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第五章 少年期・学園生活編:入学式

<Side:アルト>


学園の入学式には新入生と一部の在学生。

そして、一部の講師陣が参加する。


もっとも、参加すると言っても…

式の円滑な進行のために警護や案内などの裏方に、

風紀委員会や生徒会の生徒が回っているだけで…

一般の生徒は参加しない。


講師陣も一部のみなのは…

それぞれ、自身の研究などで多忙を極めるからである。


そもそも、一部の役職者を除けば…講師陣にも出席義務は存在しない。

そのため、参加する講師陣は…


「(なんというか…その…いかついな…)」


ある程度、歴を重ねたそれなりに威圧感のある面々になっており…

アルトは内心、気圧されていた。


すると…


「そんなとこ突っ立ってないで、早く座んなさいよ。

もうすぐ式始まるわよ?」


「そうだぞ、アル。

早く座れよ。」


早々に席に着いていたグレアたちは…

アルトにそう促す。


「…あ、うん。

って、これ…席決まってないのかな?

どこに座ってもいいのかな?…」


「決まってはないんじゃない?

特に何も言われてないし…

ダメだったら何か言ってくるでしょ?

…ていうか、ここ空けてるのに他のとこ座るつもりなの?」


グレアは自身の隣の席を指さしながら…そう言う。


ディエスの隣にはフィリアが座っており…

グレアとディエスの間には丁度、一人分の席が空いていた。

…いや、グレアの口振り的にわざと空けていたのだろう。


「(二人とはほぼ初対面だからわかるけど…

俺は緩衝材か?…

別にいいけど…俺をプチプチ潰しても爽快ではないぞ?)」


実際にそんなことになったらかなりのスプラッタなホラーなのだが、

そんなことを考えつつ…アルトは周囲を見渡す。


どうやら、学科ごとに席が決まっているだとかそういうこともないらしく…

他の新入生たちも各々、好きな席に座っている。

グレアの言っていたように…特段、気にする必要もないのだろう。


アルトはグレアに促されるがままに、

グレアとディエスの間の席に座ると…


「お待たせいたしました…

ただいまより…入学式を開始いたします。」


そんなアナウンスが流れ、学園の入学式は始まった。



学術都市には政府という大きな公権力が存在しないにもかかわらず、

それほど治安は悪化していない。

…それはなぜか?


風紀委員会が存在するから?


たしかにそれも一因ではある。

学園の生徒の中でも選びぬかれた精鋭揃いの…

風紀委員会の存在は治安維持に一役買っている。


だが、力はあれど…所詮は学生、と。

高を括ったならず者たちが流入し…

蔓延っていてもおかしくはない。


しかし、現実にはそうはなっていない。

…それはなぜか?


それらの答えは全て…学園の講師陣にある。


この世界では一般的に、魔術でも武術でも…

上級レベルに達すれば一人前。


そんな中で、学園の講師陣は学術科・芸術科の講師を除き…

全員が超級以上の実力者揃い。


いくら、凶悪な犯罪者といえど…

わざわざそんな魔窟に飛び込んでくる愚か者は存在しないのだ。


そして、そんな実力者たちの中でも…

学長を務める森人族…エレアノールは特別だった。


「続きまして…学長、エレアノール・リュミエールより新入生へのお言葉です。」


式は進み、進行役のアナウンスで…

エレアノールは立ち上がり、壇上へと向かう。


「あの人が…」


「彼女が…」


壇上に上がったその姿を目にした新入生たちは…ザワついた。


「(なんでこんなザワついてんだ?)」


周囲がいきなりザワつきだしたことに…アルトは首を傾げる。


「(あー…森人族だからか?…

あんまり街とかでは見かけねえもんな…)」


新入生たちがザワつくのは…森人族特有の美しい容姿に魅了されたから?

