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第四章 少年期・学園入学編:※野次馬はやめましょう

<Side:アルト>


学園からの帰り道。


アルトたちは学園の見学を終え、後は宿に戻るだけだったのだが…


「誰か…めた…が…じゃ…か…?」


「無…よ…あい…魔…の生徒よ…

私たち…たち…でき…わ…」


「風…に…連…は?」


「呼…ってくれ…いるけど…

そ…す…は来れ…わよ…」


往来に人だかりが出来ており、

集まっていた人々は何か口々に話していた。


「…なんだろ?」


騒ぎに気づいたアルトは足を止め、

人だかりの向こうの騒ぎの中心へと視線を向ける。


「(大人で隠れてよく見えない…)」


アルトは背伸びをし、どうにかして見ようとしているのだが、

自身の背の低さも相まって、よく見えない。


「…なにやってんのよ?」


アルトが立ち止まっていることに気づいたグレアが振り返る。


「いや…何かあったのかなぁ…って気になって…

グレアはこの騒ぎ…なんだと思う?」


「さあ?

…でもまあどうでもいいわよ。」


グレアはちらりと騒ぎの方に目をやりつつも、

心底、どうでもよさそうにそう口にする。


「興味なさすぎじゃない!?」


「?…そりゃそうでしょ?

私たちには関係ないじゃない。」


アルトの驚きの声に至極当然といった表情でグレアはそう返す。


「たしかにそうなんだけどさ…

それでもなんか気にならない?」


「別に…」


「(ええ…?

気にならないの…?)」


アルト的には救急車や消防車、パトカーなんかが近くに止まったりすると、

気になって見に行ってしまうのと同じ感覚で、

近くで騒ぎがあると誰でも気になるだろう…そう思っていたのだが、

グレアは違ったらしく、興味のないことにはとことんドライだった。


「だいたい、野次馬なんて悪趣味なのよ。

ほら、そろそろ帰…」


しびれを切らしたグレアがアルトの袖を引き、

踵を返そうとした…その時。


ドゴン!


「きゃあああ!」


「うわあああ!」


激しい物音と共に誰かの悲鳴が響いた。


「なんだ!?」


物音と悲鳴の発生源の方へ

アルトとグレアは視線を向ける。


二人が目にしたのは、散り散りに逃げ惑う人々。

そして、その向こうには学園の制服に身を包んだ幾人かの生徒たちがいた。


「(あのエンブレムは…魔術科だったっけ?)」


学園の制服には胸元にエンブレムがついており、

それで何科に所属しているかが判別出来る。


状況から見るに、

騒ぎの中心は十中八九、彼らだろう。


「(なんだ…?

喧嘩か…?)」


そう思った次の瞬間、生徒たちが魔術を放った。

一人の人物に向かって。


「(は!?)」


喧嘩に魔術を持ち出すなんて個人的にはありえなさ過ぎて、

アルトは呆気に取られる。


その側から飛び出す一つの影。


「喧嘩ね…なら合法的にぶちのめせるわ!」


先ほどまではどうでもよさそうにしていたグレアの興味が

生徒たちに向いていた。


「ちょっ!?

グレア!?」


飛び出したグレアに驚きつつも、

慌ててアルトも後を追いかけた。



「ざまあみろ!

これが分をわきまえぬ愚か者の末路だ!」


グレアがその場に辿り着いた時、

魔術を放った生徒たちは哄笑を浮かべていた。


「ふん…悪趣味ね。」


グレアは魔術を食らい、

倒れこんでいる人物との間に割って入った。


「な!?

誰だ貴様は!?」


「にしても…今のは魔術?

だとしたら…しょぼいわね。」


いきなり現れたグレアに驚き、

生徒たちは誰何するも、

グレアはその問いには答えず、そう零す。


「な!?

我らを愚弄するか!?

邪魔をするなら…貴様もろとも…

『我は望む…」


グレアの言葉に過敏に反応した生徒たちは魔術を唱え始めた。



「慌てて追いかけてきたけど、

必要なかったか…」


グレアは単身で生徒たちを瞬く間にのした。


途中でアルトも追いついていたのだが、

加勢するまでもなく決着はついていた。


「(さて、俺はこっちを…)」


アルトは魔術を食らい、

倒れこんでいた人物に近づく。


必要なら治癒魔術を。

そう考えていたのだが…違和感があった。


「君…意識あるだろ?」


アルトの言葉に反応したのか倒れこんでいたその人物はゆっくりと起き上がった。


「…よくわかったね。

なんでわかったんだい?」


「外套が汚れてはいるけど…傷がなかったからね。」


その人物の外套は魔術の影響かところどころ汚れてはいたものの、

身体の方には傷らしい傷は見受けられず、

至近距離で魔術をもろに食らったにしてはありえないほどの軽傷だった。


「外套…?

