我らの王の元へ
ロゼたちに俺たちの過去を話して二ヶ月が過ぎた。
蒼に一郎と友希が親だと言われた時は驚いた。 アリシアには、呆れられながら「人の顔覚えるの苦手だもんね」と言われた。
「もう少しか……」
俺はベッドで寝ているロゼの頭を撫でながらそう言った。 ロゼはむず痒そうにしながらも俺の手に甘えてきた。
しばらく撫でていたが、そろそろ時間なので外に出ようとロゼの頭をポンポンと起きない程度に軽く叩いた。
音を立てないように静かに家を出た俺は密かにミルドの村を出た。 小高い丘の上に立てば、明け方に感じる少し冷えた風が肌を撫でるように吹いていた。 今はそれが気持ちいい。
「待たせたな」
「いえ、姫様を待たせるわけにはいかないので」
カルデラ地形を登ったところにカルディはいた。 前のように所々腐った様子はなく人間と言われても何もおかしくかった。
まず、俺がなぜカルディと会っているかなのだが、この日にこの場所に来るという予感があった。 多分、元々この身体を持っていた姫様と呼ばれる妖狐と深く交わってしまったのが原因だと思う。
「では、行きましょう」
カルディは、ごく当たり前のように転移門を開いた。 今の俺でも超短距離の転移しか出来ない。 おそらくだが、カルディは俺の魔力を自分の魔力に変えているのだろう。
「あぁ、わかった」
俺が転移門に向かって一歩歩いた時、カルディを狙った火の玉が横を通り抜けた。
その火の玉はカルディに消されたが狙いは悪くなかった。
「コンちゃん!」
火の玉を放ったのはロゼ、この二ヶ月で『焔魔法』を完全習得までいったためか、火属性の魔法が得意になっていた。
「コンちゃん、助けに来たよ。 燃えろ!『原初の業火』!」
カルディを狙った焔魔法を放ったロゼは短剣を抜いて俺を守るように走り出したロゼとは裏腹に俺は、ロゼが放った焔魔法の斜線上に立ち俺はロゼの魔法を同じ魔法で相殺した。
「ごめんな、ロゼ。 今は帰れない、やらなきゃいけないことがあるからな」
「な、なんで!?」
「アリシアによろしくって言っといてくれ」
俺はそう言って、カルディに導かれるように転移門の中へと入っていった。
俺は魔王を倒す戦いにあいつらを巻き込みたくない。 だから、俺は一人で挑む、弱くなっているとしても最悪相討ちまで持っていくつもりだ。
門を潜り抜けると景色が変わる。 そこは、廃城のようで人気がない。 百五十年前に戦ったあの魔王の城は、かなり豪華な造りになっていたが、ここは、廃城になった場所をそのまま使っているようだった。
「何か、聞こえる……?」
狐の耳がピクピクと動くのがわかる。 どこか懐かしく、どこか恐ろしい歌声のようなものが城中に響き渡っていた。
「女王様も今日は機嫌が良いようですね。 うん、今日も麗しい歌声です」
横に立っているカルディはにそう言った。
俺からすれば全身を撫で回されているような感覚を味わうほどのものを平気な顔で聞いているカルディには嫌な感覚を覚えた。
「では、行きましょう。 我らの王の元へ」
上機嫌のまま魔王の元へと案内していくカルディ。
コツコツと靴が鳴る音と魔王が歌っている歌声が俺が心の中を騒つかせる。 さらに追い討ちをかけるように歌声の元に近づくに連れて頭が痛くなってきた。
ヤバイかもしれないな……。 アリシアは連れてくるべきだったかもしれないな。 いやいや、弱気になんなよ、俺。 魔王の力は未知数、百五十年前と条件は多少は違うが勝つ。 いや、勝たなければならない。
そんなことを考えていると、ますます頭痛が酷くなる。 ロゼやアリシアたちが原因というわけではないのはわかっているが、魔法を使うのにも影響があるかもしれない。
「着きました、姫様」
「あぁ、ありがとう」
大扉の目の前まできた俺は、カルディに見えないように短剣を握りしめた。
そして、カルディが大扉を開けたその先には俺の茶色っぽい薄茶色の髪と瞳の瑠璃色とは全く違う、銀髪、翡翠色の瞳を持つ九尾の妖狐がいた。
俺は、それを見ただけでわかってしまった。 《《この妖狐の正体を》》。
「ハハハ、そういうことかよ」
今回起きたすべての事、俺が受けた呪いと目の前にいる妖狐、これはすべて仕向けられた事であり、俺は《《アイツに嵌められた》》。
「あぁ、すまん、ロゼ。 これは、俺には倒せねえわ」
俺はそう呟いて、頭痛によって意識が暗転した。




