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幕間:初めての依頼

<Side:アルト>


時はアルトとグレアの二人が冒険者登録をしたばかりの頃まで遡る。


その日、アルトとグレアはとある商店を訪れていた。

しかし…


「「どういうこと(ですか)(よ)!?」」


思いもよらぬ事態に二人は揃って声を上げる。


「どうもこうもねーよ。

ガキには売れねえってさっきから言ってんだろ。」


だが、その店の店主はぶっきらぼうに言い放つばかりで…

取り付くしまもない。


「せめて、理由だけでも教えてくださいよ!

ただ売れないってだけ言われても…

僕らも必要だから剣を買いに来てるんです!」


アルトたちは伯爵邸から訓練用の木剣は持ってきていたものの、

真剣はほぼ使っていなかったこともあり、持ってきておらず…

冒険者として活動するため、武器屋に剣を買いに来ていた。


にもかかわらず、

販売を拒否されたアルトたちは当然、納得がいかず…食い下がる。


が…


「だから、文字通りの意味だっての。

武器はオモチャじゃねえんだ。

この店にはガキに売るもんはねえんだよ。

ほれ…わかったなら、とっとと帰んな。

仕事の邪魔だ。」


子供の遊びには付き合ってられないとばかりに、

店主はひらひらと手を振る。


「…ッ!…言わせておけば…!」


「ちょ!?グレア、待って!

一旦ステイ!」


店主のあんまりな態度にグレアが拳を振り上げようとし…

アルトは慌てて羽交い絞めにする。


「は、離しなさいよ!?」


アルトにいきなり組み付かれ、

グレアは顔を赤くしつつも、

振りほどこうとする。


だが、腕の力を殺された状態では、

それは容易ではなく…

グレアはアルトによって、

ズルズルと店外へと引きずり出された。



「離しなさいってば!」


店外に引きずり出されたグレアはアルトを振り払い、

拳を握りしめたまま、再び店内に戻ろうとするが…


「僕相手ならともかく…いや、僕相手でもホントはダメなんだけど…

知らない人に暴力はホントのホントにダメだって!」


アルトが立ちふさがり、それを制止する。


「前から言ってるけど、

グレアはなんでもかんでも短絡的に、

暴力で解決しようとし過ぎだよ!」


「…暴力でしか解決できないことだってあるわ。」


アルトのお説教に、

グレアは唇を尖らせ、ぶーたれる。


「たしかにそうかもしれないけど、

僕らには言葉があって…話し合える知性があるんだ。

それを捨てて、

安易に暴力に走るんじゃ、

魔物なんかと大して変わらないよ。」


アルト自身、話し合いで全ての物事が解決するなんて思っちゃいないし、

そうならない現実も知っている。


だが、アルトはグレアの矯正のために、

あえて強い言葉を使う。


「で、でも…あれだけ言っても聞かないなら、

しょうがないじゃない?」


「え?…あれだけ言ってもって…

グレアはなにも言ってなかったような…」


「…」


アルトの呟きは聞こえないと言わんばかりに…

グレアは唇を尖らせたまま、そっぽを向く。


「ま、まあ…

今のお店はダメだったけど、

他のお店なら売ってくれるかも…」


そっぽを向いたグレアを見て、

若干、気まずくなったアルトが苦笑を浮かべながら、

話題を変えようとすると…


「!…そうね!

よく考えれば、学術都市に武器屋は他にもあるんだし、

何もあの店じゃなくてもいいものね!

