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ある日女の子になった私(俺)のこれから  作者: 詩野
2章 高校2年生編
19/22

17話 転校1日目2

先生が黙々と授業を開始していくが、俺は教科書を持っていない。内容的に簡単だと思えるものばかりなので聞いてなくても困らないとは思うけど、教科書の文章読んでとか言われたら流石にやばそうだ。


「わっ」

「ご、ごめん。教科書見るか?」


ふいに肩をツンツンとされたため右隣を見ると、隣の蓮が教科書片手にこちらを向いていた。

おぉ!教科書見せてくれるのか!


「ありがとう。私まだ持ってないからお願い」


そう言って蓮の机に俺の机を寄せてくっつけた。蓮でかいな。

隣に来るとより一層にそのでかさを感じて、自分が小さくなってしまったことを思い知る。


「今ここだ」

「ありがとう、蓮」


俺は指さされた場所を見る。数列のところか。

このあたりなら倒れる前にやった範囲なため、聞いて聞かなくても大丈夫そうだ。

そうだ。さっきのこと謝っておかないと。


「朝のホームルームの後邪魔してごめんね」

「え?」

「いや、ほら私の周りに結構集まっちゃって迷惑だったかなーって」

「そういうことか。そんなん別に気にしてねーよ」

「ありがとう。優しいね」


俺がそう言うと蓮はまたそっぽを向いてしまった。優しくしてくれるから嫌われてはないんだろうけど、何考えてるのかわからないな。

その後も寝ないように黒板と教科書に意識を集中させてなんとか午前の授業を乗り切ったところで、お昼の時間がやってきた。


「岬ちゃん!一緒に食べよー!席作ったからこっちおいでー!」


声のする方を向くと、真帆がこちらに向けて手をブンブン振っていた。

男子とはまだ蓮としか話してないから男子と話したいんだけどなあ。まあでもせっかく誘ってくれたんだし真帆達と食べよう。

俺が母さんの作ってくれた弁当を片手に真帆のところに行くと、弥生と美紀、そして話したことのない男子が二人いた。

ちょうどいい!これは男子と話せるチャンスだ!

