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翼あるもの ~透明な翼~  作者: こはる ここはる
第一章 空に焦がれるもの
1/6

第1話「ウォーリアー」


世界はAIで(あふ)れている。


会社でもあらゆる所にAIが搭載され、学校、そして家庭でも……


人々の生活には、もう欠かせないものになっている。


ここに家庭用AI、会社用AI、その他AIロボット、様々なAIを生み出している世界的な会社がある。


名前はテトラ社。

今や世界シェア70%を超える、巨大会社である。


AIには当然、エネルギーが必要となる。


そこで、テトラ社はエネルギーの採掘も行っている。


現在世界は一つのエネルギーで動いており、そのエネルギーの採掘技術は難しく、それをAIは可能にしてくれる。


そしてテトラ社のもう一つの事業は、あらゆる場所に出現し、危害を及ぼす、モンスターの駆除、モンスターの抹消、街の警備の為のコマンド部隊養成。


コマンドは一般の者から養成するが、了解を得て、手や足をアンドロイド化して強化し、コマンドにする。


アンドロイド化された手足は強く、日常生活にも役立ち、コマンドになれば通常の給与の3倍は支給される。


応募者は後を絶たなかった。


しかし、アンドロイド化は確かに強くなるし、メンテナンスもきくので、衰えはないが、これ以上の進化はない。



コマンドの上層部になるのは“ウォーリアー”。


これは身体能力、潜在的な戦闘能力がAIでは(はか)りがたく、進化がどこまでも望めるので、どこもアンドロイド化しない戦士で、全体の10%にも満たない特別な存在だ。


★ーーー★ーーー★



地方出身のリュウ・ランロックは、モンスターを次々に倒し、人々から称賛されるウォーリアーに憧れ、テトラ社へやって来た。


「やっぱヒーローだったらウォーリアーだろ」


リュウはコマンドには全く興味を示さず、何としてでもウォーリアーになろうと思ってやって来た。


都会は人間だらけで、車だらけで、ビルが林立(りんりつ)してるし、ちょっと勝手が違いすぎるけど、そんなことは構わない。


テトラ社も最新のビルで、バカでかくて、AI管理が多くて、どこの部所へ移動するにもチェックが厳しいが、そんなことは構わない。


とにかくウォーリアーになるんだ!

