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第五章 少年期・学園生活編:目覚め

<Side:アルト>


ゴォーン…ゴォーン…


鳴り響く鐘の音。


「(!…もうそんな時間か?)」


鐘の音は時限毎に授業の開始や終了を告げるためのものであり…

今回のものは今時限の授業の終了を告げるもの。


今時限は休憩中であり…

アルトは授業を取っていなかったため、

授業が終わったこと自体は別にそれほど問題ではない。

だが、授業が終わったということは…

もうしばらくすれば、次の時限の授業が始まるということ。


アルトの設けた休憩は昼と夕方にそれぞれ一時限分ずつ。

そのため、次の時限以降に関してはアルトにも授業の予定が入っており…

授業の準備などを考えれば、あまり悠長にはしていられなかった。


しかし…


「(うーん…どうしよう。)」


アルトの手によって、治療を施され…

身体につけられていた傷こそ完治していたものの、

暴行を受けていた生徒の意識は未だ戻っていなかった。


「(さすがに放っておくわけにもいかないし…

まあ、しょうがない。

…授業はまた取り直せばいいや。)」


アルトがもっと非情なら…

放置するという選択肢も取れたかもしれない。

だが、アルトはそんな選択肢が取れるほど…酷薄ではなかった。


そもそも、それほど非情なら…

素知らぬふりをして、助けにすら入っていないだろう。


アルトは当然…未だ目覚めぬ生徒の方を優先した。


「(それより…

傷は治ってるのに、ここまで意識が戻らないとなると…

さすがにちょっと心配になるな。

まあ、あんだけボコられてたし…

おそらく、疲れてるだけなんだろうけど…

一応、医務室でも診てもらうか。)」


そう考えたアルトは生徒を背におぶり…

医務室へと向かった。



「うーん…

君の言う通り、特に外傷らしい外傷はないわ…

今はただ、眠っているだけね。」


「そうですか…」


診てもらったのは念のためではあったものの…

やはり、返ってきた答えはアルトの見立てとそれほど変わらぬものだった。


「とりあえず、その子の目が覚めるまではこのベッド使ってもらってていいから…

その子の目が覚めたら、また声をかけてね。」


「え?…ちょ…」


アルトは医務室へと連れてきたことで、

ここから先はもう任せられると思っていた。


しかし、学園の生徒・職員の数は多く…

その分、医務室を訪れる者も多い。

そのため、治療をする側も…

当然、一人の生徒だけにかかりきりになることは出来ない。


そういった事情や、

わざわざ医務室にまで連れてきたということもあって…

アルトは目覚めない生徒の友人か何かだと勘違いされ、看病を任されたのだ。


「(どうしてこうなった?…)」


そうは思いつつも…

アルトはベッドの側の椅子に腰かける。


不本意であっても…投げ出そうとはしないあたり、

律儀である。


「(でも、さすがに暇だなぁ…

だけど、こんなとこで魔術の鍛錬するわけにもいかないし…

本かなんかがあればよかったんだけど…

ここの図書館、持ち出し禁止らしいし…

いや、まあ…あんだけ高いもんを持ち出せるほうがおかしいんだけど。)」


学園には…かなりの蔵書量を誇る図書館がある。

だが、この世界では本は高価なものであり…

持ち出しは厳禁となっている。


ただし、写本をし…写しを持ち出すことなら可能なのだが、

人力で写本をしようと思うと…

一冊だけでもかなり膨大な時間がかかる。


ただでさえ、授業を取り過ぎており…

時間に追われているアルトにそんな余裕はなかった。


「(ま…しょうがない。

やっぱ、空でも眺めとくか…)」


そんな感じで…

アルトがしばらく、沈みゆく夕陽をボーっと眺めていると…


「んっ…ううん…」


その生徒はようやく目覚めた。


「…ここ…どこ?…」


目覚めた生徒はそう呟きながら寝ぼけ眼であたりを見渡す。


「お、良かった…目が覚めたんだね。

ここは…」


アルトはその問いに答えようと口を開くが…


「だ、誰!?…」


その生徒はいきなり声を掛けられたことに驚き、

思わず後退る。


「あれ!?…って、なんでベッドに?…

でも、これ…寮のベッドじゃ…」


だが、ベッドの上であったためか…

思うように後ろに下がれず、

その生徒はこの時になってようやく…

さっきまで自身がベッドに寝かされていたということに気づいた。


「ええと、改めて…

ここは…医務室だよ。

怪我は治ったけど…中々、目を覚まさなかったから僕が連れて来たんだ。」


その生徒が多少は落ち着いたのを見て…

アルトは改めてそう伝える。


「そ、そうなんだ?…それはありがとう…

えっと、君は?…」


医務室に連れてきてもらったと聞き…

その生徒は素直に感謝を述べる。


だが、感謝を述べたはいいものの…

述べた相手が誰だかわからなったのか…名前を尋ねる。


「あ、僕の名前はアルトだよ。

にしても…中々、目を覚まさないから心配したんだよ?