…そうと決まればとっとと行くわよ!」


「え!?…ちょっ!?…」


もうこれ以上、お説教を食らってたまるかと言わんばかりに、

グレアはアルトの手を引き、駆けだした。



「…なるほど。

そういうことだったのか。」


アルトはようやく合点がいき、納得する。


アルトたちはあの後、

学術都市にある他の武器屋を尋ねた。


その武器屋の店員から返ってきたのがこんな言葉だった。


「ごめんなさいねぇ…

一定の長さ以上の刃の付いた武器は危ないし、

未成年に売っちゃいけないって法律で決まってるのよ…

木剣くらいなら売ってあげられるんだけど…」


法というものは基本的に国家の定めるものであるが…

学術都市は自治都市であり、国家に属していない。


ならば、学術都市は無法地帯なのかと問われれば…

答えは否。


学術都市には独自の法はないというだけで、

学術都市の法は学術都市設立に関わった各国の定めた国際法に準拠している。


その中の一つに未成年者への武器の販売を禁ずるものがあり…

アルトたちは剣の購入を断られたのだ。


「(考えてもなかったけど、

まあたしかに危ないし、

銃刀法みたいなもんか…)」


もっとも、こちらの場合は未成年者への販売の禁止であって、

所持や携帯の禁止ではないため、

厳密には異なるのだが、

まあ、そういうものか。と、アルトは納得した。


だがしかし、納得のいっていない者もいた。


「なるほどじゃないわよ…

アルトは魔術があるからいいかもしれないけど、

私は剣がないと冒険できないじゃない!」


グレアは銃刀法なんていう概念は当然、知る由もないため、

納得できるはずもなく…


紆余曲折はあったものの、

冒険者登録できたことで、

ドキドキワクワクの冒険を楽しみにしていたグレアは…

完全にお冠だった。


「ま、まあ…本格的に活動するのはもっと後のつもりだったし、

依頼は都市から出ないものもあるしさ…」


「え?…そうなの?」


アルトの言葉に、

ついさっきまでカンカンだったグレアが食いついた。


「あ、なら…気分転換に一回受けてみない?

初めての依頼ってやつ!」


アルトのその提案に…グレアは小さく頷いた。



アルトたちは冒険者ギルドで、

受付にいたシーラに相談し、

オススメされた依頼を受諾したのだが…


「依頼は依頼だけど、

これは雑用なのよ。

全然、冒険じゃないわ!」


「あはは…逆にグレアはどんなの想像してたのさ?」


グレアのぼやきにアルトは苦笑する。


アルトたちが受諾した依頼は一言で言えば…薪割りだ。


冒険者ギルドには単に人手不足を補うために依頼されることも多くあり、

そういった依頼のほとんどがこういった雑用系のものである。


(雑用系の依頼はよっぽどのことがない限り、

基本、冒険者の等級による制限は存在しない。)


「記念すべき初めての依頼だし…

だから、なんかこう…すごい…そういうのよ!」


「聞いてもわかんなかった…」


「わかりなさいよ!」


グレアはそうは言うものの、

今の説明で伝わる方がよっぽどおかしいだろう。


いくら一緒にいる時間の長いアルトといえど、

察せる限界はあるのだ。


「ええと…このへんかな…ってあれ?」


依頼で指定された住所を探し、たどり着いた場所。

そこには…見覚えのある光景が広がっていた。


「ここ…あの感じの悪い男の店じゃない!」


「あれ?…依頼主は確か鍛冶師って…あ。」


武器屋で取り扱われる商品はなにかと聞かれれば…それは当然、武器である。

(武器以外も取り扱う店もあるが。)


そして、その武器を作るのが鍛冶師だ。


鍛冶師の中には武器屋と兼業している者もおり…

この店の店主である男もそのうちの一人だったのだ。


「…ん?

って、なんだ…また来たのかガキども。

何回来ても売れねえもんは…」


「あ、今度は別件です。」


そう言いながら、

アルトはギルドで依頼を受注した際に受け取った票を見せた。


「ギルドの依頼書…

たしかに俺の出した依頼だな。

だが…」


票を確認した店主の男はアルトとグレア、

それぞれを一瞥し…


「冒険者?…

お前らのようなガキが?…」


鼻で笑った。


その反応は一度は落ち着いたグレアの怒りに再び火をつけた。


「ガキガキうるさいわね!

私はガキじゃないわ!

ガキばっかり連呼するアンタの方が、

中身はよっぽどガキでしょ!」


「ああん!?」


「ちょっ…グレア、止めなよ!

店主さんも落ち着いて!…」


アルトはなんとか諫めようとするも、

どちらも聞く耳を持たない。


一度目の時とは違い、

いきなり殴りかかろうとしなかっただけマシではあるのだが、

グレアと店主の相性は相変わらず最悪だった。


「ガキじゃないってんなら…

仕事で見せてもらおうじゃねえか!」


「上等よ!」


店主の挑発にグレアは啖呵を切り、

二人は店を出て行った。


「どうしてこうなった?」


一人残されたアルトは首を傾げながら…

出て行った二人の後を追いかけた。

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