魔族……
蒼が水の上に立てるようになって三日、つまり、野外実習が始まって三日目でもある。 そろそろ、目標を達成しにいかないといけなくなってきた。
『さて、今日は課題をクリアしにいきます!』
「えぇ! まだまだなのに!」
蒼が駄々をこねるように言ってきた。
『あのな、期限まであと一日。 その一日で全部クリアできると思っているのか?』
「出来ない……」
ここはロゼが、しぼみながらそう言った。
『それじゃあ行こうか』
「「はーい」」
覇気のない返事をされて少しイラッと来たが、何事もないかのように先を進み出した。
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『よし! あと少しだな』
「今日一日特訓していても良かったんじゃないの?」
『まぁ、明日またやればいい話じゃないか?』
「まぁ、そうだね」
蒼の言葉に俺はそう言って、索敵で最後の目標を補足しようとしていた。
「ねぇ、いた?」
『んいや、誰もーーッ!? 何もんだ!?』
索敵には引っかからなかった。 目視で気がつくまでに時間がかかっていたら、三人とも死んでいたかもしれなかった。
「おや、完璧な隠密だったはずなのですがね……」
そいつは、パチパチと賞賛するかのように拍手しながら、隠れていた木の後ろから出てきた。
そいつは、シルクハットの帽子に黒スーツのようなものを着ていた。 そして、容貌はとても人とは思えないような容貌をしていた。
『魔族……』
「おや、知恵のある魔物ですか、ワタクシたち魔王軍に欲しいですね。 あぁ、魔王軍ていうのはですね、ワタクシたち魔族の最高たる王が厳選し選ばれた先鋭の魔族たちのことを言うのです」
勝手に饒舌に語り出した魔族だった。
「コンちゃん、魔族って物語に出るあの魔族?」
『あの魔族がなんなのかは知らんが、魔族であっている』
魔族なのかと震えた声で言われ、そうだと肯定した。
「おや、ワタクシたちは物語になる程有名なのですか!」
『お前は誰なんだ!?』
「おや、名乗ってませんでしたっけ? ワタクシは、魔王軍幹部が一人。 ガビュード様の一番槍、アルナでございます」
魔王軍幹部の直属の部下かよ。 クソ! この姿じゃなければ!
「おやおや、緊張しているのですか? 九尾殿よ。 あなたならば、魔王軍に入れるかもしれませんよ?」
『ケッ! 魔王の元に行く気はねえんだよ! 魔王も勇者もクソ喰らえなんだよ!』
「おや? 魔物でありながら魔王の言葉に何も感じないとは、不思議ですねぇ」
心底不思議な光景を見ているかのような不思議な目をされた。
『あんなあり得ないほど、気持ち悪い奴は嫌だな』
「ほー、気持ち悪いですか。 そんな言葉聞いたことありますねぇ。 確か、グレン・マーカー・マーリンでしたかな? あの忌々しい勇ーーおっと、危ない」
外したか、まぁいい。 これで俺について気づいてもらえればいいだけだからな。
「ハハッ、まさかのグレン・マーカー・マーリンですか! 良かってですよ! 二百年前の復讐が出来るってものですね!」
そう声を荒げてそう言うと、指をパチンと鳴らすと、とある陣が地面に描かれて魔物が陣から現れた。
『巨魔獣兵器!! 二百年前に完全に絶滅させたはずなのに!』
「フフッ、ワタクシの一族は、巨魔獣兵器製造に携わっていたのですからね」
『製造!?』
今、製造って言ったか、魔物を製造? 魔物が製造されていた?
「巨魔獣兵器が特別なだけですけどね」
巨魔獣兵器が特別? どう言うことなんだ?
「おしゃべりはここまでですね。 やりなさい、巨魔獣兵器」
巨魔獣兵器は闘牛のように立派な角がある魔物で、風、火、水属性の派生魔法の雷属性の魔法を使う面倒な魔物だ。
『ブモォォ!!』
『二人とも! 左右に回避!』
二人とも少し反応が遅れたが、ギリギリ回避が出来た。
その二人と一匹の間を電磁砲が横を通り抜けた。
『危ねぇ、電磁砲。 いきなり本気で来やがったか』
巨魔獣兵器にとっての最高で最強の攻撃電磁砲。 二本ある角の間で電力を貯めて、一気に発射する凶悪すぎる魔法の一つ。
雷属性の中でも、上位に入るほどの威力のある魔法だ。
「フフッ、楽しんでくださいね。 では、ここはこの子に任せてワタクシは本命のオルバリオ暗殺に向かいましょうか……」
『ま、待て!』
俺の言葉も聞かずに、アルナと名乗る魔族はどこかへと消えていった。
どこかへではなく、十中八九オルバリオの元だろうが、まずは目の前の敵をどうにかしなければならない。 問題はその後だ。
『ロゼ! 蒼! 湖まで走るぞ!』
そう言って、横を見ると腰を抜かして立てなくなっている蒼がいた。




