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第四章 少年期・学園入学編:サッカーしようぜ!ボール?そこにあんじゃん!

すみません。

なんのバグなのかエピソードの保存が出来なくて少し更新遅れました…

<Side:アルト>


キャラバンのメンバーたちは、

団長であるザスティンの指示のもと、

それぞれの馬車へと戻り、

濡れた服を着替えたり、身を清めたりすることになった。


アルトとグレアも雨でビショビショだったので、

自分たちの乗っていた馬車へ戻り、着替えることにした。


言うまでもないが、もちろん別々に交代で…だ。

グレアの着替えなんか覗いた日には、

ボコボコにされるどころか半殺しにされるだろう。


もしかしたら、意外と乙女な反応が返ってくるかもしれないが、

さすがのアルトも命が惜しい。

そんなことに命は賭けられないのだ。


そして、そうこうしているうちに予定の時刻になった。



「で…よりによって…なんでこの馬車に集まるのよ…」


グレアはぼやく。


情報を整理するため、

ベナレスやサフィーナなどキャラバンの代表の何名かが

アルトたちの乗る馬車へと集まってきていた。


「あはは…この馬車が一番広いからね。」


ザスティンが苦笑を浮かべる。


アルトたちは知らなかったが、

積み荷や乗っている人数の関係上、

他の馬車にはそこまでスペースの余裕はない。


それゆえに、一番集まるのに適していたのが

アルトたちの乗っていたこの一号馬車だった。


とは言っても…子供二人と大の大人が何人も集まれば、

かなり狭くはなっているのだが。


「僕ら、ここにいていいんですかね?

お邪魔なら、外に出ておきますけど…」


アルトはザスティンにそんな提案をする。


狭いし、話し合いの邪魔になるのなら、

外に出ていた方が良いのでは?

