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もう、疲れましたよ

 その時、俺はミルド、アリシアと一緒にミルドの店のカウンターでゆっくり話し合っていた。 ただ不思議と胸騒ぎが収まらなかった何か良くないことが起きているように感じていた。


「グレン、そわそわしてどうしたんだ」

「いや、なんか妙に胸騒ぎがしてな、落ち着かないんだ」


 俺は、自分の心臓の鼓動を感じるように手を胸に当てた。 いつもと同じようにゆっくりとリズムに乗った音が手を伝わった。 だが、俺にはその鼓動が異常に感じた。


「グレン、落ち着いてゆっくり息を吐いて」

 

 アリシアの言葉をゆっくり繰り返した。 胸のざわつきが落ち着いてきたときにポトンッと、何かが落ちる音が聞こえた。

 

「新聞でも来たのか……」


 カウンターに座っていたミルドが立ち上がり、新聞を手にして戻って来た。


「グレン、見てみろよ」

「は?」


 その新聞は、ミルギアの新聞だった。

 見出しは、『獣王国ゼアル 滅ぶ』と言うものだった。 それは、あってはならない事だった。 すべての国の間で取り決められた条約であと十年はゼアルには手を出されることはなかったはずだった。

 なのに、この見出しにはミルギアに滅ぼされたと書いてあった。 新聞には勇者がミルギアを率いてと……


「グレン!」


 アリシアが走り出した俺を止めようとしたのが端に見えたが遅かった。 俺は転移(テレポート)した。

 景色は一瞬で廃墟へと変わっていた。


「嘘だよな……」


 崩れ去ったゼアルの王都を見ながら俺はそう呟いた。 ゼアルの王都が滅び大体三日ほどだろう。 生き残りを見つけるのは難しい、だったら、王都の破壊された門の前に立っていたミルギアの兵を地面に押し付けてこう聞いた


「お前たちは、テツに何をした」

「し、知らない! 王が突然、勇者様の指揮に従えと!」

「嘘は、言っていないな」


 この場所にもういる意味はない。 廃墟となったゼアルを見て俺は奥歯を噛み締めた。 こんなことをしたテツを殴り飛ばすために……。


♦︎


 転移でミルギア王国までとんだ。 王城前の門まで。 本当なら王の目の前まで飛んだはずなのだが王城内に魔法を反射する結界が貼られてるのかもしれない。

 俺が王城の門を開いたとほぼ同時に王城の一角が爆発した。


「な?!」


 アリシアが先に来ていたのかと思い爆発した一角まで魔法で強化して穴が空いた一角まで飛んだ。

 そこには、動かないモリアーティガと王と血濡れた剣を片手に持つテツがいた。


「あぁ、グレンさん来たんですね」

「テツ! お前、何してんだよ!」

「何って、悪を滅してたんですよ?」


 当たり前のことのようにテツはそう言った。

 だけど、どこか冷めていてどこか壊れたおもちゃのようだった。すべて壊し切り終わったようにも見えた。


「何があった……」


 俺はそうテツに聞いた。 テツのすべてを受け止めるつもりで。


「はは、俺の大切な人を奪われたんですよ」


 予想してなかったわけではない、もしかしたらあり得たかもしれないそんな程度だったがテツ自身に言われるとぐっとくるものがあった。


「俺の妻をこいつらは人質にしたんですよ。俺を自分の都合の良い駒にするために」


 自分の大切な人を守らなかったということが悔しかったようで唇を噛んでいた。

 俺にはそれ以上踏み込むということが出来なかった。


「ねぇ、グレンさん。 俺を殺してください」

「……っ」


 テツの言葉に俺は何も言えなくなった。 ゼアルを滅ぼした野郎どもを殺す気でここにやってきたが、テツの言葉を聞いて殺気が消え失せていた。


「……無理だ。 俺はお前を殺したくない」

「もう嫌なんですよ! いつもいつも! 嫌な役回りをさせられるのはもう嫌なんです! 友希も一郎も、あいつらのために色々とやってきた。 それに! ここでゆっくりと暮らしたいと願っただけなのに、それもしてはいけないのですか!?」


 テツの言葉は願いから悲痛な叫びへと変わり、剣を地面に投げ捨てて殺してくれと言わんばかりに両腕を広げて俺にすべてを任せようとした。

 俺は決めることが出来なかった。 力強く握っていた握り拳からはポタッポタッと血が流れていた。

 

「もう、疲れましたよ。 グレンさん……」

「でも、でもよ!」

「お願いします」


 その願いの言葉で決心してテツを殺す魔法を起動したところでテツの首が飛んだ。 テツは一瞬驚いた表情を作ったが、すぐに願いが叶った安堵からか優しく笑ったようになっていた。


「……アリシア」

「ごめん……」


 俺はテツの首をはねた相手の名前を呼んだ。 

 アリシアは、謝罪の言葉を紡ぐだけでこちらを見ようともしない。


「どうしーー」

「グレンにやらせなくなかったから」


 俺の言葉はアリシアの言葉に被せられた。

 

 俺はこの日、テツの亡骸の前で一晩中泣いた。 アリシアはそれを見守ってくれていた。 次の日になるとアリシアは居なくなっていた。


そこから百五十年間アリシアとは会っていない。


♦︎


「とまぁ、これが俺たちに会ったことだな」

「へぇ、私に兄弟子いたんだぁ」


 ロゼがやんわりと笑いながら言った。


「違うぞ、テツには冒険の心得しか教えてないからな。 だから、弟子はお前だけだ」

「エヘヘ、ありがとう、コンちゃん」


 照れたロゼは頬を赤く染めて俺に俺を言った。

 

 その後は、話が長くなったためすぐに解散となった。 蒼は何か言いたそうだったが、明日にしてくれと頼んだ。 

Wi-Fiが通った!

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