嘘だろ……?
あれから半年が経った。
この半年で多くの出来事があった。
一つは、ミルギアのとある貴族が破滅したことだろう。
その貴族は大量の亜人の奴隷を違法に持っていた。 そのための裁きが下ったと言われている。
ただ、ひとつだけ言うのであれば、その亜人奴隷の中にミオの兄であるアルカがいたとだけ言っておこう。
まぁ、他のことは語る必要のない話である。
勇者が召喚されたという噂はつい先ほど、この国の王から正式に発表があった。
「さて、次は俺たちの出番かな」
そう口ずさんだ俺の隣ではタツたちと
白金ランクの面々が顔を合わせていた。
「白金ランクの皆さん、集まってもらってありがとうございます」
「グレンさんの頼みであれば全員集まりますよ」
そう言ったのは、獣王のアゼル。
ここには今いる白金ランクである七人の中のとある二人を除いた全員が集まっている。
獣王、聖者、軍師、賢者、剣姫の五人、軍師の名はモリアーティガという名で片眼鏡をした初老だ。
まぁ、年齢的に言えば俺とアリシアと同じぐらいの歳であることは間違い無いのだが、いかんせん食えないやつであった。
このモリアーティガの二つ名である『軍師』とあるように人を率いることに特化した白金ランクの冒険者である。
「さて、今日集まってもらったのは魔王討伐についてだ。 全員知っていると思うが、魔王が本格的に動き出した」
集まった全員の顔を見ながら俺はそう言った。
今ここにいる全員が生きて帰れるかどうかなんてわからないそんな戦いをしようとしているのだから。
「まず、今回の作戦はモリアーティガが立ててくれた作戦で行く。 ここにいない『暗殺者』『拳聖』は魔王の偵察に向かってくれている。 先方の偵察のおかげで魔王の居場所は分かっている。 そこに、俺の転移で移動して現地で二人と合流する流れで行く」
「一つ、いいかなグレン」
「何だモリアーティガ」
「この作戦は先に相手の大元を叩いてその後、生き残りを潰すそういう作戦です。 なので、魔王を倒した後もよろしくお願いしますよ」
そう言ったモリアーティガの言葉で少し全員のモチベーションが上がったような気がする。
「それじゃあ、転移するぞ」
部屋にいた全員を転移で魔王城近くまで転移させた。
近くで魔族と人間の怒号が飛び交う声がしている。
それは、俺たちを魔王城に入れるために犠牲になってくれると志願してくれた人たちと魔族が戦っている証拠だった。
「テツ、振り返るなよ。 アイツらは俺たちのために戦ってんじゃねえ、自分のために戦ってんだから、水を差すようなことをしようとすんなよ」
「分かってます……」
テツは自身の唇を噛みしめすぎて血が出ているのにも気づくことなく前を向いた。
♦︎
魔王城に着いた俺たちの目の前に飛び込んできたのはありえないものだった。
「嘘だろ……?」
それは、誰が言ったことか分からなかったが、それほど信じられることが出来ないものだった。
♦︎
それは、十字架に貼り付けなされた『暗殺者』と『拳聖』だったのだから。
どこからか作戦が漏れていたのかもしれない。
「どうする、二人の死体は」
そう聞いてきたのは『獣王』アゼルだった。
アゼルは悲しんでいないということではなく、このまま置いておくとアンデットにされて利用される可能性があるということを聞いているのだ。
「二人の死体は持ち帰れない。 ここで火葬するしかないかもしれないな」
「それがいいでしょうね。 この二人はここで殺され、目立つところにいた。 何もされていないはずがないですから」
今回ばかりはモリアーティガの意見に賛成だ。
俺たちのことが知られている前提になってしまったが、それでも引くことはできない。
♦︎
俺たちは魔王城の中を駆けていた。
魔王城の中には敵がかなりの数いると思っていたが、ここまでくるのに敵には一体足りとも出会うことがなかった。
「静かですね」
「あぁ、静かすぎて不気味だけどな」
そうテツとゼアルが言い合っていたが魔王城の広間に出てくると突然探知魔法が反応した。
「チッ、ここで敵かよ」
それでも俺たちは足を止める気はなかった。
それは俺たちが仲間を信頼しているからだ。
「ここから先には行かせないよ!」
「通してもらうよ」
一体の魔族の言葉に俺はそう言って俺たちは真っ直ぐに突き抜けるルートで走っていく。
もちろん魔族の凶刃が襲ってくるがそれを見ることもなく真っ直ぐ走り続ける。
「お前ら! ここは任せた!」
後ろを振り返ることもせずに魔族の一撃を受け止めているであろう俺とアリシア以外の白金ランクに向けてそう言った。
あいつらは白金ランク、俺たちと変わらないほどの力を持つ奴らだから幹部クラスの魔族にも引けを取らないはず。
「グレンさん、大丈夫ですかね。 あの人たち……」
「テツ、あいつらの心配するぐらいなら自分の心配をしてろ、あいつらよりもお前のほうが弱いんだからな」
テツは心配そうに後ろを振り返っているが俺はあいつらが生き残れると信じている。
「そろそろ着くぞ、気を引き締めろよ」
俺たちの目の前に巨大な扉が見えてきたときに俺はそう言った。
俺はその扉を無理矢理開けて中に入った。
中にいたのは二足歩行で歩く大きなトカゲのようだった。
白金ランクは世界で一番強い人に渡される称号みたいなものです。




