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第四章 少年期・学園入学編:再会

<Side:アルト>


学長室での話を早々に切り上げたアルトは学園内を駆けていた。


「(グレアのやつ…どこ行ったんだ?…)」


グレアが飛び出して行ってから、

アルトたちが話を終えるまで…たった数分しか経っていないものの、

それだけあれば姿は当然、見失う。


アルトは手がかりもなく、

広大な学園内を手当たり次第に捜索していた。


「(屋内にはいないのか?…

ってもしかして…グレア、俺を置いて帰った?…)」


アルトたちは学術都市に来て、

最初に宿を取った日から今も変わらず同じ部屋で二人で寝泊まりしている。


初日以降、分ける機会はいくらでもあったのだが、

結局分けていないのは二人で相談(?)した結果だ。


二部屋よりも一部屋の方が当然金額は安い。

金銭面的にはゲオルギスがかなりの金額を持たせてくれていたこともあり、

分けることも出来たのだが、

グレアに「そんなの無駄遣いよ。」と一蹴され、

結局分けずじまいになったのである。

(分けようとしていたのはアルトだけだが。)


どう足掻いても帰る先は同じなので、

さすがに置いて帰ってはいないだろう…とアルトは考えていたのだが、

どれだけ探しても見つからないことで、

その可能性が頭をよぎり始めていた。


「(一旦、屋外の方も探してみるか…)」


屋内ではグレアは見つからず、

アルトは屋外に捜索範囲を広げることにした。

のだが…


「…さっむ!?」


扉を開け、屋外に出たアルトはそのあまりの寒さに震えた。


「(うぃー…さすがに冬だなぁ…

寒さには強い方だと思ってたんだけど、

それにしても…今日は寒いな。)」


アルトはどちらかと言えば、

暑がりで冬生まれということもあってか…

寒さには比較的、耐性があった。


だが、今は一月で…季節は冬真っ盛り。

雪こそ降っていないものの、

それが降るに近しい気温となっていた。


さらに、屋内には暖房用の魔導具が設置されていたこともあり、

内外での温度差でアルトの体感ではより一層、寒さを感じていた。


「(でもたしか、グレアってどっちかってーと、

寒がりだったような?…

待つにしても屋内だろうし、

こりゃやっぱ、先帰った説が濃厚か?…

まあ一応、探しはするけど…)」


そんなことを考えていた矢先…


「試験の日も今日もかなり探したのにこんな見つからないなんて…

アイツ、本当に来てるのか?」


「情報が間違ってなければ来てるはずなんだけど…

もしかしたら、気づかなかったのかも。」


アルトはそんな話し声を耳にした。


「(うん?…

俺以外にも誰か人探しをしてる人がいるのか?…

ならもしかすると、グレアを見てるかも…)」


この場所で人探しをしていたなら、

グレアを目撃している可能性もあるかもしれない。と、

アルトは話し声の主である二人組に話を聞いてみることにした。


しかし…


「あ、すみま…」


「だいたい二年ぶりだし…

その可能性も全然あるんじゃないかな?」


「二年でそこまで変わるかねえ?…」


話しかけようとしたアルトの声は、

二人のそんな会話にかき消された。


「(そ、そっすかぁ…

あ、あれ…おかしいな?…

人に話しかけるのってこんな緊張するっけ?…)」


アルトは普段の振る舞いからはわかりづらいが、

いわゆる陽キャというやつではない。


意図的に明るく…おどけて道化を演じてはいるものの、

むしろ、素のアルトは転生の経緯などもあいまり、

どちらかといえば陰気寄りだ。

(でなければ、友人が片手で数えられるほどしかいないこともないだろう。)


もっとも、

普段はもっとひどいコミュ障の誰かさんが側にいることで、

その部分は抑え込まざるを得ず、顕在化はしないのだが…

グレ…その人物は奇しくも今、側にいない。


ここにきてアルトの陰な部分が顔を覗かせていた。


「(む、無視されたとかじゃない…よね?

