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ある日女の子になった私(俺)のこれから  作者: 詩野
2章 高校2年生編
20/22

18話 転校1日目3

真帆の言う通り教室に戻った俺たちは、先ほど座っていた弥生たちのいる席に座る。


「岬ちゃんと一番最初にLIME交換しちゃった〜」

「えー!岬ちゃん、私とも交換して~!」


そう言いながら弥生が目を輝かせながらこちらを見てくる。

もちろん断る理由もないので俺はLIMEのQRコードを弥生の前に差し出す。


「岬はひよこなんだ〜」

「写真がなくてさ。弥生が上手く撮ってくれるって真帆に聞いたんだけど」

「え!撮っていいの!?岬ちゃんは元が可愛いからかなりいい感じに撮れそうね。空が綺麗な日にお花の前で撮るとか、あとは…」

「可愛くというよりかはかっこよくがいいかな…」


俺の意見は聞いてなさそうだな…。

弥生は完全に自分の世界に入って、どんな風に可愛く撮るかを考えているようだ。

美紀や健二、大地ともLIME交換しときたいな。


「美紀と大地と健二もLIME交換しようよ」


俺がそう言うとそれぞれ俺に対してQRコードを見せてくれたため、俺は端から読み取ってみんなを友達に追加していった。

美紀はベース単体の写真、健二はバスケのゴールにシュートを決める瞬間の写真、大地は知らない男子と二人で腕を組んでいる

写真をプロフィールに設定していた。

こういうのってそれぞれの個性が出て面白いよな。


「ありがとうみんな」

「谷村はひよこ飼ってるのか?」

「いや、これは写真なくて適当に選んだだけ」

「ふーん、なーんだ」


大地は面白くなさそうな顔をしてスマホに目をやってしまった。本当に写真がないのだから仕方がない。

ふと自分のスマホのトーク画面が目に入る。

何人もの友達から届いている心配や帰りを期待する文章が俺の胸をえぐる。

いずれしっかりと向き合わなくちゃな。

キーンコーンカーンコーン

教室に設置されたスピーカーから、電子音が流れる。


「もうお昼終わっちゃたね」

「授業は嫌だー!」

「岬は理系選択?文系選択?」

「私は理系だね」

「あたしと真帆も理系選択だからよろしくね。残念ながら弥生と健二、大地は文系選択だから共通の授業以外は別だね」

「いいなー、俺も谷村と受けたい!」


大地が俺のほうを見てそんなことを言ってきた。え?俺?

しかも弥生がなんかすごい大地のこと睨んでるけど大丈夫か?


「私は別にそうでもない」

「ひどい!」


俺がふざけて突き放してやると、大地は手を瞳の前に持ってきて悲しそうな仕草をした。

それがおかしくてみんなで笑ってしまった。

別れを惜しみながらそれぞれの席に戻った俺たちは、弁当箱をしまい、筆記用具を広げる。

次の授業は物理だ。文系を選択している生徒は教室から出ていき、別の教室で世界史を受けるらしい。

無言で再び蓮の机に俺の机をくっつけると、要件を察してくれた蓮が教科書を半分見せてくれた。

蓮も理系選択なのか。隣の奴が同じ授業で良かった。


授業が進んで30分、もう眠くなってきた。

勉強は嫌いではないけど、どうにも人の話を長々と聞くのは苦手だ。

暇を持て余した俺は蓮の方を見やる。蓮の字綺麗だな…。

かなり丁寧にノートを取っている。俺はノートは読めればいい派なため、かなり字も汚く、まとまっていない。

こいつの横でノート取りたくないな…。

この内容であれば特にノートを取る必要もないと思い、先生が解説している問題、その次に出てくる例題などを先回りして解いていた。

蓮を見ながらそんなことを考えていると、いきなり蓮がこちらを向いてきたため、ガン見していたのがバレてしまった。

なんとなく気まずいため目を逸らしてしまった。これじゃあ蓮と同じじゃないか。人のこと言えないな。


「もう問題解き終わったのか」

「うん、先回りして解いてたからさ」


そう言って俺のノートを覗いてくる蓮。まじで見ないで欲しい。こちとら君のノートとは違って男子小学生の落書きレベルの字の汚さだ。女の子は可愛い丸文字という幻想が消え去るぞ。


「すごいな谷村は」

「前の高校でやったところだからね」


俺がそう答えると蓮は納得したように自分のノートに意識を戻し、自分の問題を解いていった。



全ての授業が終わり、下校の時間が訪れる。

真帆や弥生、健二と大地はそれぞれの部活がはじまるという事で、足早に部活に向かっていった。

美紀は部活がないのかと聞くと、バイトがあるという事らしい。

だから見学は明日にしようってことになったんだな。

俺もそのまま帰りたいところだが、帰りのHRで横井先生に教科書の受け取りをして欲しいと言われ、職員室の前に連れてこられた。


「よし、じゃあ備品室行くか」


横井先生は職員室で鍵を取ってからそう言うと職員室の前から離れ、少し歩いたところにある備品室と書かれた部屋に入っていった。

そこはたくさんの本やチョーク類、黒板用の定規など、学校に必要なさまざまな道具が保管されていた。


「まだ教科書は持ってないと思うが、これがうちの教科書だ。残念ながら君の前の学校と共通している教科書が1冊しかなかったから、それ以外はこの新しいのを使ってもらわないといけない」