…もしかしたら、それもあるかもしれない。


だが、この場にいる大多数の者は…

エレアノールのことを知っていた。

知っていたからこそ…ザワつきが隠せなかったのだ。


エレアノール・リュミエール…

またの名を…現代最強の魔術士。

彼女の存在が…学術都市に秩序と安寧をもたらしていた。


「あー、こほん…」


エレアノールの咳払いで…

さっきまでザワついていた新入生たちは水を打ったように静まり返る。


そして、エレアノールは口を開いた。


「…我々は諸君らのこれからの成長と研鑽を楽しみにしている。」


と、思えば…

大講堂内は再び静寂に包まれた。


「「「「「?」」」」」


大講堂内にいる全員がエレアノールの言葉の続きを待っていた。

だが…


「…い、以上だ。」


エレアノールの言葉はそれ以上続かず…

そそくさと壇上から下りてしまった。


「(え?終わり?…

あの学長、適当か?…)」


新入生たちは…今度は違う意味でザワついた。


「つ、続きまして…新入生代表挨拶です。」


進行役のアナウンスにも動揺は見られたが…

そのアナウンスで一人の少女が壇上に上がった。


「この度、入学する皆様を代表いたしましてご挨拶させていただきます。

まず始めに本日は私たちのためにこのような場を設けていただきありがとうございます。…」


「(へえ…あの子が…)」


新入生代表の挨拶が始まったことで…アルトはじっと見ていた。

ふと、それに気づいたグレアがヒソヒソ声で話しかける。


「何?…あの子、アルトの知り合いかなにか?」


「いや、そういうことじゃなくて…

まあ、式が終わってからその話はするよ。

だから、今はしー…」


アルトは自身の口に人差し指を立て、

グレアを諫める。


「わ、わかってるわよ。

だから、子ども扱いは止めなさいよ。」


そんなやり取りの後、

特段変わったこともなく…式はつつがなく進んでいった。



式が終わった後、

アルトたちは授業選択などのもろもろの手続きを済ませ…

学術都市内にある飲食店へと足を運んでいた。


「さて、じゃあ改めて…

顔合わせということで。

まず、こちらがグレア。

そして、フィリア。

で、最後が…ディエス。」


料理を注文した後、

三人の共通の知り合いであるアルトはそれぞれを紹介した。


「おいおい、それだけか?

簡潔過ぎるだろ。」


ディエスはアルトのあまりにも簡潔な紹介を揶揄する。

だが…別にアルトもこれで終わりのつもりではなかった。


「ホント、せっかちだな…

一旦、紹介しただけだっての。

ディエスはこれだから…」


「なにおう…」


売り言葉に買い言葉。

アルトとディエスは今にも取っ組み合いになりそうだったが…


「ちょ、二人とも止めなよ。

お店の迷惑になるって。」


フィリアがそれを制止する。


「いや、アルが…」

「ディエスが…」


二人は言い訳をしようとするが…


「どっちもだよ。

いい加減にしとかないと…私、怒るからね?」


フィリアはスパッと切り捨てる。


フィリアは普段、めったに怒らない。

だが…そういう者ほど、怒った時の爆発力は凄まじい。


触らぬ神に祟りなし…と、ばかりに、

ディエスは見る見るうちに大人しくなった。


「(あ、あれ?…

あのディエスがこうもあっさり…

フィリアってこんな感じだったっけ?…)」


ディエスの手綱を握るフィリアが

どうにも記憶の中のフィリアと結びつかず、

アルトは違和感を覚えたが…

そうこうしているうちに…

注文していた料理や飲み物が運ばれてきた。


「じゃ、じゃあ、とりあえず…

僕たちの再会に…って、グレアたちは別に再会ではないか。

んー…この場合、なんて言えば良いんだ?」


「別になんでもいいわよ。

料理が冷めちゃうから、早くしなさいよ。」


まごつき…段取りの悪いアルトにグレアは呆れた視線を向ける。


「ま、そうだね…じゃあ、なんでもいいや。

とりあえず…乾杯!」


「「「乾杯!」」」


アルトの音頭を皮切りに、

アルトたちは料理に舌鼓を打ちつつ…

思い出話やこれからの話に花を咲かせた。


「そういえば…アルト、新入生代表の子のことじっと見てたのは何だったの?」


ふと、思い出したかのように…

グレアはアルトに尋ねる。


「ん?…ああ、あの話か。

いや…まあ、大したことじゃないんだけど…」


グレアの問いに…アルトはなぜか言い淀む。


「何よ?

…余計に気になるじゃない。」


「そうだぜ、さっさと言えよ。」


グレアとディエスはさっさと吐けと言い…

フィリアも口にしないものの、

気になるのか…チラチラとアルトの方を見ていた。


「…はあ。

実は…」


観念したように…アルトは話し始めた。

そして…


「「「新入生代表を蹴った!?」」」


グレアたちはあまりの衝撃に叫ぶ。


「ちょ!?その言い方だと語弊があるって!?

ただ僕は辞退しただけだよ!?」


アルトは訂正しようとするが…

グレアたちの言葉も強ち間違いではない。


アルトは新入生代表を辞退していた。

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