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have a story No.0001 幕開け
光の和泉学園は、設立から20年以上歳月を遂げてきた学園である。
理事長の子供が星を見て、言葉を初めて発したことから、"南十字星学園の丘"に変更したのである。
古びた建物は時の流れを刻むようにあちらこちらで、設備の小さなSOSは表れ始めていた。
特に目立っていたのは蛇口からの水漏れで、ぽたぽた垂れる箇所、チョロチョロと無駄に流水する箇所。
それを目にすると、三カ月前、豪雨に見舞われた地域の方の今尚避難生活を送る人々の姿を思い起こさせ、主人公薮下真美の心を痛めているのである。
真美は28歳。穏やかな笑顔と誰にでも分け隔てなく接する優しさの持ち主。
少し天然なところもあり、時折、おっちょこちょいするところもあり、周囲を和ませることもある。
しかし、そのやさしさの裏には、芯の強さがあった。些細な変化にも気づき、的確な対応をする洞察力、どんな状況でも前向きに切り替え解決策を探し出す粘り強さを持ち備えていた。
この南十字星学園の丘で働くきっかけになったのは、ある冬の夜に遡る。