意気込みだけでやってきた。


コマンド志望者だけでも数が多く、全員がなれるわけではない。

やはり、身体能力、適応性が見られる。

コマンドに選ばれた者はもう自慢げだ。


面接の時、リュウは堂々と言った。


「オレはコマンドには絶対にならない。オレが目指すのはウォーリアーだけだ」


面接官は「ほう」とだけ言った。


それからたくさんの試験がされた。


リュウは身長187㎝、黒髪、グリーンの瞳、理想的な筋肉がついた美しい体つきで、病歴もなく、健康で、身体的には何の問題もない。


基本的な検査が終わると、まずは身体能力。


走る速度、フォーム、身体の柔軟さ、敏捷性(びんしょうせい)、筋力、etc.etc.……

あらゆる角度から分析される。


そして戦闘能力。


襲ってくる敵に対し、どう敏捷に対処し、敵の急所をついて仕留めるか。


初級は急所を教えてくれるが、中級からは自分で見極めなければならない。


シミュレーターを使用するが、怪我人も続出だ。

シミュレーターであろうと敵は本気で襲ってくるし、敵に合わせ、レーザーなども放たれる。


殺されることはないが、本気でかからないと簡単に病院行きだろう。


リュウは難なく上級までこなし、ウォーリアーにはまだまだだが、コマンド決定は免れた。


これから、あらゆる訓練と実戦をこなし、コマンドに落とされるか、ウォーリアーに(のぼ)り詰めるか試される。


リュウはテトラ社で一応、ウォーリアーの準候補生として雇われた。


毎日、朝から晩まで、倒れるほど訓練をさせられた。


身体能力を上げ、精神を鍛え上げる。


準候補生達は数人ずつ各部屋に分かれさせ、基本的に団体生活をさせられる。


リュウは、ウォーリアーはひとりひとりが一人前の戦士だが、戦場ともなれば団体戦だ、仲間の絆が大切だと思っていた。


リュウはフレンドリーな明るい性格で、皆から好かれた。普段から「オレ達全員で絶対、ウォーリアーになろうな」と声をかけ、落ち込んだりしている仲間がいると、励ました。


中々、自分から打ち解けにくい者がいると、声をかけて皆の仲間にした。


皆もリュウには何でも話しやすく、時には悩みを相談したりもした。

候補生の一人、ケビンは


「もう、オレさ……シミュレーション怖いよ。怪我ばっかりするしさ。もう諦めようかな」


と打ち明けた。


リュウは


「ウォーリアーには怪我はつきもんだろ。オレも苦手なモンスターはいるぜ。ケビンは必ず最後は時間内に仕留めてるし、向いてるよ。がんばろうぜ」


と励ました。


ケビンは「そうか。お前でも苦手なのいるんだな。オレ、もう少しがんばるわ」と思い直した。


アランという割に何でもこなす候補生は、ウォーリアーに対して熱はなく、単なる選別されただけ……と思っていた。


しかし、リュウのウォーリアーへの熱い情熱を見ていると、自分もウォーリアーの候補生であることが誇らしく思えてきた。


★ーーー★ーーー★



初めての実戦の日。

『街郊外で野犬型モンスターが暴れ回っている。これを抹消せよ』という指令だった。


リュウは「さあ、おいでなすった」とやる気満々だ。


住民は叫びを上げ、建物の中へ隠れた。


剣をスラリと抜き、リュウは、一度、切り込んだ。


野犬モンスターはとてつもなく敏捷(びんしょう)だ。


候補生達は剣があたらず、体力だけ消耗していく。

リュウは野犬モンスターの動きを、風の動き、息づかいで読み取り、ダメージを与え、動きを防ぎ、急所を貫いた。


仕留め方が分かると、リュウは皆に声をかけた。


「諦めるな! 動き回って騒ぐ風で、動きを呼んで、足でも何でもダメージを与えて、動きを鈍らせろ。そこで仕留めるぞ!」


皆を鼓舞し、励ました。

そうして自分は誰よりも戦い、モンスターを仕留めていった。

モンスターを絶滅させると、候補生はテトラ社へ帰っていった。


それからは訓練はもちろんのこと、実戦も同じくらいプログラムに入ってきた。


★ーーー★ーーー★



仲間の中にアッシュ・ダグラスという、一番年少の17歳の青年がいる。


髪は明るい金色、青い瞳の優しげな青年である。


リュウは18歳なので、1歳違いだ。


年が近いこともあって、リュウはアッシュとすぐに仲良くなった。


アッシュはギリギリで合格したタイプで、何のテストでも成績は最下位。


このままではウォーリアーになれそうもなかった。


リュウは実戦の時はアッシュを(かば)い、アッシュの成績を上げさせるよう、がんばった。


シミュレーションでは、アッシュの戦いの時の剣の構えの弱さや、クセを直し、何とか合格させてきた。


二人は本当に仲良しで、部屋でも夜遅くまで夢を語り合った。


リュウはウォーリアーになり、皆を助けるヒーローになりたった。


アッシュは、元はひ弱な少年だったが、努力してここまできたので、何とかウォーリアーになり、故郷の皆にも喜んでもらいたい……と言った。



しかし、ある時、リュウとアッシュは2チームに分かれての実戦となり、アッシュのチームはアッシュの失敗により、全滅の危機にまで(おちい)ってしまった。


ウォーリアーが救援に入り、何とか落ち着かせたが、アッシュはその責任を負い、コマンドに落ちることになった。


アッシュはリュウに「オレ……コマンドになるんだ……」と報告し、涙を流した。


リュウは驚いて

「何だって? オレが上にかけあってやるよ! 待ってろ!」と言った。


アッシュは

「待って……リュウ……。これだって、ずいぶん上はまけてくれてるんだ。オレ……オレのせいで、みんなを殺すところだったんだ……」


「お前……それでいいのかよ。そんなわけないだろ。ウォーリアーになるんだろ。絶対になれ。諦めるなよ!」


リュウは必死だった。


アッシュは首を横に振って


「いいんだ……リュウ。オレ、コマンドになる」


と言った。


リュウは


「分かってんのか? アッシュ、お前、手足改造されちまうぞ! アンドロイドだぞ……。もし嫌なら、故郷に帰れよ。オレ……いつでも会いに行ってやるよ。友達だろ」


と言った。


アッシュは


「オレ……コマンドになる。もう決めたんだ。みんなを守れることは変わらないし……ここにいられるよ。リュウと一緒だ」


リュウはその言葉を聞いて、たまらなくなり泣いた。


「オレ達は友達だ。これからもな!」


アッシュは黙ってうなずいた。


★ーーー★ーーー★



アッシュはコマンドとなり、初の実戦の日が来た。


リュウはアッシュを励ましに来ていた。


そこへ、科学技術担当の博士、(せき)が姿を現した。


「ほう……新しいコマンドだな」


アッシュを見た。


アッシュは


「アッシュです! よろしくお願いします」


と挨拶した。


リュウは


「お前、今度こそ、指示通りがんばれよ」


と励ました。


アッシュは「うん」とうなずいたが、関はクックックッと笑い出した。


「指示通り? コマンドだぞ。指示通り動くだろう」


そう言って、親指と人差し指を頭の所でひねり

「いじられてっから」と言った。


アッシュもリュウも何だ? と思ったが、関はそのまますぐに引っ込んでしまった。


アッシュは出陣し、任務を終え、無事帰還した。


段々慣れてきて

「オレ、何とかなりそうだ」

と言うので、リュウは安心した。

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