と、そう考えたのだが…


「いや、二人ともこの一件の功労者だからね。

話の中にも出てくるし、

嫌じゃなければ、いてくれると助かるよ。」


ザスティンはそう返した。


「そうですか…

グレア、僕は何があったのか聞きたいんだけど、

構わないかい?」


隣に座っていたグレアにアルトは確認する。


「…アルトが残るっていうなら、

私も残るわ。」


若干、不機嫌な様子で、

ベナレスを睨みつつも、

グレアは残ることを選択した。


「(あー…絶対、さっきのこと根に持ってるよ…

でも、さっきのは俺たちも悪いからなぁ…)」


これ以上のトラブルになっても困るので、

アルトはしばらくグレアを宥め続けた。



「では、情報をすり合わせて行こうか…

サリー。お願い出来るかい?」


ザスティンは部下の商会員の一人に声をかけた。


「かしこまりました。

時系列順にお話しさせていただきます。

まず、馬車が休憩のため、

停車してしばらくした頃、

討伐レート:C -。

(グレイ)(ウルフ)の群れからの襲撃を受け、

護衛の冒険者が応戦しました。」


(グレイ)(ウルフ)…しかも群れですって!?」


その情報を耳にした

サフィーナの顔が驚愕の色に染まる。


「妙に驚くね…

いや、でもああ…そうか。

その時、サフィーナ君はいなかったのか。」


あまりの驚きようにザスティンは思わず零したが、

途中で一人、納得する。


襲撃があったのは、

丁度、サフィーナがザスティンの依頼で

一号馬車を訪れていた時だった。


サフィーナとアルトとグレアの三人だけは馬車の中にいたことで、

そのことを知らなかったのだ。


残る二人はというと…


「グレア…(グレイ)(ウルフ)って知ってる?」


「ふん。まったく…アルトはそんなことも知らないのね…

…ごにょごにょ(まあ、私も知らないけど。)」


「なぁんだ。

グレアも知らないんじゃあないか。」


「!…うっさいわね。

アンタも知らないくせに!」


「あ、やっぱり知らなかったんだ。

カマかけてみただけだったんだけど。」


「!…くぅぅ…

だいたい、北部地方ならともかく、

南部地方の魔物なんか知るわけないでしょ!」


「でも…自分も知らなかったにしては、

随分な言い草だったけどねえ…?」


軽い口喧嘩をしていた。


「こら。二人とも。

話が進まないから、喧嘩はやめなさい。」


「「でも、」」「グレアが…」「アルトが…」


「やめなさい。」


ザスティンは笑顔を浮かべている。

だが目の奥が笑っていなかった。


「「は、はーい。」」


二人はザスティンの圧に屈した。


二人の手綱を握れる。

もしかすると、それがザスティンが同乗していた本当の理由だったのかもしれない。



討伐レートとは、

冒険者たちの所属する冒険者ギルドが

設定した魔物の危険度・脅威度の指標であり、

上からA、B、C、D、E、F。

さらにそれぞれに+・-がある。


(グレイ)(ウルフ)は単体では討伐レート:D、

群れでは討伐レート:C-の魔物である。


討伐レート:C-。


それだけ聞くと、

大したことのないようにも聞こえるが、

討伐レート:Fがかろうじて一般人でも対処できるレベルの限界だ。


討伐レート:E以上は、

武術や魔術などの戦闘鍛錬を積んだ者でない限り、

対処は困難となり、

討伐レート:Eの時点で一般人にとっては十分過ぎるほどの脅威である。


それを踏まえたうえで、討伐レート:C。

これを簡潔に表現すれば、

村一つを滅ぼせる程度の脅威であるということ。


比較的平和なこの辺りの地域に生息する魔物の中では、

かなり高いレートに位置しており、

それほどまでにこの(グレイ)(ウルフ)という魔物は強力な魔物だった。


「そ、それで…(グレイ)(ウルフ)の群れとの戦いはどうなったのですか!?」


サフィーナが慌てた様子で訪ねる。


「あ、ああ…負傷者も少なくはなかったが、

なんとか撃退・討伐には成功したぞ。」


サフィーナの慌てように

ベナレスはたじろぎつつ、答える。


「あ…いや…

よく考えれば…そうですね。

すみません。取り乱しました。」


「いや、気にするな。

慌てるのも無理はない。

撃退・討伐には成功したが、かなりの苦戦を強いられたからな。」


ベナレスが苦い顔をしながら、頷く。


「ふん…あのおっさんは無傷じゃない。」


「ちょ!?…グレア…止めなよ…」


ベナレスの言葉を聞いたグレアがぼそりと呟き、

アルトは慌てて制止する。


苦戦したような口ぶりだったが、

ベナレス自身は全くの無傷で

グレアにはその苦戦具合が全く感じられなかったのだ。


「…」


グレアの言葉に

ベナレスは俯き、無言で肩を震わせる。



「…お…お…」


ブチギレ不可避。

爆発までは秒読みだった。


「おっさん!?

おっさんだと!?

まだ私は二十八だ!

断じておっさんじゃない!」


おっさんじゃない!…

おっさんじゃない!…


ベナレスの叫びが木霊した。


「(ええ…?

怒るとこそこなの…?)」


アルトは困惑を隠せなかったが、

そのワードはベナレスにとって、

禁句だったらしい。


「落ち着け。ベナレス。

論点はそこじゃないだろう。

第一、子供たちからすれば俺たちはもう十分おっさんだ。

もういい加減、諦めておっさん呼びを受け入れろよ。」


ザスティンが冷静に諭そうとするが、

それは今のベナレスにとって更なる口撃だった。


「あ…あ…ああんまりだぁぁ…!!」


そう叫んだベナレスは…半泣きで馬車を飛び出して行った。


「「…え?」」


話し合いはベナレスを追いかけて行った冒険者が

彼を連れて戻ってくるまで、

しばらく中止となった。



「驚きました…

ああいうのって男の人でも気にするんですね…

女性は年齢の話に厳しいってのはよく聞くんですけど…」


「アイツの場合、昔から老けて見られることが多くてね。

未だに気にするんだよ。

たしか父方の祖父が炭鉱人(ドワーフ)だったかな?

その血の影響なんだろうけど、

もうそろそろ俺らもおっさんに足を踏みいれつつあるんだから、

いい加減観念しろよって感じなんだけどね。」


そう言って、ザスティンは苦笑を浮かべる。


「(炭鉱人(ドワーフ)…!

いかにもファンタジーじゃないか!

初めて会ったぞ…!)」


血が薄いからかベナレスの見た目はそこまで人族と変わらないが、

炭鉱人(ドワーフ)との初めての出会いにアルトは内心でウキウキになっていた。


「(いつかは森人(エルフ)とかにも会ってみたいよな…!

なんたってエロフ!あのエロフだぞ!

やっぱ美男美女揃いなんだろうか…?

