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第四章 少年期・学園入学編:勝てばよかろうなのだあああ!

更新頻度落ち気味ですみません…

前話にちょっとミスがあったので一部修正。

(ミスに気づいた時はちょくちょく修正してます。)

<Side:アルト>


「ん、んん…ッ、痛…あれ…私…」


目覚めたグレアは痛む胴を抑えつつ、あたりを見渡し…

そして、その光景を目にした。


「ちょ、ちょこまかと…」


「うわっ!?」


待ちの宣言をしていたアルトだったが、

攻撃に切り替えた男に追われ、逃げ惑っていた。


試験が行われるスペースが広かったこと。

男の機動力がそれほど高くなかったこと。

小柄なアルトが剣を捨て、早々に逃げに徹したこと。

様々な要因が重なったことで、

グレアを簡単に伸した男を相手に、

アルトはかろうじてでも…逃げ回ることに成功していた。


「…さすがアルトね。」


グレアは唇を噛みつつ…呟く。


そして、そのままボーっと眺めていると…


「んお?…」


「え?」


グレアはアルトを追走していたはずの男と目が合った。

…合ってしまった。


「もう目が覚めたのか!…

なら…」


男は真っ直ぐに進む。

…グレアのいる方に向かって。


「え?え?…ちょ…」


グレアは慌ててさっきまで握っていたはずの剣を探す。


だが、剣は遥か後方。

のされた際に弾き飛ばされていた。


「悪いが、条件が条件だからな…

もう一度寝ててもらおう!」


男の剣がグレアに向かって振り下ろされる。


絶体絶命。

別に死にはしないが、

グレアはかなりの危機的状況に陥っていた。


…その時。

一陣の風が吹き抜けた。


「…!?」


すぐそばに迫っていたはずの男がいきなり視界から消え、

グレアはあたりを見渡す。


そして、ここ一年で見慣れた顔がすぐ近くにあることに気づく。


「良かった…グレア。

中々起きないから心配だったんだよ?」


「アルト…!」


グレアの窮地を救ったのは…アルト。


「た、助かったわ…でも一体…っ!?」


グレアはアルトに礼を言いつつ、

何をしたのか問い詰めようとし…言葉を失った。


グレアはすぐには気づかなかったが…

アルトは全身傷だらけでボロボロだった。


「っち…いてて…さすがに無茶し過ぎたか…」


アルトは以前、湖から陸地に上がった時にやったように

風魔術を推進力にし、

まるでジェット噴射のような勢いで跳んだ。


しかし、あの時とは違い…

グレアを救うために緊急で魔術を行使したことで、

逆噴射での制動が間に合っていなかった。


「まあ…でも、治せるから大丈夫さ。

ついでに…グレアも。」


そう言いつつ、アルトは自身とグレアに治癒魔術をかけた。


「…あ、ありがとう。

でも、私のためにあんな無茶…」


グレアは自身の窮地を救うために

アルトがかなりの無茶をしたのだと気づき、

申し訳なさ気な表情を浮かべる。


「あはは…気にしないで。

でも、話はちゃんと聞いてよね。

グレアが起きるまでホント大変だったんだから。」


「う…わかってるわよ。」


アルトは苦笑しながらも、ちくりと言葉の棘で刺す。

グレアは痛いところを突かれ、

渋い顔をしつつも、アルトの言葉に頷く。


「…驚いた。

今のは魔術の無詠唱か…?

てことは、坊主は魔術士だったのか。

嬢ちゃんもそうだが…上手く騙されちまったな。」


アルトたちに追いついた男は

ポリポリと頭を掻きながら、アルトに話しかける。


「別に騙すつもりはありませんでしたよ。

…ただ使っていなかっただけで。」


その言葉の通り、アルトには別に騙す意図はなかった。


ただ、男が模擬戦用の武器を用意していたことで、

魔術を使うという選択肢が頭からすっかり抜けていたのだ。


「はっ…どうだか。

嬢ちゃんはともかく、坊主は中々性格悪いしな。

だが…惜しいことをしたな。」


男はニヤリと笑う。


「何がです?」


「魔術を使えることを隠したまま、

俺の虚を突けば、もしかすると俺に勝てたかもしれねえのに。

そのチャンスを…足手纏いの嬢ちゃんを救うために不意にするなんてな。」


たしかに男の言うようにアルトが魔術で不意を突けば、その可能性はあったかもしれない。

しかし、それはあくまで可能性の話。


実際には…二つの理由で実現しない。


一つはアルトが他人を魔術で攻撃するのを嫌うこと。

そして、もう一つは…


「僕は…グレアと冒険者になりに来たんです。

僕一人で勝っても…意味がない。」


アルトはグレア『と』冒険者になりに来た。


もし仮に、アルトが一人で男を打ち倒した場合、

途中からのびていたグレアが不合格になる可能性も考えられる。


一人での勝利はアルトにとって価値はなく…二人での勝利を求めたのだ。


「だから…勝つよ。グレア。」


「…!…ええ。」


アルトの宣言にグレアは驚きつつも、頷きで返す。


「ははっ!…いい度胸だ!