きっと多分、聞こえてなかっただけだよね?

そうだよね?

すぅぅ…はぁぁ…落ち着けぇ…

ひっひっふー…)」


アルトがなんとかして動揺を鎮めようとしていると…


「にしても、ホントどこに…」


一人がそう口にしながら、

あたりを見回し…そして、固まった。


「…?

どうし…」


不自然に停止した同伴者の視線を追い…

もう一人も固まる。


「(よし、ちょっとは落ち着いてきた。

もう一回声を…)」


アルトが再び声をかけようとした…その時。


「「いるじゃん!?」」


二人は素っ頓狂な大声を上げた。


「(う…声デカ…

って…ん?…今、なんて?…

てか、この二人…どっかで…あ!?)」


アルトはこの時になって初めて、

その二人組をまじまじと見て…ようやく気付いた。


「「アル!」」


「フィリア!?

ディエス!?

なんでここに!?」


人探しをしていた二人組は…

およそ二年前、

アルトが故郷のリオス村で別れた幼馴染…

フィリアとディエスであった。


「何で?…

…フィリア、あの空飛ぶ船なんてったっけ?」


「…飛空艇だね。」


ディエスの問いかけにフィリアは半笑いで答える。


「飛空艇!?

あ、いや…気になるけど、そういうことじゃなくて…」


一度乗ったことのある(乗せられていたとも言う)乗り物の名に、

アルトは驚きつつも…

アルトが聞きたいのはそういうことではない。


「?…なら、どういうことだよ。」


「ぷっ、アハハ…」


アルトとディエスの会話は絶妙に噛み合っておらず、

それを聞いていたフィリアは堪えきれず噴き出した。


「?…フィリアはなんで笑って…

って、ああ!?…そういう意味かよ!」


フィリアが噴き出したことで、

ディエスはようやく己の勘違いに気づいた。


「(ディエスは相変わらず…

天然というか…PONというか…

でも、この感じ…懐かしいや。

背が伸びたりとか…

見た目はちょっと変わってるけど、

中身は全然変わってねえ…

久々に会えてすげー嬉しいな…)」


アルトは口には出さないものの、

幼馴染との久方ぶりの再会に心躍らせる。


「話したいことは色々あるけど、

二人とも…ここじゃなんだし、

どこか落ち着ける場所で…」


そこまで口にしかけ、

アルトはふと思い出す。


「(って、いや…グレア探してるんだったわ。)」


再会の喜びのあまり、

あやうく忘れてしまうところではあったが、

アルトはまだグレアを探している最中だった。


「ごめん!

今は人を探してたんだった。

また落ち着いたら尋ねるから滞在先だけ教えて!」


「え?…あ、うん。わかった。

でも、人探し?…

もしあれなら手伝うよ?」


「ありがと。

でも、それは大丈夫。

そもそもアイツ人見知りだし…見たかどうかだけ教えてくれれば十分だよ。」


グレアが人見知りなこともあり、

アルトはフィリアのその提案を固辞する。


「そっか…

で、…どんな人を探してるの?」


「ええと…こんな感じの髪型で…

髪色は赤くて…」



「それなら多分…さっき門から出て行ったと思うぞ?」


グレアの特徴を聞いたディエスはそう答える。


「ホント!?

フィリアも見た!?」


「ええと…あ、いや…ごめん。

私は見てないや。」


フィリアはディエスと一緒にいたらしいのだが…

どうやらフィリアは見ていないらしい。


「なんだ?…疑ってんのかよ?」


アルトは情報の確度を上げるため、

フィリアにも確認しただけなのだが…

それを疑われてると感じたのか、

ディエスは口を尖らせ、ぶーたれる。


「違う違う…一応、聞いただけだって。

でも、教えてくれてさんきゅ!

…じゃ、二人ともまた今度!」


「え?…も、もう?…は、早…」


アルトはフィリアたちに感謝の言葉を伝えると、

二人と別れ、グレアを追って学園を飛び出した。

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