第四章 少年期・学園入学編:合格発表
<Side:アルト>
あっという間に月日は流れ、
アルトたちが冒険者登録をした日から半年。
アルトたちの姿は学園にあった。
「(00013…00013…あった!
ふう、良かったぁ…)」
先日、学園の入学試験が行われ、
今日はその合格発表の日。
アルトは試験の難易度がそこまで高くないこともあり、
その結果に自信がないわけでもなかったのだが、
いざ発表されるとなると、
受験番号が不吉なのもあいまって、不安に駆られていた。
「アルト!あったわ!
私の番号はあったわよ!
アルトの番号はあった!?」
自身の番号があることを確認したグレアは喜色満面。
興奮冷めやらぬ様子でアルトに尋ねる。
「あはは…落ち着いて落ち着いて。
僕もあったよ。
僕とグレアは連番だし…ほら、グレアの番号の一個上にあるでしょ?」
アルトは笑いながら、
合格者の番号が張り出されている掲示板を指さす。
「あ…そ、そうね…
舞い上がっちゃったわ…
は、恥ずかしい…」
アルトに関しては前世でこういったペーパーテスト…
いわゆる筆記試験を受けたことはあるが、
グレアは当然、初めてだ。
初めての体験に舞い上がるのも無理はない。
「まあでも…おめでとう。
勉強頑張ったもんね。」
「…アルトのおかげよ。
アルトが教えてくれなきゃ、私一人ならきっと落ちてたわ。」
「(うーん…グレアはやれば出来るし…
俺がいなくても変わらなかったと思うけど…)」
そんなふうにアルトは言うが、
もし、アルトがいないとなると、
グレアは合格していないどころか、
学園に行くきっかけもなく、
そもそも試験を受けていない可能性すらある。
結局のところ、そんなのはたらればの話で、
言い出したらキリがない。
ただ、ひとつだけ確かなのは…
二人とも無事、学園の入学試験に合格した。
それだけである。
「…?…あれ?
アルトの番号って…」
掲示板を眺めていたグレアはあることに気づく。
「?…さっき言ったじゃん。
…さてはちゃんと聞いてなかったな?
この浮かれポンチさんめ!」
「ポンチって何よ?…
言ってる意味はわかんないけど、
なんか馬鹿にされてるような気がするわ。」
今日日聞かないような言い草ではあるが、
持ち前の勘の鋭さでそれが悪口であることをなんとなく察した
グレアはムッとした表情でアルトを睨む。
「気のせい気のせい。」
「絶対、気のせいじゃないと思うんだけど…」
「それで…僕の番号だっけ?」
入学試験に合格したこともあり、
今日のグレアは上機嫌だ。
わざわざそれを損ねてもたまらないと、
アルトは慌てて話題を逸らす。
「さっきも言ったような気はするけど、グレアと連番…だから、00013だね。」
「…ちゃんと話は聞いてたわよ?
い、一応…確認で聞いただけだから!」
微妙な間といい、変に上ずった声音といい…明らかに嘘である。
グレアはその素直さもあいまってか…
壊滅的に嘘が下手なのだ。
「はいはい。
で…それがどうかしたの?」
アルトには明らかに嘘とわかっていたものの、
敢えてそこには触れず、
わざわざ試験番号を確認した理由を尋ねる。
「…あれよ。」
そう言いながらグレアは掲示板の一部分を指さし…
そこにはこう書かれていた。
『以下の受験番号に該当する者は
合格発表終了後、速やかに学長室へ来ること。
・00013 』
「(へ?…俺、なんかした?)」
入学前から…いきなり呼び出しだった。
…
「(なんで呼び出しなんて…)」
いきなりの呼び出しにアルトはあまり気が進まない。
だが、これから入学する手前、
さすがにバックレるわけにもいかず、
渋々、学長室を目指していた。
「にしても…アルト、一体何やったのよ?」
グレアは揶揄うように笑う。
「そんな変なことは何もやってないと思うんだけど…」
正直なところ、アルトには呼び出されるような理由には心当たりが全くなかった。
「…どうかしら。
アルトは大概、非常識だし…」
「グレアが言うの!?」
アルトは異世界からの転生者で…
グレアは箱入りの(いつぞやは袋に詰められていたが。)お嬢様。
ベクトルは違うものの、どちらも大概、非常識なのだが…
お互い、自分の非常識さは棚に上げていた。
「(もしかして、半年前の…
いや、でもあれはやったのほぼグレアだし、
そもそも受験番号とか関係ないか。
となると、それこそ入学試験ぐらいか?…)」
アルトは心当たりがないなりに、
ありえそうな線から呼び出しの理由を推測しようとしたのだが…
イマイチ結びつかない。
「…っと、アルト行きすぎよ。」
「へ?…
あ、ここか。」
アルトが振り返ると、
そこには学長室と書かれた表札があった。
「にしても…ここ広いよね。」
「ここって?…
ああ、学園のこと?」
「そうそう。
一回、見学に来てたから迷わずに来れたけど、
初見だったら確実に迷子になってた自信があるよ。」
「なんの自信よ…」
アルトたちがそんな会話をしていると…
ガチャリ。
「君たち、ここは学長室だが…
何か用かね?」
学長室の扉が内側から開かれ、中から壮年の男が現れた。
「(…この人が学長か?
いかにも偉そうな感じだし…多分そうだよな?)」
男の出で立ちや纏う雰囲気はいかにも高位の役職者…といった感じで、
学長室から現れたこともあり、
アルトは彼が学長だと判断した。
「ええと、すみません。
掲示板のところに学長室に来るように書いてあったんですが…」
「!…なるほど。
…だが、妙だな?
呼び出していたのは一人のはず…」
呼び出されたのはアルトだけなのだが、
付き添いのグレアもいたことで、
男は首を傾げる。
「あ、すみません。
呼ばれたのは僕なんですけど、
グレアは付き添いで…」
アルトは慌てて説明する。
「理解した。
そうか…君がか…」
アルトの言葉を聞き、
男はアルトを上から下まで一通り見回し…
なにかに納得したように頷いた。
「おっと、すまない。
学長は中でお待ちだ。
君の入学…楽しみにしておこう。」
男はそう口にすると、
クルリと踵を返し、去って行った。
「(あれ?あの人が学長じゃないの?
…まあ、今はいいや。
これ以上待たせても悪いし、
さっさと中に入ろう。)」
アルトは首を傾げつつも、
学長室の扉をノックした。
悪いことしてなくても、
呼び出されるとなんか悪いことした気分になりますよね…