俺は真帆に指定された席に座ると、目の前の机に弁当箱を置いて前方に座っていた男子に目を向ける。


「えっと、まだ話したことなかったよね。谷村 岬です。よろしくね」

「谷村さんよろしくね。僕は宮川 健二(みやかわ けんじ)です」

「よ、よろしくな!俺は山上 大地(やまがみ だいち)だ!」


最初に挨拶を返してくれた健二という男子は、とても大人びていて、その優しそうな顔で万人にモテそうな雰囲気をしていた。

次に挨拶を返してくれた大地は、元気があふれるムードメーカーっぽい男子だ。そういえばこいつ俺が壇上で自己紹介していた時に彼氏がいるかどうか聞いてきたやつだな。


「健二に大地か。いつもこのメンバーでお昼ご飯食べてるの?」


大地が、初対面で下の名前!?と驚いていたが、もしかして嫌だったりするのかな…。

うちの学校だと男子同士はみんな下の名前で呼び合ってたんだけどなあ。


「大体このメンバーで食べるかしらね。席が近くてそこからお昼はいつもこの5人で食べるようになったの」

「そうなんだ。じゃあいつメンなんだね」


俺の左隣にいた弥生が答えてくれた。

弁当箱を開けると、男だった時から馴染みのある卵焼きやタコさんウィンナーが詰め込まれていた。

食べられる量を考えてくれたようで、全体的に量が少なくなっていた。そういえばこの弁当箱自体新しく買ってくれたやつだもんな。

俺の弁当箱は青いスチール製の箱に、綺麗な木の木目がプリントされた蓋を被せるタイプのものだ。

これなら男が使っても女が使っても違和感がないため、今の俺にはぴったりの製品だと思う。


「ねーねー!岬って高校の時はなんの部活してたのー?」

「前の高校では、さっ、いや軽音部かな」

「軽音部なんだ!それじゃあみーちゃんと同じだね!」

「みーちゃん?」

「あたしのこと。真帆とは幼馴染で昔からそう呼んでくるんだけど、高校でもその名前で呼ばれるのははずい」


サッカー部と言いそうになったけど、前の高校である東中央高校には女子サッカー部なかったし色々深堀りされそうだから軽音部と言ってしまった。

まあ少しはギターできるし、歌も割と自信はあるから通せないことはなさそう。


「そっか、岬は軽音部なんだ。何やってたの?」

「ギターだよ。エレキギター」

「あたしはベースなんだけど、もし良かったら明日とかうちの軽音部見てかない?実はうち、なんとも不思議なことにギター足りないんだよね」

「軽音部かあ。うん!行く!でもさ、なんでギターが少ないの?」

「冬くらいに流行ったアニメで主人公がベースだったから、それで入ってくる人が多いっぽいんだよね。あたしは中学の時からやってたけど」


そういえばそんなアニメあったような。ワンダーベース堀野だっけ?ギャグ漫画みたいな名前してるのにめっちゃ感動系で、冬アニメランキング1位になっていた覚えがある。

というか俺も割と勢いで、行く!なんて言っちゃったけど大丈夫かな…。

まあサッカー部入らないとなると正直、軽音部しかないなとは思ってたんだけどさ。


「あーワンダーベース堀野(ほりの)ね」

「えっ岬ってそういうの詳しいんだ」


ギクッ。

美紀がびっくりしたような顔でこちらを見ている。

俺は男時代はサッカーに精を出していて、オタクということを表に出さないいわゆるステルスオタクというやつだった。

別にオタクが悪いとは思ってないし、クラスのオタクメンツとも仲が良かったが、サッカー部の大抵のメンバーは基本アニメやゲームの話が通じないため自ずとそういう会話が少なくなり自然とステルスになってしまっていたのだ。

この学校ではどうしたものか。まあ別に隠すことでもないしいいかな。


「詳しいわけじゃないけど、面白い名前だなーって思って見てたよ」

「へー。岬って可愛くて清楚っぽいからそういうの興味ないのかと思ってた」


おい、清楚だからアニメ見ないとか偏見がすぎるぞ。

というかそんなに普通に可愛いとか言われると照れるんだけどなあ。

しかも意識してないのに清楚さが出ているとかこの体すごすぎる。

でも男っぽいとか思われて怪しまわれるよりかはまだ良かった。


「私のことはいいからさ!他のみんなはどんな部活に入ってるの?」


あんまり根掘り葉掘りきかれると俺の素性がバレたり、ボロが出やすいと思った俺は、他のメンバーに話を振ることにした。

転校生だから俺に質問とかしたい気持ちはわかるけど、ここは我慢してもらう。


「僕と大地はバスケ部だよ」

「俺が言いたかったのに!」


この二人は同じ部活なんだな。健二に自分のセリフを取られて不満そうな大地がどこか面白いので俺も自然と笑い、それに続いてみんなも笑い出す。


「私はバトミントン部だよー!」

「私は弓道部よ」


真帆はバト部で、弥生は弓道部か。

運動部もいいけど、サッカー以外はあんまり興味ないし、そうなると軽音部かなあ。

とりあえず明日誘ってもらったしその時にちゃんと見てから考えよう。


「そういえばもう少しで中間テストだけど、転校してすぐの谷村には酷な話じゃね?」

「確かに。谷村さんまだ色々慣れてないしな」


大地が俺のほうを見て心配そうな顔をした後、そう言った。

それに続いて健二も同じようなことを言っているが、苗字じゃなくて下の名前で呼んでほしいんだけどなあ。

だが、俺の願いは届かず、健二と大地は俺の事を苗字で呼んでくる。

転校初日だし、この高校の距離感としてはこんなものなのかな?


