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ノベルスキー同一プロット企画作品「戦が始まる」

作者: みれい

Misskey系 物書き&読書好きSNS「ノベルスキー」のユーザー企画である、「同一プロット企画」に投稿した作品です。やや内輪ウケを狙っているため分かりにくい部分があるかもしれませんがご容赦を……


ノベルスキー https://novelskey.tarbin.net/


【企画概要】

同じプロットを参加者それぞれで再構築して創作。


【提示するプロット(ストーリーライン)】

AとBが喧嘩している場面からはじまる。

→1週間程度口をきかない。

→第三者のCが仲直りさせる

→AとBが会話するシーンでしめくくる。


A、B、Cの関係性はなんでもよいです。

恋人関係でも、家族でも、同僚でも、主従でも。

異性、同性問いません。


Cは複数人として設定されていても可能です。

 「なー、自分なに食べてるん」

 学校帰りの道すがら、長袖を腕まくりしながら風馬が尋ねる。

 「これか? 大判焼き。知らないのか?」

 小麦粉の生地に餡を挟んで焼いたお菓子をかじりながら、伊織は答えた。

 「いやいや、そういうこと言うてるんちゃうくて……」

 風馬は呆れ顔で続けた。

 「それ、回転焼きやろ? なんや大判焼きって」

 回転焼き。焼き型を回転させてムラなく火が通るように焼くことから、そのように名付けられたとも言われるお菓子だ。

 「いや、大判焼きだろ? 回転焼きなんて聞いたことないぞ」

 大判焼き。江戸時代の高級通貨である大判に見立てた形からそのように呼ばれるようになったとも。大判を紙で包んだ状態に大変よく似ている。

 伊織はおいしそうに頬張っている。中から出てきた餡の熱さに思わず表情を崩した。

 「ああ旨い。お前も食うか?」

 と、食べかけを風馬に差し出したところ、思いっきり拒絶された。

 「そんなん要らんわ、大判焼きなんか食えるか。俺は地元で食ってた回転焼きしかいらん。大体お前、前にもキノコとかタケノコとか訳分からん話をして、タケノコに決まってるとか何とか」

 「ああ、それは間違いなくタケノコだ。キノコなんてありえない」

 メガネを直しながら伊織の口から冷たく発せられたタケノコへの主張。それを聞いてますます憤慨する風馬であった。

 「何言うてんねん、キノコに決まってるやろ。もーええわ、お前となんか口利かん」

 そう言い捨てると、風馬は伊織を置いてさっさと歩いて行ってしまった。受け取られなかった大判焼きを食べると、伊織は黙って風馬の背中を見つめていた。


 ちょうど週末や試験休みを挟んだこともあり、クラスが異なる二人が次に顔を合わせたのは一週間後のことだった。帰り道の商店街でばったり出会った伊織の手には、例のお菓子が収まっていた。気味悪いものを見たかのような顔をする風馬。

 「何だよその顔、テスト勉強で疲れた脳には甘いものが必要なんだよ」

 「またそんなもの……いや、お前とは口利かない言うたんやったな」

 そっぽを向いた風馬の視線の先に、小さな生き物が現れた。

 「んなー」

 黄色っぽい毛並みの猫がこちらの様子を見ていた。雰囲気から察するに、人に慣れた猫のようだ。伊織がしゃがんで猫と同じ目線になると、するすると近づいてきた。

 「どうしたお前、何処の子だ……あっ」

  伊織が言うが早いか、猫は伊織の手からお菓子をくわえて走って行ってしまった。あっと言う間に通りを走り去る猫を、鞄を投げ捨てた風馬がすぐさま追いかけて行った。

 「おーい、かばんー……」


 鞄があるからそのうち帰ってくるだろうとスマホを眺めながら伊織が待っていると、しばらくして手に紙袋を携えた風馬が戻ってきた。

 「どうしたんだ、それ? ていうか猫は?」

 一瞬きょとんと考えるような顔をした風馬だったが、すぐに破顔して捲し立てた。

 「いやー、めっちゃ追いかけてんけど、結局追いつかんかってん。んでな、追いかけた先に大判焼き?屋があってな、店のおっちゃんに猫に取られたって話をしたら、かわいそうだから一つやるって言われて。要らんわ言うてんけどまぁ食べてみいって言うから食うてみたら、めっちゃおいしいやん。てか回転焼きと同じやんって言うたら、地域によって呼び方がちゃうだけらしいねんな。それやったら喜んで食うわって、いっぱい買ってきてん」

 少し蒸気で湿った紙袋の中では、幾つもの大判焼きが湯気を上げていた。

 「出来立てやって。一緒に食おうや」

 「あ、ああ……」

 思わぬ展開に驚きつつも、伊織は一つ手に取った。さくさくとした表面と、もちもちとした内面の生地。中には甘い餡がぎっしり詰まっている。しげしげと眺めながら口にする。

 「うん、出来立ては美味しいな」

 伊織の感想を聞くと、我が事のように喜ぶ風馬であった。

 「せやろ、この粒餡がたまらんよな~」

 風馬のその言葉に、伊織の食べ進む手がはたと止まった。

 「ん、どないした? なんか入ってたか??」

 伊織は改めるかのように、口にしていたそれを見つめていた。


 「悪い……。俺、こし餡派なんだ」


終わり。


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