どこからでもかかってこい!」


「「望むところだ(よ)!!」」



剣を回収したグレアが男に再び躍りかかる。


「…?

まるで学ばんな…ッ!?」


男はこれまでと同じようにグレアの攻撃を捌こうとし

…気づいた。


アルトが自身に向けて構えていることに。


「ちっ…!」


男は慌てて飛び退く。


「惜しかったわね!」


「ん?…ああ…うん、そうだね。」


一旦、側に戻ったグレアの言葉に、

アルトは曖昧な相槌で返す。


「このまま攻めれば勝てるわよ!」


「いや、さすがに無理だよ。

かなり警戒されてるし…」


実際のところ、

構えはしたものの、

アルトは前述の理由もあり、

男に向けて魔術を放つつもりはなかった。


しかし、男はおろか…グレアですらもそのことは知らない。


それ故に、アルトの魔術に対し、

男は警戒を強め…ある意味、強大な抑止力ともなっていた。


「なら…何か策でもあるの?

悔しいけど…相手は強い。

無策で挑んで敵う相手ではないわよ?」


気勢を削がれたのか、

グレアは渋い顔をしつつ、

アルトに問う。


「さすが、無策で挑んで負けた人は違うね。」


「…お望みなら、アンタからぶっとばすわよ。」


アルトに皮肉られ、顔を赤くしながらも、

グレアはそう言い返す。


「おお怖。

まあ、それはさておき…ごにょごにょ…」


「…!…なるほど。」


アルトはグレアに耳打ちする。


「作戦会議は終わったか?」


「ご丁寧に…終わるまで待ってくれたんですか?」


男はアルトたちの作戦会議が終わるまで、

ずっと腕を組んで待っていた。


「まあ、一応…試験だからな。

逃げ回っていたさっきまでとは違うし、

坊主たちがどんな策を弄して俺にぶつかってくるのかが見たいのさ。」


逃げるだけならともかく、

自身に向かってくるというのなら、

真っ向から迎え撃つ。


男はそういう姿勢だった。


「では…とくとご照覧あれ!」


そう言うとアルトは…魔術(・・)を放った。

()に向かって。


「ん…なん…」


男は条件反射のように放たれたそれを目で追う。


そしてそれは次の瞬間…爆ぜた。

激しい音と光を放ちながら。


「ぐうっ!?…め、目がぁ…!?」


放ったのはいつぞやアルトたちを救うことになった魔術を改良した…

いわば、魔術版『閃光爆弾(スタングレネード)』。


「(本当なら使いたくはなかったんだけど…

ま、当てなきゃセーフってことで。

そもそも…別に使わないとは言ってないしね。)」


アルトは言い訳がましく心の中で独り言ちる。


グレアと勝利を勝ち取るために己のポリシーを曲げ、

魔術を目眩ましとして使った。


その甲斐もあり、男に隙を作ることに成功していた。


「グレアっ!」


「ええっ!」


アルトは剣を手に、グレアと共に躍りかかる。


「…!?…坊主!卑怯だぞ!」


視覚を奪われつつも、男は二人の攻撃に反応し捌く。


「ふははは!勝てばよかろうなのだあああ!」


「…アルト、さっきと言ってること違うわよ。」


アルトはどこかの悪役のように高笑いを浮かべ、

グレアは呆れたように白い目を向ける。


「…なんだって?…くそ、耳も使い物にならん…」


男は音も上手く拾えていないようで、

アルトのかなりの大声での高笑いすらも上手く聞き取れていなかった。


そして…そんな状態で二人の攻撃を捌くのにも限界があった。


「うお!?」


男はグレアの一撃を捌ききれず、

体勢を崩した。


「(とった!)」


アルトは勝利を確信し…剣を振り下ろす。


男は視覚も聴覚も奪われ、隙だらけ。


アルトは…いや、アルトだけではない。

グレアも…そして、もし仮に第三者が見ていたとしても、

アルトたちの勝利を確信しただろう。


勝負はほぼ決した王手のかかった盤面。

…そのはずだった。


アルトの剣が男に直撃しようとしたその瞬間…男の姿が消えた。


「(なっ!?…どこへ…)」


「アルトっ!後ろっ!」


グレアの声に慌ててアルトは振り向こうとし…

そのまま視界が暗転した。



「はあ…はあ…危ねえ…」


アルトを気絶させ…そのまま流れるようにグレアも気絶させた男は息をつく。


「だあ…ちくしょう…思わず闘気を使っちまった。

ガキども相手になにをマジになってんだ?…俺は。」


そう男は自省する。


男はあの瞬間まで…闘気を使用していなかった。

かと言って、別にアルトたちを舐めていた訳ではない。


子供相手の試験で全力を出すのは憚られたものの、

男は自らに課したその縛りの中で本気で戦っていた。


しかし、追い詰められ…思わず自らの縛りを破ってしまったのだ。


「いや…でも、ガキどもも強かったし…

目潰しとか卑怯な手も使ってきたし…

まあ…うん。別にいっか!」


男は自分を半ば無理矢理に納得させる。


男の名はセグムント・パラダイン。


冒険者ギルド学術都市支部のギルドマスター。

兼…海神流の元『剣王』。

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