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8/14 本屋と服屋と


今日は北海道に滞在できる実質最終日だ。

思えば北海道には長くいたような気もすれば、とても短かったような気もする。


思い出はたくさんできた。

画面越しの輝きよりも明るく神秘的なものを見れた。それだけでも満足なのに、山も見れた、吹き抜けの空も見れた、虫は嫌なのにたくさん見れた。川も下れた、親戚とトランプ大会もできた。


これ以上に幸せなことがあるだろうか。

私はとても幸せだ。


今日はいつにもまして目まぐるしい天気だった。

朝は快晴、昼に小雨が降ったと思えば、夕方には土砂降り、夜は冷え込みながらも月が綺麗に顔を出している。


こんなに狐のように化ける天気ならば、玄関先で大きな蜂が死んでいてもなんら不思議ではない。


今日は札幌の駅ビル内で本屋と服屋に行った。


あそこの駅ビルの本屋といえば5階の三省堂が印象的だろう。北海道らしい広大なスペース、図書館並のしっかりした本棚の分け方、カフェを内包したその作り。

素晴らしい、とても素晴らしい。


本好きであればたまらない某夢のテーマパークのような空間だ。


ただ、漫画コーナーでBL本の占有率が高かったのは苦笑した。女性向けの本が多いイメージ。

貴腐人の方もかなり多かったから需要と供給に合わせているんだろうが、一駅ビルの本屋がソレということは北海道は貴腐人まみれの可能性が高いな。


嬉しい報せだ。空想で空砲に近い報せだ。


その三省堂で今回私が買ったのは星海社から出版されている新訳クトゥルー神話コレクションが3番手『這い寄る混沌』だ。


なろう界隈でその手のフォークロイやミームに詳しい方ならば一瞬で分かる通りクトゥルフだ。


鍛えられている諸兄にはなんだその本か、となることだろう。


ただ有名なのはあくまで『中身』そのものであり、そこに対する編集者の『愛』こそ今回私が勧めたい理由なのだ。


内容はただ従来のラブクラフト作品の訳を載せているのではなく、登場する地理を地図で教えてくれたり、所々の難しい用語は話ごとの末尾に解説が載っていたり、本書の解説・資料部分はとても知識的に読み応えがあるものとなっている。


クトゥルーモノを書きたい諸兄には設定まで細かく教えてくれるこの本がオススメだ。

本自体は分厚いので読むことが苦手な方にはあまりお勧めできない。と思いきや、案外短編の集まりのようなモノなので毎日ちょっとずつ読んでいけば苦でもなかったりする。


ところで、私がどうしてシリーズ物の3番目を選んだのかといえばそれのタイトルが『這い寄る混沌』だったからだ。


『這い寄る混沌』それが意味するものは唯一、エジプトのファラオのようでありながらその実態はなく、無貌の神であり千の貌を持つ者。

つまりはーーニャルラトホテプ。またはナイアルラトホテプ。


呼び方も様々、クトゥルー神話の中でも知名度はクトゥルフに続いて高くその役割も大まかにトリックスターであるために掴みどころがない。


そんなニャルラトホテプの偶像を自分なりに頭の中で形にしたかったので、私は今回この『這い寄る混沌』を読んでより深くニャルラトホテプについて知りたいのだ。


コズミックホラーについてはまたどこかで触れよう。今回はここまでにして次に進む。


本屋でそれ一冊だけを買うと、私は余ったフリーマネーで服を買うことにした。


オリーブ色の服、癒しを与える涼しくて優しい服。


余りにも可愛らしいものだからついつい手が伸びてしまった。


地味な色ではあるので、私でも似合って着こなせてはいたから良かった。服に着られるとよく言うが今回は五分五分だったと思う。


どうせ誰に見せるわけでもないのだから、好きに着ればいいじゃないかとは思うが、目に入るだけで毒になりそうなコーディネートになってしまうのではないかと最近自分のファッションセンスを疑い出したのだ。


夏にアロハシャツを着ていいのはハワイの人間だけと言うのは本当だろうか?私はいつも楽だからアロハシャツを買って着てしまう。


色合いもおしゃれなんだ……私目線で。


そんな残念ファッションセンス(他称)なので今回は無難なモノを選べたかちょっとソワソワしている。

帰ったら真っ先にオリーブ色の服を着て、友人に聞いてみようと思う。


それで返事が良くなかったら、私は友人の服を全てアロハシャツにしてしまうかもしれない。


家に帰ると、私は夜ご飯に一つ腕を振るった。

代々伝わるーー曽祖母の代から伝わる由緒正しき料理、スープ系の簡単なモノを私も作れるので、それを作った。


簡単と言っても、材料に牛乳、エビ、玉ねぎ、青梗菜、ホタテ、エリンギなど様々な食材を使っているので栄養バランスはかなり良い方だと思う。


しかもそれをただ煮て、鶏がらスープの素を入れて味を整えるだけだから簡単なのだ。


それでも良くも悪くも料理人の手間を知らないと言うのは都合の良いことで私は15分程しか時間をかけていないにもかかわらず、とても重宝して食べてくれる。

ありがたいことだ。


そしてデザートには北海道特有の果肉がオレンジ色のメロンを食べた。

メロンといえば道民以外は緑なのかもしれないが、私はオレンジだ。メロンはどこをどう見てもオレンジ色をしている果物だ。


このメロンがとりわけ良い色をしていて、なおかつ美味しい。とても甘い。


そしてメロンを食べながらやるトランプというのはとても贅沢だ。これはもはや貴族の遊びなのでは……?


ちょっとした罪を作ってしまった気分、それに反比例するように優越感は雲のように膨れ上がった。


美味。美麗。美称。

美しく、麗しく、そして和やかに。


全ては大地の柔らかさと豊かさの元。

大地に感謝を、太陽に信仰を。


私がこうして幸せでいられるのも一重に周りの人のおかげであり、彼らを守る大地にも一端はあり、彼らを元気にする太陽にも一端はある。


感謝を。愛を。





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