いやでも、森人(エルフ)=美男美女ってのは日本特有なんだっけ…?)」


若干、アルトの思考は関係のない方にずれ始めていたが、

実際のところ、森人(エルフ)の血を引いているフィリアやフルールには既に出会っている。

しかし、アルトはそんなことは露知らず。


「(にしても…)」


途中から思考が脱線気味であったが、

アルトはふと、あることを思う。


「なんていうか…その…ベナレスさんには随分、辛口なんですね…」


ザスティンは基本的に物腰柔らかで、

こんな辛口に言うのをアルトは初めて見た。


「あはは…アイツとはかなり旧い付き合いだからね…

もうかれこれ三十年近い付き合いともなれば、

遠慮もなくなるさ。」


ザスティンとベナレスはいわゆる幼馴染というやつらしい。


「まあ、アイツの性格上、もうそろそろ…

ってほら。帰って来た。」


ザスティンがそう言いかけた時…

丁度、ベナレスが彼を追いかけて行った冒険者と共に戻ってきた。


どうやら、ザスティンはベナレスの性格を熟知しているようだ。


「…失礼した。

思わず取り乱してしまった。」


戻ってきたベナレスは落ち着きを取り戻していた。


彼は頭に血が上るのも早いが、

落ち着くのも早いようだ。


「よし、ベナレスも戻ってきたし…

話の続きをしようか。」


ザスティンの号令で話し合いは再開された。



「要するに…私たちが(グレイ)(ウルフ)たちに応戦している間に、

盗賊が狙ったように襲撃をかけてきた…そういうことなんだな?」


話を一通り聞いたベナレスが

要約し、サリーに確認する。


「ええ、そうです。団長殿。

付け加えるなら、その盗賊の撃退にもっとも貢献してくれたのが、

そこにいる二人の子供…アルト君とグレアちゃんだということくらいですかね。

彼らがいなければ、私たちは全滅していた可能性もありましたし…」


それを聞いたベナレスは…


「…ただの生意気な世間知らずな子供かと思っていたが…

二人とも…!

先ほどは…すまなんだッ!」


そう言って床に額を擦り付けた。


「「「え!?」」」


その場にいた他の者たちは驚きに包まれる。


「べ、ベナレスさん!

やめてください!」


「そ、そうですよ!

第一、あれは僕らも悪かったんですから!

土下座なんて…」


一瞬、呆気にとられたものの。

周りの冒険者やアルトは止めさせようとする。


「離せッ!

私は自身の過ちを認め、

頭も下げられぬような恥知らずになるつもりはない!」


ベナレスは激情的ではあったものの…生真面目だった。


そんな彼に一人の少女が近づく。


「アンタ…悪いと思ってるのよね…?」


その少女…グレアは腕を組み、

ベナレスを見下ろしながら言った。


「グレア…そんな言い方は…」


「アルトは黙ってて。

で…どうなのよ?」


あんまりな物言いにアルトは咎めようとするが、

グレアはピシャリと言い放つ。


「ああ。勿論だ。

言ったこと自体は間違いだったとは思わないが、

あんな風に怒鳴りつけるべきでも…

ましてや子供に手を上げるなんてのは言語道断だった。」


「ベナレスさん…」


行動こそ褒められたものではなかったが、

アルトはその気高い精神性に感銘を受けていた。


「じゃあさ…

アンタ、腰をちょっと浮かして…」


「な、なんだ…?

こ、こうか…?」


ベナレスはグレアに言われるままに四つん這いのような体勢になる。


「そうそう。それくらいね…」


グレアはそう言いつつ、ベナレスの後ろへ周った。


「?…グレア…

一体、なにを…?」


アルトは…いや、グレア以外の全員、

グレアの行動の意図が分からず、困惑する。


「私も一発、拳骨を貰ったし…

一発は一発よね…?」


「?…まさか!?」


グレアがそこまで言った時点で、

アルトはグレアの行動の意図に感づいたが、

もう手遅れだった。


「とりゃ!」


グレアは足を振り上げた。


振り上げた足はベナレスの股と股の間の空間へと吸い込まれていく。


そこには所謂、男の急所と呼ばれるものが存在する。

そう…ゴールデンなボールだ。

集めると願いが叶う竜の玉ではないが、

大事な大事な玉だ。


「ほぎゃぁッ!?」


ベナレスは聞いたこともないような悲鳴を上げ…

泡を吹いて崩れ落ちた。


「べ、ベナレスさぁぁん!」


アルトは若干、内股になりながら、

崩れ落ちた彼の名を叫ぶ。


よく見ると、周りの男性陣も

男にしかわからないその痛みを想像したのか、

青ざめた顔で若干、内股気味になっていた。


「ふん。天誅よ。」


グレアはお決まりの腕を組んだポーズで鼻を鳴らしていた。


※討伐レートのおおよその目安です。

参考になれば。

討伐レートA:国家レベルの脅威

討伐レートB:都市レベルの脅威

討伐レートC:村レベルの脅威

討伐レートD;集団レベルの脅威

討伐レートE:個人(大人)レベルの脅威

討伐レートF:個人(子供・老人)レベルの脅威


ある意味、グレアが一番恐ろしい…

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