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星の降る夜の下で

作者: 五月雨葉月

 動画を見ていたら、たまたまおすすめに出てきた流星群のライブカメラ。


 しばらくして、折角ならば自分の眼で観てみようと思い立った。


 ウッドデッキに座椅子を引っ張り出し、背もたれを目一杯倒す。


 大きな毛布を隙間なく身体に巻きつけて寝転んで夜空を見上げる。


 月と、雲と、東京の眩い街明かりはなかなか星を見させてくれない。


 寒さだけが募るなか、一筋、視界の端にはっきりと流れる白い光が見えた。


 流れ星を見るのは一体いつぶりだろうかと大して生きてもいないくせに思う。


 そんなことがどうでもよく思えるくらい、瞬く間に消えた光は美しかった。


 ライブカメラでは一分に何度も過ぎ去っていた星も、ここでは全く見えない。


 時折見えた気がした淡い光は、果たして流星なのか幻想なのか。


 私も答えを知らないし、誰も答えを知らないし、答えてくれる人もいない。


 ただ寒さに耐えて、月や街灯が見えぬように毛布で壁を作っているばかり。


 いつ来るか誰も何も知らない一筋の光の矢をただ待つばかり。


 漫画やアニメでは雨のように降りそそぐ星々も、私の目には映らない。


 幻想と、幻想と、幻想と、たまに見えたかもしれないという思いだけ。


 空高く舞う飛行機で、雲を突き抜ける山の頂で、全てを見下ろす宇宙で。


 この流れ星はどう見えているのだろうか。


 雨のように星がふっているのだろうか。


 誰も何も答えてはくれない。


 身をよじって寒さに耐えて、ふと油断したすきに流れる別の一筋の光。


 逆に意識をしすぎると、次の光の矢を待ちきれなくなる。


 待てど待てども見えないけれど、見えないところにたくさんの星がいる。


 そう思うと、なかなか見えなくても少し気が楽になった。


 見えなくても、見えている。


 そう思えば無理に見ようと思わなくなる。


 やがて寒くてやっと身体を起こしたとき、時は一時間も過ぎていた。

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