※タイトルは最後に読んで欲しいので最後に書きます
あくまで私の「イメージ」で書いた小説です。
考え方は違う方がたくさんいらっしゃると
思いますがその辺はよろしくおねがいします。
登場人物の年齢は特に考えていませんが
12歳以下でお願いします。
途切れ途切れに鳴っていた音を止めると
部屋には時計が進む音だけが響く。
真後ろに位置する時計を見ると
その周りに広がっていたのは闇。
少女は冷え切った体を震わせて俯いた。
もう一度見上げれば、針が進んでいた。
静まり返った部屋の中、少女が動きを止めた。
「どうしたの?」
はっとしたように振り向いて見れば、
少年は少女を見上げていた。
安心したように息を吐くと、視界が濁る。
少女が小さく頭を振り、
下ろしていた腕を持ち上げると
腕についていたものがしゃらしゃらと音を立てる。
持っていた笛に口をつけると、少し冷たかったが
すぐになれるだろう、と
少女はまた笛を吹き始めた。
それは吹くと言ってもそれは音にはならず、
息が筒を通って抜けていくだけのもの。
だけど指使いだけは正確で、
よく聞けばそれは美しい曲だった。
しかし時折出る音は澄んだもので、
少年はそのたびにちらりと少女の方を見た。
しばらく、かすれた笛の音と
紙に当たって磨り減る鉛筆の音が続いた。
そしてまた途切れる笛の音。
今にも消えそうに少女は言う。
「忘れちゃった・・・・」
記憶を探って軽く頭を叩いてみても、思い出せない。
美しいもの、正しいものの象徴であるはずの白も
今はわずらわしいだけだった。
ことん、と少女が笛を置けば
それに弾かれたように、少年が顔を上げる。
「君が大人になったら
きっと素敵な演奏者になると思うよ」
少年は体を起こす。
そうすれば2人の視線はほとんどぴったり交わった。
少年は俯いて、冷えた指先に息を吹きかけた。
真っ白なそれのせいで、少年の表情は見えない。
少女は少し頬を赤らめて、
お礼を言う代わりに
少年の暗号がびっしりならんで黒ずんだ紙を見て、言った
「あなたが大人になれば
きっと有名な作家さんになるわ」
見ればもう白い息は消えて、
少女の瞳には照れたように微笑む少年が、
そして少年の瞳にはそれを見て微笑む少女が映った。
「今日はもう、眠ろうか」
気がつけば月が高くなり、部屋に注ぐ光は
僅かになっていた。
「そうね」
どちらからともなく目一杯に手を伸ばし、
互いの指先に少し触れる。
「おやすみなさい・・・・いい夢を」
「君もね。・・・おやすみなさい」
霜が降りるほどに冷えた部屋に
しばらくしゃらしゃらと音が鳴り、
そして静寂に包まれた。
タイトルは「奴隷小屋」
わかりづらいですが
2人は部屋の端と端に鎖で繋がれています。
手を伸ばせばぎりぎり指先が触れます。
奴隷です。
それっぽい表現をいくつかしておきました★
お時間あれば探してみてください