「テスト嫌だー!」

「真帆はまたあたしと勉強漬けかな?」

「みーちゃんの部屋行けるのはいいけど勉強はしたくないよー!」

「真帆は勉強嫌いなんだ」

「嫌い!できるだけしたくない!」

「真帆はよくうちの高校受かったと思うわ」

「みーちゃんひどいよ!でも確かにみーちゃんいなかったら私ここ受かってなかったかも…」


確かに俺が調べた限り栄田高校は進学校として有名らしいし、俺のいた東中央高校には少し劣るものの偏差値もかなり高い部類だろう。

どんな学校でも勉強が嫌いな奴はいるんだなーと、サッカー部仲間の一人を頭に浮かべながら思った。

確かに授業中はみんな真剣にノートを取ったり話を聞いていたため、真面目な生徒が多いのだろう。

あ、ちょっとトイレ行きたいかも。


「ごめんトイレ行ってくるね」

「じゃあ私も行くー!」


どうやら真帆も一緒にトイレに行くみたいだ。

待てよ?トイレどこだろう...。


「ごめんトイレどこかわかんない...」

「じゃあ私が案内してあげるー!」

「うわっ」


案内してくれると言った真帆は俺の腕を掴んでずいずいと校舎を進んでいく。

真帆力強い...。俺が非力すぎるのか?

昔使っていた筋トレ道具は1ミリ持ち上がらなかったため筋トレなどは特に出来ていない。

まだ退院後2週間だという言い訳を自分に言い聞かせつつ、俺はトイレに引っ張られていく。


「はい着いたよー!」


真帆が指さす方を向くと、左に男子トイレ、右に女子トイレがあった。

真帆は俺の腕をさらに引くと女子トイレに進んでいく。


「ああちょっと...!」

「ほら行くよー」


今日までの2週間ちょっとはあんまり外でトイレに入ることがなかったから女子トイレに入るのはなんだかんだ2、3回目とかで、まだまだ抵抗がある。

しかし、真帆は話を聞いておらずどんどんトイレの中に入ってしまった。


「うぅ...」

「どうしたの?漏らしたー?」

「漏らしてないわ!」

「わっ!岬ちゃんがツッコんできた!」


ぐぬぬ。真帆が楽しそうに笑っている。

やばい。本格的に漏れそうだから早く個室に入っちゃおう。

俺は小走りで個室に向かい、扉を開けて中に入る。

ふう...。危なかった。

もうこの体で用を足すのも慣れてきたよなー。

俺が個室の扉を開けると真帆もちょうど端っこの個室から出てくるのが見えた。


「そうだ。岬ちゃんLIME教えてよ」

「いいよ」


俺はトイレから出ると、スマホを開いてLIMEを起動する。

あ、メッセージが大量に溜まっているの忘れてた...。

プロフィール写真も男の時の写真だし、これは流石に変えておかないとな。

写真フォルダに入っていたよくわからないヒヨコみたいなキャラクターに設定しておいた。なんでこんな写真保存したんだっけ...。


「岬ちゃんまだー?」

「ごめん今QRコード出す」

「このひよこが岬ちゃんなんだ。飼ってるの?」

「いや、写真なくてたまたまスマホ入ってた写真使っただけだよ」

「じゃあ私が後で可愛く撮ってあげるー!うーん、でも撮るのはみーちゃんの方が上手いかな...?」

「ありがとう。お願いしようかな」


写真か。確かにかっこいいのが撮れるなら撮って欲しいな。

男の時のプロフィール写真は、サッカーボールを片手にユニフォームで背を向けているというキザっぽい写真だ。

自分で言うのもなんだけど、高校1年生の時に友達が撮ってくれてすごくかっこいいなって思ったからずっとこれに設定してたんだよな。

女性でもそういうかっこいい写真撮ってる人がいるっぽいからそういうのがいいなあと思う。


「じゃあ戻ろー!」

「お、おー」


私は転校したことがなく通っていた高校にも転校生がきたことは一度もないので、その辺の描写が想像するしかないので難しいです。


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