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第三章 少年期・家庭教師編:揺れる心

今回の話はちょっと短いです…すみません。

<Side:ゲオルギス>


姪であるグレアは置かれた環境のせいか荒れていた。


まだ小さい子供が両親と離れ、親戚の家で暮らしている。

そのストレスは想像している以上に大きいはずで…荒れるのは無理もない。


そうは思っていたものの、

ゲオルギス自身も新興の貴族として…領主として…忙しい日々を送っていたのもあり、

グレアと関わる時間はほとんど取れなかった。

グレアにとってはこの屋敷に…側にいる唯一の肉親だったというのに。


「(あの子は…可哀想な子だ。)」


それもこれも全部クソみたいな後継者争いのせいだ。

ゲオルギスの父である…前侯爵がきちんと後継者を決めて、

とっとと継がせておけばこんなことにはならなかった。


グレアは…大人の事情に巻き込まれただけの可哀想な被害者なのだ。

それ故にゲオルギスは…グレアに対し、あまり強くは言えずにいた。


グレアにこのまま荒んだ人生を送らせたくはなかったが、

どうにもならない状況が続いていた。


そんな時、ある少年…アルトと出会った。


アルトは才能に満ち溢れた少年だった。


そんな子供が仕事をしたいと言っていると、

旧い友人の頼みであったため、

仕事をさせるのを引き受けはしたものの、

いくらそれほどの才を秘めようとまだ子供だ。

駄目で元々。大した期待はしていなかった。


天才と問題児。


この二人を引き合わせたのは、

ただ、なにか面白い化学反応が起きるのでは…

そんな考えから起こっただけのものだった。


だが、予想に反してその成果は…期待以上のものだった。



「叔父様!私、アルトになら教わりたい!」


誘拐事件の翌日。


ゲオルギスが様子を気にして、

本人の部屋を訪ねた時にグレアが言った言葉だ。


「でね…アルトったらね、ほんとに無茶苦茶なんだよ?

飛空艇から飛び降りたり、

猛スピードで街道を爆走したり…」


誘拐されたんだ。

少しくらい泣き言を言ってもおかしくないし、

泣き言どころかトラウマになって塞ぎ込んでいてもおかしくはない。


実際、話し合っていた時のグレアの表情は暗く、

心配して声をかけたらしきアルトに感情をぶつけていた。

あの時のグレアはかなり限界が来ていたのだろう。


そのまま放置すれば、

その後のグレアがどのような人生を送ったかは想像に難くない。


「(俺は何もしてやれなかったけどな…)」


直前まで、それほど不安定になっていた。

なのに、アルトへの文句は口にしつつも、グレアは楽しそうに笑っていた。

あんなに楽しそうに笑ったグレアをゲオルギスは初めて見た。


誘拐事件。

そんな事件はあったものの、

アルトはグレアの荒み切った心を…

冷え切ってしまったその心を融かした。


グレアは…孤独だったのだ。

孤独は人の心を腐らせる。

その孤独がグレアの心を蝕んでいたのだ。


そして、その心を癒したのは遠くにいる家族でも…

側にいる唯一の肉親のゲオルギスでもなく、

数日前まで面識もなかったはずのアルトだったのだ。


だが、アルトはグレアにひどい目に遭わされていた。

はっきり言って、誘拐犯たちからグレアを守る理由もグレアの心を救う理由も

アルトにはなかったはずだ。


にもかかわらず…アルトはそれを為した。


「(自身を害する相手を助けるなんてこと…俺には出来ない。

いや、俺でなくても…そんなことを出来るやつはほとんどいないだろう。)」


あの子は優しい。

いや…優しすぎる。

甘いと言っていいほどに。


グレアのこともそうだが、誘拐事件の時もそうだ。


アルトが相手をしていたと思しき誘拐犯の三人は

骨折など、多少の怪我をしていたものの、

五体満足で…三人とも生きていた。


その三人は騎士団が尋問し、調査中なのだが…

その話はまあいい。


空に打ち上げられた魔術…

あの爆発は凄まじいものだった。

不思議な人形を作り出す魔術と言い、彼の底は未だに知れない。


だが、彼が本気を出していたのなら、怪我どころでは済まなかったはずだ。

子供相手に殺しを強いるべきではないのはわかっているが、

アルトは…自分たちの命を狙う誘拐犯相手ですら、手加減をしていたのだ。


「(凄い子だ…

でもまあ…それでピンチになってちゃ世話ねえけどな…)」


若干呆れつつも…

ゲオルギスはアルトのことを高く買っていた。



暫く経ったある日、そのアルトがわざわざグレアのことで直訴しにきた。

「グレアに剣術を教えてあげてほしい。」と。


ぶっちゃけアルトには関係ないはずのことなのだが…


ゲオルギスとグレア。

どちらからも話を聞き、

グレアが荒れていた原因とゲオルギスが剣術を教えていなかった理由。

その二つを理解し、ちょっとした不幸な行き違いをアルトはわざわざ正しにきた。


「(言われてみれば確かにグレアが手を出していたのは

家庭教師として手配した者だけだった…)」


街で他の子供たちとトラブルになったことは何度かあったが、

それを除けば、他の使用人などに対しては何かをしたという話は聞いたことがなかった。


これまでは渋っていたが、

実際のところ、自衛手段を持たせるという意味でも、

グレアに剣術を教えるのは悪くはないのかもしれない。


今回の誘拐事件はグレアの側に

アルトという天才魔術士がいたことで何とかなりはしたものの、

もし攫われたのがグレア一人だったのなら、

今この屋敷にグレアの姿はなかっただろう。


今後も実家の後継争いで狙われるかもしれない(無論、そんなことを許すつもりはないが…)

グレアに自衛の手段を持たせるという意味でも…検討の余地はあるだろう。


「(ちょっと考えてみるかねえ…)」


ゲオルギスの心は少し…いや、かなり動かされていた。

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