あと少しで俺たちの勝ちだ!
もう少し、あと少しで湖だ。 ここを切り抜けられれば俺の勝ちだ。
「ヴゥゥ」
対する相手は低く唸り声をあげて狙いを定めていた。
『あと一歩が遠い』
「ヴゥゥモォ!」
もう何度目かわからない突進。 俺の体を貫かんと巨魔獣兵器の角が迫ってくる。
『だから! お前の突進は俺には届かねぇよ!』
今回はステップで回避したあと、巨魔獣兵器の身体にしがみついて突進を移動手段として利用してやった。
『良し! 湖まで出られた!』
湖の岸際に蒼と倒れているロゼがいた。
「ーーッ!? し、師匠! ロゼが急に倒れて!」
巨魔獣兵器が現れたのを見て、驚いていたが、巨魔獣兵器の身体に張り付いている俺の姿を見て焦ったように言ってきた。
『ロゼは、魔力不足による魔力欠乏症に陥っている! 蒼! お前でも魔力をロゼに流せるだろ! それで、ロゼを助けてやってくれ!』
「や、やってみる!」
そう言って蒼は、倒れているロゼに俺は、巨魔獣兵器に向き合った。
『二度もロゼの魔力を使っちまったからな。 あとで説教でもなんでも聞いてやんよ。 だからこそ、お前に勝たねぇとな』
巨魔獣兵器に向かってニヤッと笑って湖に向かって飛び込んだ。
『水魔術霧』
そう呟いて、俺は水の上に立ったときに俺と巨魔獣兵器を包み込むような形で霧を展開させ、周りからは俺たちの姿は見えていないだろう。
さらに俺は湖の中央に進んだ。
「ヴゥゥゥモォォォォ!!」
巨魔獣兵器が、一際長い雄叫びをあげて突進してくるのがなんとなくわかった。
「ヴゥゥモォ!?」
バッシャーーン!! と、巨魔獣兵器が湖に落ちる音が聞こえた。
良し! 掛かった! これでーードゴーーン!! なんだ!?
何かが爆発したか、爆発音は学院の校舎の方で聞こえた。
『オルバリオ……は無事だな絶対』
あの魔族は、過去のことは知っているが、今のオルバリオに比べるとまだまだ弱い。 魔王軍幹部の一番槍が強いことは重々承知しているが、それでも、成長したあいつは倒せないだろう。
『向こうは向こうに任せてこっちは! 水魔術『水流』!』
湖に落ちた巨魔獣兵器をさらに深い場所に追い詰めるために湖の水流を操り水深の深い場所に移動させた。
「ヴゥモ!……ヴゥモォ!……」
湖に溺れながらも、攻撃を仕掛けようとしている巨魔獣兵器を見て警戒した。
「ヴゥゥモォォ!」
『電磁砲!? この場所でかよ!?』
ここでは制約により地形を変えるほどの大魔法は打てないはずだが、巨魔獣兵器は電磁砲を打った。 つまりは、俺が魔法と思っていたが電磁砲は、魔術または呪術系統のものだったのだ。
ジュゥゥアァァ、と湖の水が干上がり湖の底に立っているようになった。
『あーぁ、俺が読み違うことは少ないと思ってたけど、今回ばかりは、読み違えたな。 でもな、俺は諦めないぜ? お前ぐらいのやつに諦めたんじゃあ、あいつには永遠に届かなくなるからな!』
その時、ザザァと、干上がった湖を降りてくる影が二つあった。
「コンちゃん、どうするの?」
「師匠! やってください!」
『そうだな、誰かが来るまで耐える!』
さっきの爆発音は、オルバリオとあの魔族との決着がついた証、じきにここに応援が来るだろう。
『さて、持久戦だ。 向こうの体力とこちらの体力。 どちらも限界に近いだろうがやるぞ』
おぉ! と二人とも意気込み巨魔獣兵器を睨んだ。
「ヴゥゥゥモォォォォ!!」
巨魔獣兵器は大きな雄叫びをあげて突進をしてきた。
『二人とも左右に回避!』
「「はい!」」
息のあった回避行動により、巨魔獣兵器は二人の間を抜けて行く。
『あと少しで俺たちの勝ちだ!』
「コンちゃん!」
『なんだ?』
「やってみたいことがあるの」
ロゼが珍しく自らやりたいことがあると言ってきた。
『何をやりたいんだ?』
「コンちゃんと私の固有魔法を合わせた魔法!」
『合技か……ん、わかった。 お前の『岩拳』と俺の『焔魔法』を合わせてやるぞ』
ロゼはすぐさまに『岩拳』の発動準備に入った。
『蒼! 俺とお前の二人でロゼに狙いがいかないようにするぞ』
「え! ホントにですか!?」
『当たり前だ!』
蒼があまり狙われないように巨魔獣兵器の気を引きながら、ロゼの準備が整うのを待った。
「準備出来たよ!」
良し! これで決める。 決まらなくても決まっても俺たちの勝ちだ。
『行くぞ! ロゼ!』
「うん!」
俺はロゼの肩に乗り同時に魔力をロゼからかなりの量をもらった。
『「燃えろ! 『焔岩拳』!!」』
燃えている岩の拳が巨魔獣兵器の身体に突き刺さった。
「ヴゥゥモォォォ!!」
巨魔獣兵器は、悲鳴をあげて倒れた。
「た、倒……した……?」
ロゼは、そう言って力尽きたように倒れた。
『ロゼ! 蒼! 魔力を頼む!』
俺がそう言うと蒼がロゼの元に駆け寄ってきた。
「ヴゥ……ヴゥモォォ!!」
『決まらなかったか!』
まだまだ元気だぞ! というように立ち上がってきたが、もう少しで倒せるのは見たらわかるぐらいに消耗していた。
俺も魔力欠乏症になりかけていて、魔法の一発も撃てそうにない。
『来いや! これで最後だ!』




