魔皇、ヴァンパイアの王に会う
「おかしいな。二、三年前はもっとしっかりしとったし、皆僕のことも知っとった。まだ若い子らやからか?」
ヴァンパイアとは、定期的に交流をとっていた。
人間界だけでなく、もちろん魔界にも生息するヴァンパイア。魔界には、人間よりも魔物の血や、魔族の血の方が美味しいと言うものもいれば、そもそも吸血を必要としない程強力なヴァンパイアも存在する。
しかし、人間界のヴァンパイアは人間の血の味を好む者ばかりだ。
だからこそ、俺は定期的にヴァンパイアの王の元に挨拶回りをして行き、無駄に狩りをするのをやめさせた。
無実の者を襲うことだけはやめさせたかったから。
「ヴァンパイアにも王がおるはずです。その王はどこにいるのでしょうか?」
アイラがわからないのも無理はない。基本的に、魔界の王とヴァンパイアの王は絡む機会がない。彼らは礼儀を重んじる傾向があり、下手に無礼を働けば、同族と言えども容赦なく狩るからだ。
「人間界のヴァンパイアは、三人ぐらい王がおったんよ。全員知り合いやねんけど、ここに来てからその三人の気配がないんよ」
三人は、俺が人間界に降りるだけで気づき、真っ先に挨拶に来る。彼らが魔界に帰ってきた際には、俺が迎えに行くし、何より俺に対して忠誠を誓ってくれていた、大切な家族だ。
その彼らが来ないこと自体が、そもそもおかしいのだ。
「1回探してみなあかんなこれは。嫌な感じするさかい」
自慢ではないが、この類の予感は外れたことがない。
ほんの少しだけ、魔力を解放し、人間界全体に魔力探知を広げた。
しかし、三人の魔力はなく一人の魔力だけ見つかった。
「おった。皆行くで」
三人を魔力のオーラで包み、転移魔法で移動する。
転移した先は、牢獄だった。
「なんやこれは・・・なんでこんなとこに・・・イザベラ、大丈夫か?何があったんや?」
牢獄の端に、血だらけのローブを着た女性が横たわっていた。
ヴァンパイアの王の一人、イザベラだ。
「ま、魔皇、様・・・本日は、お迎えに、あが、れず、申し訳、ありませ・・・」
息をするのも苦しそうだ。女性と言えど、ヴァンパイアの王だ。そこらの人間や魔族に勝てるはずがないし、そもそも傷もつけられないというのに。
「そんなんええねん。イザベラ、とりあえず傷治すさかい俺の血飲み。」
魔皇の血は特別だ。体内に取り込んだ瞬間、莫大な魔力に包まれ、傷や病は治り、呪いは消滅する。
「そん、な、お、畏れ多いことなど、出来るはず・・・!?」
イザベラの口に、自らの指を入れ、犬歯に無理やり指先を刺す。
普段は強力な障壁に包まれているが、今は解除している。それでも強固な身体なので、弱体魔法を何重にも重ね、指を切らした。
血が流れているのがわかる。
血を口にした瞬間、青いオーラがイザベラを包む。
オーラが消えると、イザベラは震えながら起き上がった。
「こ、これは・・・なんという艶のあるお味・・・流石魔皇様ですわ・・・」
うっとりした顔で、見つめてくるイザベラは、なんとも言えない魅力がある。
しかし、今はそんなことはどうでも良い。
「元気になって良かったわ。イザベラ、何があったんや?ゆっくり一から説明さてくれるか?」
イザベラは頷くと、ゆっくりと語り出した。
「はい。私にも理由はよくわからないのですが・・・」
「かまへん、わかるとこだけでええさかい」
「・・・人間が我々を襲って来たのです」
ヴァンパイア、人の手に落ちる・・・