うわああ!?…せっかく、新調したばっかだったのに!?」


その人物は外套を脱ぎ、

外套の状態を確認すると、悲鳴をあげる。


外套を脱いだ下に出てきたのは

先ほどグレアにのされた生徒たちと同じ制服とエンブレム。


厳密には彼らとこの生徒ではエンブレムの色が違うのだが、

そこにはアルトは気づかない。


「(魔術科…てことは魔術で防いだのか。

傷がなさ過ぎて妙だと思ったけど、

それなら納得だ…)」


アルトは勝手に納得する。

そして、あることに気づいた。


「君、女の子だったんだ?

気づかな…ぐべっ!?」


そこまで言った時点でアルトは殴られた。


「ぼ、僕は男だ!」


その人物…もとい、その少年は顔を真っ赤にし、

そう言い放つと、足早に去って行った。


「ええ…?」


いきなり殴られ、呆気にとられるアルト。


「なにやってんのよ…

あれぐらい避けれたでしょ?」


それを見て呆れた様子のグレア。


少年の拳はなんの変哲もないただの拳で

たいして早くもなかった。

アルトなら受け止めることも避けることもできたはずだ。と、

暗に言っていた。


「…」


アルトは恥ずかしそうに口ごもる。


避けられなかったのはただ単なる油断…

というより、平和な日本で過ごしてきたことが影響しての平和ボケが原因なのだろう。


「さすがにいきなり殴られるとは思わな…

いや、どっかの誰かにも殴られたっけ。」


「…なんのことかしら?

覚えてないわね。」


グレアはそっぽを向き、

下手くそな口笛でごまかす。


「…はあ、まあいいや。

それより…これどうする?」


アルトはため息をつきつつ、

グレアにのされた生徒たちを指さした。


「別に放っておいたらいいんじゃない?

死んじゃいないんだし。」


「…まあ、そっか。」


たしかに放っておけば、そのうち目が覚めるだろうし、

面倒ごとに巻き込まれる前に二人は宿に帰えることにした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


<Side:???>


この世界の国の多くでは国家お抱えの騎士団が

いわゆる官憲…警察的な役割を担い、

治安維持活動を行っている。


だが、学術都市はどこの国家にも属さない独立した自治都市であり、

騎士団は存在しない。


ならば、その役割を担っているのは誰か。


それは…


「すみません!遅くなりました!

風紀委員会です!」


学園所属の一部の生徒。

彼らによって構成される風紀委員会である。


この都市で一番多いのは学園生によるトラブルだ。

(無論、それ以外の者によるものもあるが…)


だが、学術や芸術はともかく、

魔術や武術を扱う学園の生徒の制止・鎮圧は一般人には難しい。

そのため、学園でも選りすぐりの実力者たちが抑止力となることで、治安を維持している。


「ああ…!

副会長さんが来たのね!

でも…あまり気にしなくていいわ。

もう落ち着いたから…」


到着した青年に、

近くで店を営む店主はそう話しかける。


「はい?

それはいったい…?」


副会長と呼ばれた青年は首を傾げる。


彼は通報を受け、現場に急行している。

通報があった。それ即ち自分たちが必要な状況なのだと考えていたのだが、

辺りを見回しても、それらしき状況も見当たらない。


せいぜい若干の破壊跡があるだけだった。


「男の子を連れた女の子が騒ぎを起こした生徒たちをあっという間にのしちゃったんだよ。

でも、その子らも絡まれてた子もどっか行っちゃって、

騒いでた子らも気を取り戻したら、さっさとどっかに行っちゃったからね…」


店主はそう話す。


「ああ…なるほど。

そういうことですか…

事情聴取も兼ねて、本当はそのまま留まっていて欲しかったんですが、

仕方ないですね…

修繕の者は手配しておきますので、

僕はこれで失礼しますね。」


「いつもありがとうねえ。ご苦労様。」


青年はそう言い、現場を後にする。


「(男の子と女の子の二人組…まさか…ね。)」


青年の頭にはとある少年と少女の姿が浮かんでいたが、

さすがにそんなわけはないか。と頭を振った。

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