あの時とは違って…今回は狸寝入りじゃなかったし。」


「?…なんの話?…

僕はタヌキじゃ…」


アルトのいきなりの話に一瞬、戸惑いつつも…


「って、あ!…

そうだ…思い出した!…

君、あの時の失礼な…」


その生徒も気づいた。


「あ、それは普通にごめん。

思わず口に出しちゃった僕が悪かったよ。

でもさ…いきなり殴って逃げるのもどうかと思うよ?

あれじゃ、ほとんど通り魔じゃん。」


そう、アルトがその生徒の顔に見覚えがあったのは…

およそ一年前、アルトたちが学術都市に来たばかりの頃、

一度、出会っていたからだ。


もっとも、出会っていたと言っても…

あの時はほんの少し会話を交わした後、

アルトを殴って生徒はすぐに去ってしまっていた。


そういった事情もあいまり…

顔の印象より殴られたことの方が印象に残っていた

アルトはすぐにはあの時の生徒だと気づけなかったのだ。


「う…まあ、それはそう…

僕も悪かったよ…ごめん。

いきなり、女の子扱いされて…ちょっと腹が立っちゃったんだ…

だってさ、ええと…アルト…君?…」


アルトの抗弁に…

その生徒は若干、不満げに口を尖らせつつも…

そんな言い訳を口にする。


「別に呼び捨てでいいよ?」


「そう?…その…アルトも…大概、人のこと言えないくらい可愛らしい顔立ちしてるのにさ…

女の子扱いされるのが嫌なのは君も同じだろう?…」


「え?…うーん、僕は別にそんな嫌でもないけど…」


アルトは精神年齢的にはまあ、男の()ではないが…

それはともかく、肉体年齢的には普通の男の子で…扱いもそれに準じている。


特に女の子扱いなんてされたこともなく…

仮にされたとしても、

アルト的には大して嫌でもなかったが…

目の前の生徒的にはそうではないようだった。


「ていうか…僕、そんなに可愛い顔立ちしてる?

そんなこと初めて言われたんだけど…」


「うん、ぱっと見は女の子に見えなくもないよ?

でも、髪型とか立ち振る舞いが男の子だから、

違うのはすぐわかるけど…」


アルトの髪や目の色は父親であるバルト譲りだが…

顔立ちは母親であるテレーゼ譲り。


(見かけだけは)柔和で優し気な雰囲気のテレーゼ譲りなアルトの顔立ちは…

かつて、師匠であるステラが思わず、

「可愛い…」と零してしまったほどには可愛らしいものとなっている。


だが、この世界では鏡が高価で、

稀少であるということもあり…

アルトには自分の顔をそうマジマジと見る機会がほとんどなく、

そんなふうに言われても…あまり実感がなかった。


「そうなのか…

でも、なんにせよ…悪かったよ。

君にとっては…って、あれ?…僕、名前聞いたっけ?」


アルトは改めて詫びようとし…

名前を聞いていないことに気づく。


「あ、そうだった…

アルトの名前は聞いたけど、僕の方は名乗ってなかったね。」


そう口にすると…その生徒は名乗った。


「僕はフェイト…

あ、いや…ただのフェイトさ。」


運命という…意味を持つ名を。





※学園の施設・設備について。

購買部や医務室を始めとした…

ほとんどの学園内の施設・設備は学園の生徒・職員なら基本的に誰でも利用できる。

(場合によっては申請などが必要になったり、有償になることもある。)


施設・設備によっても異なるが、

利用できるのは基本的に学園が開校している平日の九時~二十一時の間のみ。


※医務室について。

治癒魔術や解毒魔術などを扱える講師が数名ずつ、交代制の回り持ちで常駐。

(通常の講師料に加え、別途報酬が支払われる。)

専門の治療院(いわゆる病院のようなもの)ではないが、

それに準ずるか…それ以上の治療設備・能力がある。


※図書館について。

魔術書や兵法書、学術書などをはじめとした

古今東西の様々な書物が所蔵されており、膨大な蔵書量を誇る。

蔵書の持ち出しは厳禁。ただし、写本は可能。(一部、例外あり。)

普段のアルトなら飛びつきそうなものなのだが…

上述の理由もあり、未だ訪れられていない。



本編には全然、関係ない話ですけど…

たぬきそばとかのたぬきって関西と関東で全然、別物なんですね…


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