何者ですか
ゼァーラに着いた俺たちを待ち受けていたのは、街がボロボロの廃屋やボコボコに隆起した街道が目の前にはあった。
『何があったんだ』
獣の街として栄えていた時は、獣人や人間が街道を行き交っていてものすごく活気溢れる街となっていたのが今は見る影も無くなっていた。
『くそッ! とりあえず冒険者ギルドに行くぞ』
「う、うん」
俺はロゼの肩に乗ったまま俺たちは冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドに入った俺たちを出迎えたのは異様な殺気と復讐心の混ざった視線だった。
これは、ロゼに向けられたものではなく俺に向けられたもののようだ。 つまり、ゼァーラは魔物にやられたということになるが、ここには迷宮ぐらいしかないはずだ。 なのに、俺を目の敵にするのは少し違うはずなのにここにいる冒険者は全員そのような目で俺を見ている。
しかも、ここにいるほとんどが歴戦の冒険者のように見えた。
『伝言板に書き込みをするぞ』
ロゼはコクッと頷き伝言板の方へと歩き出した。
ザッとその前を獣人と人の数名が行く手に塞がった。
「おい、ちょっと待てよ」
「な、何ですか?」
「お前、魔王軍のもんか?」
「どういう意味ですか?」
ロゼは本当に何を言っているのかわからないと言ったように聞き返していた。
「とぼけんな! お前が! 妖狐を連れている時点でお前は魔王軍のもんだろ!? あの森から出てきた魔物たちと一緒のもんだろ!?」
後半の方は叫ぶようになっていたが、一つ気になることがあった。 あの森とはここの近くにある見えない森樹精霊の森のことではないのだろうか。 という考えが一度思い浮かんだがすぐに消した。しかしーー。
「お前たちが生み出したんだろうが! 今まで近づけもしなかった場所に森を生み出したのはーー」
「え?……コンちゃん!?」
森を生み出した。 そう聞いた途端に俺はロゼの肩を飛び降り走っていた。
その後ろを走りながらついてくるロゼと冒険者たち。
俺が居なくなって得をするのは誰か。 それは、人じゃない、魔王軍だ。 何故! 何故!! 今の今まで気づかなかったのか! 俺以外の人はどうでもいいのか!? 違うだろ!? あの時、あの場所で俺は決めただろ! 俺は救える存在は全て救うと! それを忘れているなんてなんてざまだ! これで、賢者と呼ばれて良いわけはないだろうが!
俺は俺自身を罵倒しながらも街の中を走っていた。
「コンちゃん! どうしたの!」
『ッ!? ロゼか! 状況が変わった。 今すぐに樹精霊に会いに行く!』
「わかった! じゃあ、道案内お願いね!」
ロゼはそう言うと俺を抱き抱えて最大スピードで走り出した。
『ウオッ!』
「しっかり捕まっててよ! 振り落とされないように!」
そう言われて俺はロゼに抱き抱えられている腕にしっかりしがみついた。
♦︎
「ここ?」
『あぁ、本来なら結界が張ってあって入ることも視認することも出来ないが、今は結界が壊されている』
俺とロゼは森の中に足を踏み入れた。
森は魔力で満ち溢れていてすぐに魔力酔いしそうなほどだった。
『樹精霊! 聞こえているんだろ! 頼む! 出てきてくれ!』
『何者ですか』
俺たちの背後にものすごいプレッシャーを受けた。
ロゼは振り向いたら殺されるほどのプレッシャーを感じているだろうが、俺はそのプレッシャーに違和感を感じた。
『何者ですか』
『グレン・マーカー』
『ッ! 本物ですか?』
俺がそう言うと樹精霊少し目を見開きそう聞き返してきた。
『あぁ、本物だ。 この森に何があった』
『あなたに裏切られたのですよ、グレン。 いえ、あなたの身体を持った何者かにですか』
『そうなのか』
やはり、ここには俺の身体があったようだ。 だが、俺の身体には何かが住み着きゼァーラとここを今のような惨状に変えたと言うことだろう。
『えぇ、今までにいた。 樹精霊、樹人はすべて魔物に変えられて今残っているのは私だけです』
『嘘だろ!?』
樹精霊と樹人は、精霊に区分けされる存在でそれを魔物に変えるなど不可能なはずなのにそれをやってのけたということは、それをやってのけられるほどの力を持っているということとなる。
『それで、その子は?』
『ロゼ、俺の弟子だ』
『そうですか』
樹精霊はそう言うとロゼに近づいて行った。
そして、ロゼの肩に触れると樹精霊はロゼの中に吸い込まれるように消えて行った。
「ね、ねぇ、コンちゃん。 私の中に暖かくて包み込まれるような魔力が入り込むような感覚があるんだけど」
『あ、うんそうだな』
樹精霊のやろうロゼを羽を休める格好の場所だと思いロゼに強制契約を結ばせやがったぞ。
「すごい! 魔力が溢れてくるよ! それに、何でかな? あの木とあの花にものすごい嫌悪感があるんだけど」
『んじゃあ、あの木を燃やしてみろよ』
「え、いいの?」
ロゼは困惑した様子で聞き返してきた。
『聞くよりも見たほうが早いからな』
「じゃ、じゃあ行くよ」
そう言うとロゼは火属性の魔法を木に向けて放った。
『ギュエエエ!!』
「えっ!?」
『トレント、木に擬態する魔物だ。 で、あの花の方はアルラウネ、こっちも擬態系の魔物だ』
これはすべて魔物に変えられてしまった樹精霊たちだろう。 だが、おかしい。 この魔物は擬態に優れているだけの魔物のはず、こいつらが束になってもゼァーラをあのような惨状にできるはずがない。
今回の背後に魔王軍の幹部がいるだろうが……。




