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第五章 少年期・学園生活編:早生まれとか遅生まれとかってややこしいよね

<Side:アルト>


「って…いくらなんでも早すぎだろ!?」


アルトは叫ぶ。


「いきなり何よ?…早いって…何が?」


いきなり叫び出したアルトに若干、顔を顰めながら…

隣を歩いていたグレアはそう尋ねる。


「もう入学!?

試験結果が出て、まだ一週間も経ってないよね!?」


学園の合格発表からたった数日。

にもかかわらず、

今日、行われるのは…学園の入学式。


あまりにも急なスケジュールで…アルトが騒ぐのも無理はない。


「昨日も言ってたけど…まだ言ってるの?

だいたい…合格発表の時、

掲示板に入学式のことは書いてあったでしょ?」


「…そうだっけ?」


グレアはそう言うが、

アルトには見た覚えはなく…首を傾げる。


「(だいたい…

入学式って普通、四月くらいに…

って、そうか。)」


アルトはそこまで考え…途中であることに気づく。


「(入学試験が年に二回あるってことは…入学式も二回ある。

年度の始まりが四月の感覚でいたけど…そうじゃないのか。)」


アルトはこれまで気づいていなかったが、

この世界ではそもそも年度の概念がなく…

暦のとおりの一月始まりである。


そして、学園では一月から六月までを前期、

七月から十二月までを後期とする二期制が採用されており、

前期・後期それぞれで入学試験を行っているのだ。


「(というか、そもそも…四月始まりは日本人特有の感覚か。

たしか、前世でも世界的に見れば九月始まりの学校とかもあったはずだし…

ましてや、違う世界なら…一月始まりの学校もそりゃ、あるわな。)」


違和感の原因に気づき…アルトは納得する。

そして、さらに気づいた。


「(ん?…てことはグレアは学年的には一つ上になるのか?

いやまあ、学園には年齢制限…

年齢のきまりとかないから、

学年って表現も変かもしれないが。)」


冒険者登録に行った時もしかり、

最近、やけにお姉さんぶることが多いな…とアルトは感じていたが、

あまり気にも留めていなかった。


だが、今回の件でようやくその理由がわかった。


これまでアルトは自身が二月生まれの早生まれで、

グレアと同じ学年だと思っていたが、

一月始まりだと…そもそも早生まれという概念が存在しない。


そのため、学年で換算すると…

グレアは一つ上の学年になるのだ。


まあ、実際のところ、

誕生日が半年しか変わらないので、

ほぼ同い年ではあるのだが…


「(グレアが年上とか…ウッソだろ…)」


その事実があまりにも信じられず…

アルトは奇妙な表情を浮かべる。


「急に黙ったと思ったら今度はなに?…」


いきなり叫んだと思えば、

今度は黙りこくって奇妙な表情を浮かべだしたアルトを

グレアは訝しむ。


「いや…グレアの方がお姉ちゃんなのか…

って思ってさ…」


「ふふん。

ようやくわかったのね。

そうよ!

私がお姉ちゃんなのよ!」


別にアルトはそういう意味で言ったのではないが、

ようやく認めたか…と言わんばかりに、

グレアは鼻高々に言い放つ。


「…って、そんな場合じゃない。

こんなことしてると遅刻するじゃん!

初っ端から遅刻とかシャレにならないって!」


「な!?…私のせいみたいに言わないでよ!?

アルトのせいでしょ!?」


そんな言い合いをしながら、

二人は慌てて学園へと駆けだした。



なんとか学園に到着した二人は

合格発表の行われた掲示板の前で足を止める。


「…あ、ホントだ。

貼ってある。」


そこにはグレアの言っていたように

入学式の日時とその要項…

つまり、今日のおおまかな流れが記された紙が貼りだされていた。


アルトはそれをさらっと流し見ようとし…


「ん?…開式は十時?…」


ある部分にひっかかった。


「もしかして…グレア、時間間違えた?

九時からって言ってなかったっけ?」


アルトは式の詳細を把握しておらず、

唯一、掲示を見ていたグレアの言った

入学式は九時からという言葉を信じきっていたのだが…

掲示にはしっかりと十時開式と書かれていた。


現在の時刻は八時五十分。

十時開式となると…式までは一時間以上ある。

だったら、わざわざ急ぐ必要なかったじゃん…

そう言わんばかりの視線をアルトはグレアに向ける。


「し、失礼ね!

ちゃんとよく見なさい!」


そう言いながら、グレアはある部分を指さす。


「…あ、ホントだ。

九時に…第二大講堂ってとこに行けばいいのね。」


何事にも準備は必要であり…

集合と開始の時刻が異なるなんてのはよくあることではある。


「いくら私でもさすがに九時と十時は間違えないわよ…

にしても、ホントに見てなかったのね…

こういうのは普段なら、

アルトの方がちゃんと見てるのに…珍しいわね。」


「ま、まあ…あの日は色々あったし、

バタバタしてたんだよ…」


グレアの言葉に…

アルトは恥ずかしそうにポリポリと頬を掻く。


実際、普段のアルトならまず見落としていなかったであろうが…

合格発表の際は呼び出しの件で頭がいっぱいになっていたり、

呼び出しの後もグレアを慌てて追いかけたりで…

掲示をしっかりと見る時間や余裕がなく、

見落としてしまっていたのだ。


「ふうん…まあ、いいわ。

それより、第二大講堂ってどこ?