先生が指さしたテーブルの上には10冊以上の本が積み上がっていた。男の時なら”重い”くらいで済んだだろうが今この積み上げられた本を見て思うのは、”持てない”だ。

俺の体格から先生もそれを察したのか、本を手に取り2、3冊を俺に渡すと、他の全ての本を持ってくれた。


「これは一人じゃきびそうだな。とりあえず教室に持って行くのは手伝うよ」

「すみません…」


男の時なら持てたのに、という気持ちと申し訳なさが絡まり少し俯いてしまう。


「いいのいいの気にすんなって!」

「ありがとうございます」


横井先生は二の腕を見せるポーズをとり俺を少し励ましてくれた。

教室に入り俺の机まで行くと、二人で机の上に教科書を置く。

蓮まだ残ってたんだ。蓮は教科書とにらめっこをしている。

俺は見た目で人を判断するというのが嫌いな方ではあるが、蓮は制服も着崩していてかなりやんちゃそうで目立つタイプだなと思う。

しかしこの学校に入学できている時点で根は真面目なのだろう。


「じゃあ谷村、あとは置き勉するなり小分けにして持って帰るなり任せたぞ」

「先生が置き勉とか言っていいんですか」


大体の先生は置き勉を禁止してくると思っていたため、こうも堂々と言われると笑ってしまう。


「俺はそもそも体育教師であんまり勉強が得意じゃないしな。ここの生徒の方が勉強も出来るだろうし、俺みたいなのがとやかく言うよりそういう子達のやりたいようにさせた方がいいと思ってるからな」


先生には先生なりの考え方があるようだ。

まあ俺は自分の好きなようにやらせてくれる先生の方が好きだし、横井先生も生徒のことを考えてくれているいい先生だなと思う。

横井先生は、またなと手を振って教室から出て行った。

さて、教科書で勉強する派の俺としては今日持ち帰って家でどんな教科書があるのか見たいんだよな。

最終的にはあんまり使わなそうな教科書は全部置き勉強するけど、いい教科書があるなら家で読んでいたい。

さっきは手で持ったから厳しそうだったけど、リュックに入れれば意外と行けるんじゃないか?

幸いリュックには入りそうなため、一冊ずつ放り込んでいく。

よし!全部入った!


「よいしょっと。ってうわぁ!」


リュックを背負った俺はあまりの重さに勢いよく地面に激突してしまいそうになる。

と思ったが、何か柔らかくはないが硬すぎるわけでもない感覚のものが下敷きになったおかげでことなきを得たようだ。

後ろを見ると蓮が俺を庇って下敷きになっていた。

それと同時に俺の胸が何かに包まれている感じがしたため胸元を見ると、蓮の手で鷲掴みにされてしまっていた。

その光景を見た俺は恥ずかしさが込み上げて赤くなってしまう。あああ...。


「大丈夫か?」

「ごめん!ありがとう。でも、あの、手は離して欲しいな…」

「あ!ご、ごめん!」


俺がそう言うと蓮はすごく焦ったようですぐに手を引っ込めて俺のリュックを回収すると、俺が立ち上がるのを補助してくれた。

というかこいつが片手で俺の重いリュックを持ち上げたのは許せない。ぐぬぬ…。

蓮を見ると、すごく申し訳なさそうな顔をして俯いてしまっていた。

そんなに気負わなくていいのに。まあ恥ずかしくはあったけどさ。


「蓮、ありがとう。危うく頭打つところだった」

「い、いや俺こそ触っちゃって本当にごめん」


そう言って礼儀正しく頭を下げてくる金髪オールバック。

俺も恥ずかしいし、蓮も申し訳なさそうだったからなかったことにしようとしてたのに蒸し返すなよー!

まあでも蓮はそれだけ優しい奴なんだな。


「私もちょっと恥ずかしかったけど、別に触られるくらい大丈夫だよ。でも他の子にはやっちゃダメだよ」

「え?」

「え?」


沈黙が流れた。

恥ずかしいっちゃ恥ずかしいけど別に俺は生粋の女の子ってわけじゃないし、触られたところで嫌悪感とかないからそこまで気にはしない。

だからって普通の女の子の胸を触るのは流石に止めないといけないだろう。

なんで蓮がこんなにびっくりした顔をしているかは知らないが、とりあえずこれからどうしたらいいかと考える。

さっきは少し後ろに体重がかかっていたから無理だったけど、前傾姿勢になればいけるんじゃないか?

俺は再びリュックの肩紐を掴んで持ち上げようとする。


「お、おい。流石に無茶だって」

「いや、でも持って帰りたいし」

「あーもう!俺が持つから!」

「大丈夫だってば!」


急に持つと言ってきた蓮に対して、俺のプライドが許せず否定してしまう。

確かに蓮の方が筋肉もモリモリだしさっき片手で持っていたところを考えても余裕だろう。

でも俺も男として譲れないものがある!いや今は女の子だけども。

俺がそんなことを考えていると、いつのまにか蓮にリュックを奪われてしまっていた。


「家どこだよ」

「ここから2駅隣の淵野辺駅のすぐ近くだよ」

「俺もその辺だから家まで持ってく」

「それは悪いからいいよ」

「お前目離すとぜってー怪我するからだめだ」

「うぅ…。保護者かよー」


こいつ結構頑固だな。まあ持ってくれればかなり助かるから嬉しくはあるけど。

うーむ、仕方ない。今回だけだぞ蓮!

ごめんなさいお願いします。


「ごめん、それじゃあお願いします」

「おう」


ぶっきらぼうにそれだけ言うと、蓮は俺のリュックを背負い自分のエナメルカバンは片手で持って教室から出て行った。

俺はその後ろから追いかけるように着いていく。

こいつ本当に優しいな。軽いとはいえわざわざ大荷物で帰るなんて。


蓮、いいやつだな。胸触ったけど。


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