一人ではないが。)
アルトはそう心の中で独り言ちる。
フェイトは否定していたが…
口で何と言おうとも、
その真意は本人以外には誰にもわからない。
もしかすると、
言葉通り、別に嫌というわけではないのかもしれないが…
アルトにはフェイトが嫌がっているように感じられていた。
「(まあ正直、一日中ずっと一緒にいる必要はなさそうだし…
本人が望むなら、離れたっていいんだけど…)」
アルト自身もさすがに四六時中、護衛をする必要はなさそうだとは感じていた。
だが、一つ…懸念があった。
「(でも、これ…本当にただの嫌がらせなんだろうか?…)」
フェイトは事態の原因を自身の置かれていた環境…
つまり、皇帝絡みの嫉妬や怨恨からくる嫌がらせだと判断していた。
しかし、アルトにはそれがただの嫌がらせなどとは…到底、思えなかった。
「(正直、何か他の目的があるとしか…)」
アルトはそのあまりの執拗さに…
暴行犯たちには何かしら別の目的があるのではと思い始めていた。
「(でも、だとしたら…
その目的はなんだ?…
一体、何のために?…)」
だが、肝心のその目的はさっぱりわからず…
アルトは首を傾げることしか出来なかった。
…
翌朝。
アルトはここ数日と同じように…
フェイトを迎えに魔術科の生徒寮にあるフェイトの自室を訪れていた。
「(フェイトは昨日、ああ言ってたけど…
でも、せめて…送り迎えぐらいはさせてもらおう…
一番危ないのは行き帰りだし…)」
コンコン。
アルトはフェイトの自室のドアをノックする。
しかし…
「(あれ?…寝てるのかな?
だいたい、この時間なら起きてると思ってたんだけど…)」
返事はなかった。
アルトは少し時間を置いて…
再度、ノックしつつ、
今度はドア越しに声もかける。
「フェイト…起きてる?
丸一日、つきっきりはもうやめにしようと思うけど、送り迎えは…」
そこまで言いかけた時…
アルトはあることに気づいた。
「(あれ?…これ…鍵…!…)」
その事実に気づいた瞬間、
アルトは扉を勢いよく開け放った。
「(しくじった!…寮の中なら安全だと油断してた!)」
部屋の中に飛び込んだアルトの目に映ったのは、
床に倒れこむフェイトと…さらにもう一人。
「んん?…誰かと思ったが…
テメーは…あの時の!…」
「…アル…ト?…
なん…で?…ここ…に?…」
暴行犯の一人…アルトが以前、投げ飛ばした主犯格が
フェイトの上に馬乗りになっていた。
フェイトは既に何発も…
いや、何十発も殴られたのか…
かろうじて意識こそ保ちつつも、
その姿は血塗れでボロボロだった。
「今日は…お仲間はいないのか?」
「今日は…だと?…
!…まさか、襲撃が失敗してたのはテメーの仕業か!?…」
「質問に質問で返すなって…いや、それはまあいい。
他のやつらは近くにいるのか?…
それとも、なんだ?…ついぞ、見限られたのか?
自信満々で向かってきておいて、随分あっさりやられたもんな。
ていうか、そもそも…そんなことにも気づいてなかったのか?」
アルトは内心の焦りはおくびにも出さず…煽る。
相手の意識を…自分に向けさせるために。
これ以上、フェイトに意識を向けさせないために。
「(魔術は…ダメだ。
フェイトも巻き込んじまう。)」
その間もアルトは思考を巡らせていた。
どうすれば…フェイトを救出できるかを。
「それもこれも全部、お前のせいだろうが!
襲撃が失敗する度に、俺についてくる奴は減り…
もう誰も付いて来やしねえ!」
主犯格は肩を振るわせ…そう吠えた。
「(え?…
全然、気づいてかなかった…
いや…まとめて寝かせてたからか…)」
アルトは気づいていなかったが…
アルトが待ち伏せを阻止する度に、
取り巻きたちはもうついていけない…と、
一人、また一人と諦め…その数を減らしており、
最終的に…残ったのは主犯格ただ一人。
「だが、裏を返しゃ…テメーさえぶちのめせば…
もう誰も止めるやつはいねえ…
そしたら、コイツの心も…確実にへし折れるッ!」
「(!…来る!)」
主犯格は…
フェイトへのマウントポジションを解き、
アルトへと突っ込んだ。
アルトはいつぞやと同じく、
振るわれる拳をいなし…
腕を掴もうとする。
だが…
「その手はもう食わねえよ!」
主犯格はアルトの動きを見て…
すぐさまその腕を引っ込めた。
「これで…テメーは投げれねえだろ?」
主犯格は頭に血は昇っていたが…
思いの外、冷静だった。
以前、もろに食らった投げを警戒し…
しっかりと対策を取っていた。
「もう投げれると思う…な…」
体術は武術の一種ではあるが、
そこからさらにいくつかの種類に分類することが出来る。
まず…打。
相手に打撃を打ち込むもの。
次に…投。
相手の体勢を崩し、投げ倒すもの。
そして、最後の一つが…
「(わかりやすく投げを警戒してたから…
こっちの警戒は薄いと思ったぜ…)」
絞。
相手の関節や血管などの弱点を抑え込むもの。
絞め技はまたの名を極め技と呼ばれ、
相手を行動不能に追い込むにはかなり強力である。
「どうだい?…効いたろ?…
って…聞いてねえか。」
その技にはその特徴的な形状から名が付けられており、
その名も…三角絞め。
掴まれた瞬間、投げを警戒した主犯格には…回避不能だった。
格闘技の試合であれば…
タップによるギブアップが存在するが、
この場においてはもちろん、そんなものは存在しない。
もろに食らった主犯格は…いつぞやと同じく、完全にのびていた。




