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無理だな

語り部は俺がエルフの神秘を使えたことに驚いているような感じではなかった。


「お、お主! その炎はなんだ!? 魔力濃度が高すぎるぞ!」

「魔力濃度ってなんだ?」

「魔力濃度は、その炎に込めた魔力のことじゃ。 これによって、炎の火力が強かったりするのじゃよ」


魔力濃度がなんとかかんとかと言っているがなんのことかわからない。

ただ、魔力が高いという一点だけがわかった。


「なんじゃ、分からんのか。 ん……どうわかってもらおうかのぉ」


語り部は顎に手を当てて一人唸っていた。

俺はエルフの神秘を使えるようになっただけでありがたいのだが、他にも何かあるのだろうか?


「よし、お主手を出せ」

「はぁ? なんでいきなり?」

「いいからほら」


語り部は俺の手を強引に握った。


「お主に今から魔力を流す、それをお主は押し返すように魔力を流してみせろ」

「あー、わかった」


考えてもダメだなこれ。 俺には分からん。 とりあえず魔力を流せばいいんだな。


語り部に魔力を流し始めると少し抵抗される感覚があったが、それ以外には全く感じることがなかった。


「ぬぅ、お主やめじゃ、やめ」


語り部が突然手を離した。

そして、その手が痛いのか手を振っていた。


「どうした」

「これでも分からぬか。 ならば、お主、御前試合に参加する気は無いかの?」

「御前試合?」

「そうじゃ。 御前試合はエルフの強いものを決める戦いじゃ。 一年間の間、エルフを襲う魔物を倒す長としているわけじゃな」


んー、多分俺が御前試合に出るって言ったらアリシアも出るって言うだろうなぁ。

そんでもって、アリシアが出てきたら絶対に勝てないからなぁ。

無理だな。 うん、これはダメだ本当に……。 って、弱気になってんじゃねぇよ! アリシアに勝ちたいんだろ? だったら、チャンスじゃ無いねぇか。 負けてもいい、いい勉強になるだろ。


「俺、御前試合に出ます」

「そうか、それじゃあこちらで手配する。 わしの名前はアールカドじゃ。 頼むぞ、小僧」

「小僧じゃねぇよ、グレンだ。 よろしくな、アールカドの爺さん」


お互いに握手をして俺は、書庫から出た。


♦︎


俺は『フォレスト』の宿の一室に帰ってきた。


「おかえり、どうだった」

「……ミルドか、アリシアはまだ戻ってきていないんだな」


アリシアが帰ってきていないことにホッとしながらもどうしようか少し考えていた。


「さて、どうしようか……」

「何がどうしようなのかしら?」

「わぷっ!? って、アリシアか、おかえり」

「ハハハ、わぷっって何! それ! 可笑しい! お腹痛い!」


アリシアは腹を抱えて笑いだした。

こいつ殴ってもいいよな? こいつのせいで変な驚き方してしまったからな。 このイライラをぶつけても文句は言われないよな。


「あ、そうだグレン。 私、御前試合? っていうのに出ることになったからよろしく」


ひとしきり笑ったアリシアは、いきなりそう言った。


「やっぱりお前も出るのかよ……」

「どしたの?」


小声で言った言葉はアリシアの耳に届くことなく、不思議そうにこちらを見ていた。


「いや、何も。 というか、お前の部屋隣だろ? 早く戻れよ」

「はーい、わっかりましたー」


そう能天気なことを言いながら部屋を出て行った。


「頑張らねぇとな、俺も」

「おー、頑張れよー」


気合を入れるために小さくガッツポーズをした。

それをミルドは、見ている本から目をそらすことなく適当に返事した。


♦︎


「爺さん! 俺にエルフの神秘をもっと扱えるように教えてください!」

「グレン、エルフの神秘って言うのは、お主たちの言い方だろ? エルフはそれを『魔法』と呼んでおるからな?」


次の日の朝、再び書庫に行きアールカドに頭を下げていた。

アールカドは、エルフの神秘の本来の呼び名を教えてくれた。 呆れた顔とともにだが……。


「グレンよ。 お主の場合、後はイメージの力を育てるだけなのじゃが?」

「それだけじゃダメなんだ! 魔法? の他にも色々と教えてくれないか?!」

「そこまで言うのであればわかった」


俺は頭が地面につきそうになるぐらいの深いお辞儀をして、頼み込んだことによって折れてくれたのか渋々了承してくれた。


「お主の場合じゃと、短剣を扱えるようになることと体術をある程度出来ることじゃろうな。 幸いにも御前試合にはまだ時間に余裕があるのじゃからな」

「はい! わかりました!」


俺は師匠が出来たような気持ちで返事をした。

この時の俺は、アリシアに近づくことしか頭になかった。 この後の俺の人生について大きく左右する出来事がもう少しで起こるということを知らなかったのだが。


「グレンは、誰かを目標にしたことはあるか?」


アールカドは、開口一番にそう聞いてきた。


「アリシアを、あー、えーっと、俺の仲間を目標にしてきました。 でも、一歩も近づけた気がしないのですけど」

「ふむ、ならば、そのアリシアを目標とするのをやめてみなされ。 目標とするのは、わしを目標にして見なされ、同じ魔法系を使う存在じゃ、お主が思う以上の効果が出ると思うぞ」


ニカッと笑いながらアールカドはそう言った。

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