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《 願い 》
誰かの、声が聴こえた。
誰かに、呼ばれている気がした。
水中を漂う感覚。それは、懐かしい安心感。
深い意識の底の中、きっと何よりも恋い焦がれた。
そう。
何よりも、幸せを願った。僕じゃない誰かの。
誰?
君は、
僕は、
⋯⋯⋯⋯。
⋯⋯泣いてる?
あぁ、
そうだ。
僕は⋯⋯ーー。
ねぇ⋯⋯
⋯⋯お願いだ。
泣かないで、ーー⋯⋯。
ーーただ、君の笑った顔が見たいんだ。
お願いだ。もう一度。
もう一度だけ。
それが例え、許されぬ罪だとしても。
犯した禁忌はもう拭えない。
後戻りは、しない。