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8/20 海だ、帰るぞ


海、二日目。


朝起きたら窓に体当たりしていた虫はおろか、網戸に張り付いていた子虫どもも居なくなっていた。太陽が出れば消えるとかどこの吸血鬼なんだ。


ともあれ蟲のいない朝を迎えられて笑顔満点の私はさっそく部屋の下にある食堂で朝ご飯を食べて、すぐに海に向かった。


砂浜は昨日と同じく馬鹿みたいに熱く、さっさと持ってきていたたためるテントを広げて拠点を作った。それでもその下の砂はまだ暑いので数分は寝そべったりはできなかったが。


昨日よりしぼんでいた浮き輪を再び膨らませ直し、パンパンにして海に飛び込む。バシャバシャと水を掛け合ったり、泳いだりするのは楽しい。太陽の下、海の上。これ以上に充実したリアルが私の人生であっただろうか、あったとしても今は忘れてしまったことよ。


さぁ、その後は更にビート板のようなボディーボードなんていうモノを持ち出して、波に乗ったりした。サーフィンと違ってボードの上に立たないが、大波が来たらその波を胴体の下に潜り込ませたボードでキャッチして浜に向かって滑空するように爽やかに進むのだ。


その勢いと力強さは一度ハマるとちょっと癖になる代物だ。

元々泳ぐのが得意な部類の私からしてみれば、この遊びにはまるのはそう難しいことではなかった。


一泊二日の旅なので、海で遊んでいるとあっという間に幻想の時間に別れを告げるときが来てしまう。


3時くらいだろう。岩場を見たり、泳いだり、水の掛け合いをしたりで盛り上がった後にテントを片付けて近くの雑貨屋の前でタクシーを待つ。


タクシーを呼べる店らしく、呼んでもらって駅に向かう。

この地域のタクシードライバーさんがとてもコミカルで乗っている間に無線で別のタクシーでスマホの忘れ物が出たらしい。


その無線を聞いたドライバーさんが「忘れ物を見つけられないのはタクシードライバーのせいですな、本物のタクシードライバーは忘れ物は絶対に見つけますが」とダンディに面白いことを言っていたのを覚えている。


その後もドライバーさんは近くの美味しい飯の出る店を紹介してくれたりと気さくで親切だった。


駅ではお土産に何か買っていこうかと考えていたが、手持ちがそんなにないことに気づいてお土産は断念した。代わりに駅内にあった安い海鮮丼屋に入って私はその通りに『海鮮丼』を注文した。


マグロ、鯛、サーモン、その他地元でとれてそうな刺身がてんこ盛りに乗せられた丼。時間がなかったので、ゆっくり食べれたわけでは無かったが、とても美味しい逸品だった。あの海では魚が見れなかったから形が違えど、味わうことができて良かった。


10分程度で食べ終わると、すぐに予約していた電車が来る。


急いでキャスターバックを引っ張って、改札を通り抜けて入る。

指定席ではない9号車の自由席へ。


電車に乗ってからは田舎の風景に思いを馳せたりはせずに、自分の日焼け具合がかなりイっていることを確認したり、本を読んだり、疲れから寝てしまったりした。


数時間してやっと目的の駅に着く。嫌に懐かしくて、嫌に雑多なそこは紛れもなくもどかしいことに私の住むエリアだ。海のないエリアだ。


人は若い頃に鳥かごから出て自由に飛ぶ鳥になりたいなんて言うが、私は魚になりたいな。それもメガロドン級の襲われることのないまま海を堪能できる魚に。




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