ここ広いし、呑気にしてたらそれこそ遅れるわよ?」


「それはそうだね。

たしか、中央棟だった気がするんだけど…

僕もちゃんとは覚えてないしな…

って…あ、待って。

こっちに学園の案内図がある…

第二大講堂は…やっぱり中央棟だね。」


掲示板に掲示されていた学園の案内図を確認し、

アルトは中央棟の方を指さした。


「ええ?…なんで覚えてるのよ?…

半年前に一回見たくらいでしょ?…」


グレアはアルトの記憶力に驚いた様子で呟く。


学園内はあまりにも広く…

半年前にたった一度見学しただけで、

学園内の構造や配置を覚えることなどほぼ不可能に近い。


にもかかわらず、アルトはうろ覚えでも覚えていた。

グレアが驚くのも無理はない。


実際のところ、アルトが第二大講堂を見たのは半年前に一回…だけではない。


「(いや、こないだグレアを探して走り回った時にも多分見てるんだよな…

必死になって探してたってバレるの恥ずかしいから言わないけどさ。)」


アルトは一週間前、

グレアを探し、学園内を走り回った時に第二大講堂も見ており…

たまたまその場所を覚えていたのだ。


「もうそろそろ九時だし…グレア、急ごう!」


「え?…ええ!」


アルトはグレアの追及を避けるために話を逸らしつつ、

二人は第二大講堂へと向かった。



中央棟、第二大講堂。

そこには多くの人が集まっていた。


しかし、その光景にアルトは違和感を覚えた。


「(多分、私服の人たちが新入生で…

制服を着てるのが学園の生徒、あとは教員だよな?…

合格者は数百人単位のはずなのに…そんなにいるようには見えない。

せいぜい数十人くらいか?…)」


九時集合で時間はほぼ九時丁度。

にもかかわらず、

集まっている新入生と思しき者の数はその半分…いや三分の一にすら満ちていなかった。


「(そもそも九時集合ってのが間違ってるのか?…

いや、だとしたら今来てるこんだけの人数が間違ってることになるし、

さすがにそれは考えにくいよな…

他のやつらがただ単に時間にルーズなだけなのか?…わからん。)」


アルトが第二大講堂の前で立ち止まり、

そんなことを考えていると…


「もしかして…新入生ですか?」


アルトたちが立ち止まっているのを見かねた

ある女子生徒が二人に話しかけた。


「あ、はい…僕ら二人とも今日入学です。」


「やっぱりそうでしたか…

おめでとうございます。

中で制服をお渡ししていますので、

こちらへどうぞ。」


「(あー、そういや制服とかあったな。

忘れてた。)」


女子生徒に案内されるがまま、

アルトたちは第二大講堂の中へと足を進めた。


「ではお二人とも受験票を見せていただけますか?」


「…これですね。

こっちが僕ので…こっちが彼女のです。」


「…はい、ありがとうございます。」


女子生徒は受験票を確認すると、

大講堂の奥へと消えて行った。


「にしても…たった一ヶ月やそこらで新入生全員分の制服用意してるってすごくない?」


「たしかに凄いけど…

一ヶ月って…どっからその数字出て来たのよ?」


アルトの言葉に同調しつつも、

グレアは首を傾げる。


「入学試験受けた時に制服のサイズとか希望学科とか書いたのって、

たぶん、これが理由でしょ?」


「あー、そういえば書いたわね。

なるほどこのためだったのね…すっかり忘れてたわ。」


入学試験を受けた際に、

問題の解答欄以外に制服のサイズと

希望学科(第一希望から第三希望まで)を記載する欄があった。


そこに記載された情報を元に、

学園側は制服を用意したのだ。


「(あれ?

前世でも制服作るのそれぐらいだったっけ?…

まあ、もう何年も前のことで覚えてないんだけどさ。

試験の採点とかも考えたら、

実際に用意できる期間はもっと短いだろうし…やっぱ凄いよね?)」


自分で言ってみたものの、

一瞬、そうでもないか…と思ったアルトではあったが、

色々考えてみると、やっぱり凄いかという結論に至った。


そうこうしているうちに…女子生徒が二つの袋を手に戻ってきた。


「お待たせしました。

そして…おめでとうございます。」


「(うん?…さっきも言ってなかった?…

いや、別に何回言われても良いんだけどさ…)」


同じ言葉を再び口にした女子生徒に

アルトは違和感を覚えつつも、

袋を受け取り…


「二人とも特待だなんて優秀ですね。」


「うぇ!?」


続けられた女子生徒の言葉に目を剥いた。





暦の話で過去話に矛盾が出来ていたので一部修正。

一月始まりだと早生まれとかの概念がそもそもないやんけ…

ってことに後から気づきました。

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