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無理。だから、死んで?

俺とアリシアが、エルフの御前試合で戦って五十年が過ぎた。

三人いたパーティーもミルドが抜けてコンビパーティーになった。

なぜ、ミルドが抜けたかというと、三十年ほど前に立ち寄った大和という国で鍛治師というものに憧れを抱いてパーティーを抜けた。

今のミルドは、毎日生き生きとして剣や刀を打っている。


そして、俺たちはというとーー


「おめでとうございます! お二人ともソロで、白金(プラチナ)昇格です!」


となりでホッと息をついた音が聞こえた。

それもそのはずだ、ソロで狩るのが難しいと言われている『五龍』を二人ともソロで狩っていたのだから死んでもおかしくなかった。

そもそも、『五龍』とは、火龍、水龍、土龍、雷龍、光龍の五体の龍のことを指している。

この『五龍』は、神龍など様々な呼び名で呼ばれることもあるが、それすべてが、少なくとも五百年以上生きている個体のことをいう。


「お二人の白金昇格に伴い、お二人に二つ名がつけられました!」

『おぉ!!』


冒険者ギルド内部にいた、俺たちの取り巻きの冒険者たちが羨ましそうな感嘆の声を上げた。

冒険者にとって二つ名とは、自身の実力が認められた証である。

つまり、俺たちは全ギルドに実力を認められたと同意義である。


「えー、グレン様が『賢者』、アリシア様は『剣姫』お似合いの二つ名ですね」

「ありがとう」


ここまで来たくて頑張っていた。

はじめはアリシアの隣に立つために一人になっても諦めなかった。

だから、ここまで来れたのだと証明することができた。


俺たちは、白金ランクを証明する札をもらいギルドを後にした。


「んー、さて、グレン。 何か奢って?」


ギルドで話を聞くのがよっぽど退屈だったのか、アリシアは、ギルドを出るなり大きく伸びをしていた。

そして、俺にご飯を奢れと言ってきた。


「何かって何が食べてたいんだ?」

「んー、串焼き!」

「あー、串焼きかー、屋台で食えるものを選んだな」


食べるものも決まって俺たちは、さっそくアリシアが食べたいという串焼きの屋台を探し始めた。


「ねぇ、気づいてる?」

「ん? あぁ、後ろのやつか、気づいてるよ。 でも、普通を装って接触してみようか」


俺とアリシアは、見つけた串焼きの屋台の席に座った。


「店主、迷惑をかける」


そう言って俺は、金貨を五枚ほど店主の目の前に置いた。

店主は出された金貨の金額に驚いていた。

それもそうだ、今から起きることに対する謝罪の意味も込めての金額だ。 つまり、この屋台よりも大きい、店を構えることも出来る金額でも安いぐらいだという意味を入れている。


「おっちゃん! 串焼き十人前!」


となりのアリシアは、俺たちをつけている相手のことなんてもう忘れてしまったかのように店主に串焼きを頼んでいた。

まぁ、相手さんに俺たちが油断しているって認識してもらえれば俺たちも楽に対処できるんだけどなぁ。

そこまで、考えをまとめるとゴトッという音とともに鼻腔をくすぐるいい匂いを放つ串焼きが大皿に山盛りで出てきた。


「まずは腹ごしらえかな」


一本串焼きを取って、ここまでに来る間に仕込んでおいた遠見の魔法を発動させた。

遠見の魔法を設置したのは十数カ所にも及ぶ数だからどこかに相手さんが映っているはず。


「お、いたいた」


人差し指と親指で輪っかを作り、その輪っかの中から見ていると暗殺者といった雰囲気を持つ人影が映った。

遠見の魔法だと、少し距離があるせいか相手が何者なのかがうまく見えない。


「んー、まぁこのまま襲ってくれたらいいけどーーってあれ?」


串焼きがあったはずの大皿に手を出すとそこには、串焼きが一本もなかった。


「おい、アリシア。 食べすぎだろ」

「グレンが遅いだけでしょ?」

「あーそうかい。 おっちゃん、追加で十人前お願い」


そうしてもう一度遠見の魔法で覗くと、暗殺者が戦闘態勢に入ろうとしていた。


お、来るか。 さて、光の壁を一応張っておいて。 これでいいか。


暗殺者からはギリギリ死角になるようなところから光の壁を屋台全体に張った。

遠見の魔法の中の暗殺者は、あとコンマ一秒ほどで飛び出そうとしていた。

俺はそれを見ながら再び置かれた串焼きを一本食べた。


ガァァン! 刃物が壁にぶつかりあい甲高い音が響いた。


「ヒィィ」


店主は間近で刃物がこちらに向かってきたのを見て怯えていた。


「アリシア、ここは俺が行くが、全部食べるなよ? 半分残せ」

「はーい、いってら」


俺たちは、このように呑気な会話をしていたのだが。


「さーて、暗殺者さん。 目撃者ごと殺すつもりなのはわかってるけど帰ってもらえない?」

「無理。 だから、死んで?」

「ハハッ、わかってたけど、簡単に引き下がってくれねぇな」


そう言って俺は、魔法を発動待機状態にした。


「死にたくないから死んでください」

「嫌だ。 『スリープ』」


相手を強制的に眠らす魔法を暗殺者に使った。

暗殺者は真正面からこの魔法を受けて地面に滑りながら倒れた。


「捕縛完了と」


俺は、暗殺者を縛り付けてミルドのところに手紙を添えて送りつけた。

屋台に戻ると半分残せと言ったはずなのに十本ぐらいしか残っていなかったのは別の話だ。

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