罪
私は命を司る神レイル。
魔法でライ達を復活させた張本人であり、罪を犯した裁かれるべき神だ。
犯した罪はもう二度と許されることのない禁忌であり、よって私はここにいてはならないはずなのだ。
なぜ堕天させられないのか。それは私にもわからない。
今から私が犯した罪を話すとしよう。
私はある日、地上界の本を読んでいた。
鳥が鳴き、太陽の光が指す中、あいつはその雰囲気を無視して、大慌てで走ってきた。
「おーい!レイルー!」
「あら、ドロクじゃない。どうしたのそんなに慌てて」
彼はドロク。人の生と死を司る神であり、魂を現世へ案内し、霊を迎えて輪廻へ導くという仕事をしている。私の幼馴染みだ。
「大変なんだ!」
「大変って、何が?」
「僕は、堕天しなければいけないかもしれない」
私は言葉を失った。
「どうして!?」
「多分だけど、僕は殺される...魔法の本を探していて、間違えて禁書に触ってしまったんだ」
禁書には人間の創造方法やこの世界を滅ぼす呪文などの機密情報が記されており、迂闊に触ることは許されない。触ると死刑だ。
こうなってしまった以上、やるしかない。
「わかったわ。じゃああなたを輪廻にのせる」
「え...?だって現世への神の召喚は」
「ええ、神の禁忌にあたる行為だわ」
「もし僕を輪廻にのせたとして、僕は今のままでいられるかは分からないし、君だって天界を追い出されるかもしれないんだぞ!?そんなのは危険だ!」
「ええ、分かっているわ。でもあなたのためになりたいの」
今までずっと助けてもらってきたのだ。魔法の使い方を教えてもらったり、困った時は助けてくれた。彼の力になるなら今だ。
「いくわよ!」
「ああ!ありがとうレイル、また100年後に会おう!」
私は彼を、輪廻にのせた。
彼は現世でライという名前だ。そして、彼に私に関しての記憶はない。おそらく輪廻の途中で飛んでしまったのだろう。
天界へ引き戻せばなんであろうと記憶は戻る。
彼が100年と言ったように、禁書に触れた罪の時効は100年だ。彼が死んでも100年は輪廻にいなければならない。だから復活させる。おそらくこれからも彼が死ぬたびに復活させるだろう。
しかし、輪廻から脱出できる確率は50%だ。その確率は現世にいるライの来世に対する思いが強いほど下がる。
ライには悔いなく生きていてほしい。そう願うばかりだった。
禁忌を犯した私は、本来なら75年間天界を追放、堕天するはずなのだが、何故か堕天を要求されなかった。
だから私はこうして天界にいるのだ。
そして、今日もライを見守る。
ライは今日も楽しそうにネウと話していた。