魔皇、事件の詳細を知る
ヴァンパイアがいた洞窟から魔力探知を行い、ヴァンパイアの王の魔力を察知した後、転移魔法を使った。
そこには、昔から仲良くしていたヴァンパイアの王、イザベラが倒れていた。
「人間が襲ってきた?どういうことや」
タナトスの血を飲んだことでほぼ完治したからか、スっと立ち上がったイザベラ。
その顔は、怒りとも悲しみともとれる複雑な表情だ。
「私にも理由まではわかりませんが、襲ってきたのは真でございます。半年程前でしょうか、彼らは我らの住処に現れ、唐突に襲ってきたのです」
半年前?イザベラから人間が襲ってきたと話を聞いた時は、人間の王の娘が拐われたことで反撃に出たのかと思っていたが、それとは関係ないかもしれない。
「襲ってきたかて、イザベラ達やったら適当にあしらえたやろ?」
人間界に滞在しているヴァンパイアは、魔界のヴァンパイアに比べれば確かに魔力は低い。しかし、それは比較対象が強力であって、彼らが弱い訳ではない。ましてやヴァンパイアは長年生き続けることでほの力を増すのだ。
ヴァンパイアの王であれば尚更だ。
「魔道士のような者が、オーブのような物を持っておりました。そのオーブが光った瞬間、何故か力が抜け、魔法も出せなくなりました。多分それが原因かと」
どんな魔道具かはわからないが、さしずめ魔族の力を制限するか、魔法自体を制限するものか・・・
「なるほどな。あと、他の王、アルヴィとザラミアはどこや?魔力見つからへんかってんけど・・・」
全てを言い切る前に、嫌な予感がしてしまった。
「・・・二人とも、殺されてしまいました。話し合いをしようとはしてたみたいなのに、一方的に切り刻まれたようです。私を捕らえた兵士が笑いながら言っておりました・・・」
イザベラの声と身体が震えている。
なんてことだ。俺との約束を守り、話し合いをしようとした優しい子達を、切り刻んだ。
誰よりも、イザベラは悲しみ、憤りを感じているだろう。
アルヴィはイザベラの大切な弟だから。
「・・・すまん。俺の約束を守ろうとして、彼らは倒れてしまった。ほんまにすまん」
俺はただ、頭を下げるだけしか出来なかった。
魔皇ともあろうものが、家族を無残に死なせてしまった。
適当に仕事をしていたつもりもない、人間界にも、魔界にも、しっかり目を通してきたつもりだ。
なのに、何故こうなった。
俺はただ、皆に笑って生きて欲しかっただけなのに。
「おやめください、タナトス様。我が愚弟は、最後に私に念話を飛ばしておりました。タナトス様が必ず助けに来て下さるから、大丈夫だと。我らは幸せだったと、生きて伝えて欲しいと言われておりました。弟のために、どうかお顔をお上げ下さい」
涙を零しながらも、彼女は微笑みを見せた。
誰よりも傷つき、怒っているであろう彼女が。
「・・・イザベラ、アルヴィ、ザラミア。ヴァンパイアの王であり、そして我が家族よ。魔皇たる俺の約束を、よう守り切った。お前達は、俺の誇りや。悔やんでも悔やみ切れんやろうけど、どうか安心して眠ってくれ」
健気で優しい彼らは、きっと素晴らしい魂に転生出来る。たとえ魔族でなくとも、俺は彼らに再会出来るのを心から楽しみにしている。
「イザベラ、一緒においで。あいつらに、俺の背中を見せたらなあかん」
怒りにより、封印から溢れ出す魔力を抑えることもせず、俺は檻をぶち壊した。
魔皇、反撃
次回、タナトスが暴れまくります!




