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キメライウ2  作者: クォート
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冬になり寒くなってきた。

吐く息は白く淀んで昇っていく。

早朝の川からは温度の差のせいで霧が立ち込めていた。

「ふう。寒くなってきたね、ライ」

「うん、寒いね」

当たり前のことを当たり前に話しただけだが、その一言でも少し体が温まる気がした。

学校までは歩きで5分ほどで着く。

そのあいだの会話の場面だった。

「そういえばさ、ライは私が死んだあとどうしたの?」

「え?ああ 、うーんと...」

なんと説明すればいいのだろうか。自殺したなんて言うのは恥でしかない。

「えと...ちょっと交通事故で死んじゃった感じかな」

「あ、そうなんだ。それは運がなかったね」

いや、違う。僕は真実を述べるべきだ。

たとえ時間遅れでも、言わなければならない。嘘を言ってからでも、言い直さなければならない。

その何にも負けない思い、つまり決意で口を動かした。

「...ごめん、さっきのは嘘だよ」

「え?...ああ、そうなんだ...じゃあ、言いづらいだろうけど、本当は?」

「...自殺した」

ネウは、ああ、やっぱりなという顔をしていた。彼女は怒りもしなかったし、泣きもしなかった。

僕はそれから、夕方までネウに口を聞けなかった。

いろんな思いが交錯した。それは家に帰ってからも続いた。

話してよかったのか、嘘を貫けばよかったのか。

僕が悪いのか、彼女が悪くないのか。

もしかしたら、もっといい選択肢があったんじゃないか。

考えるだけ無駄だなんてわかっていた。しかし、考えるのを止めることが出来ない。

「あのさ!」

「うぇ!?」

いきなりネウが話しかけてきたので、変な声が出た。でも今まで押し黙っていたネウは笑ってくれた。

笑いが収まったようで、話を続ける。

「私はね、別に自殺したことは悪いことじゃないと思う」

「なんで?だって自殺だよ?

命を捨てる恥ずべき行為だよ」

「違うよ。それだけあなたが私を大切に思ってくれてたってことでしょ。その私への思いが少し負の方向に傾いちゃっただけだよ」

「そうなのかな」

「そうだったんだよ」

「違うんだ...僕は...僕は...」

僕はその場で泣き崩れた。


僕は「いきたかった」んだ

怒り。不満。怠惰。憧れ。後悔。虚無。

僕はすべてをぶちまけた。

泣いているというよりは叫んでいたかもしれない。自殺したときの吐き気、めまい、頭痛の感覚がぶり返し僕を狂わせた。

もう何もかもわけがわからなくなっても、僕は泣き叫んだ。ネウは何も言わずに僕を抱きしめ、一緒に泣いてくれた。

現実ほど非情なものを、僕は知らない。

僕は、月に狼が吠えるように、空虚に向かって泣いた。

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