第6話 初収穫。そして宴へと
「どう、ですか?」
「うん! これなら大丈夫そうだ! よくここまで育ててくれたな!」
「「ぃぃぃやったぁーーー!!!!」
薄い青銀色の髪を持つ少女と、ベージュの髪と犬耳と尻尾を生やす少女が手を合わせて喜んでいる。
「よかったな。皆よく頑張ってくれたよ。俺も嬉しいよ」
「この『男爵芋』、大切に食べますね!」
とシル。
「わ、私も!」
とフィア。
この2人は何をしていても本当に可愛いなぁ。村でもモテモテなんじゃないのか? お父さん心配になっちゃうな!! 悪い虫がつかないように見張ってやろうか!!
……なんて古臭いことは言わないでおこう。この2人が優しくても言った瞬間俺の頬は腫上がり、腕かどこかに咬傷ができるだろう。
あれ……フィアって牙とか犬歯とかあるんだろうか……。……気になる事が山ほどある……今度色々質問してみようかな、もちろん自室でなげへへ!
と言っても……
「今回育てた『男爵芋』はちゃんと保存すれば2,3ヶ月持つし、頑張れば半年近く持つ。それに今回は村全体で作ったから収穫量は十分だ! それにまた作るしね」
「そ、そんなに持つんですか? す、すごい……これなら寒い時期でも安泰ですね!」
「え、シルこのあたりって冬があるの?」
「はい、もちろんあります。この地域は四季が全てありますよ?」
「し、四季って春夏秋冬?」
「もちろん」
な、なんですとぉー!
この世界にも四季が……!!盲点だった!!
四季がなかったら他の食べ物どうしようかと思ってたのよ……良かった……。ほっ。
「サカモト様の故郷にはないの?」
「お、おおフィア、もちろんあるぞ。お、俺の故郷は結構遠いところでな、こっちにもあるとは思わなかったんだ」
「そっか。いつか、行ってみたい……かも」
「お、おぉ、いつか機会があればな」
そんな機会はきっとこないだろう……だけどそのうち日本みたいな世界があるって、教えてあげたい。
色んな食材があって、料理があって、色んな人が、土地がある。世界は広いんだって教えてあげよう。
「ほら! もう収穫が出来る! 皆で収穫したいから、村長に伝えてきてくれないか?」
「「はーい!」」
「よし! いい返事だ! 行ってこい!」
2人の少女は踵を返し村長の元へと向う。
※※※※※※※※※※
眼前には村中の人々が集まっている。
人族と少数だが獣族の姿が。
前よりも、皆少しふっくらしている気がする。うん。いいことだ。
しかしこれは『種芋』を植える前にも見た光景だ。
前回皆の前で大声をだして演説チックなことをしたけど、実はめちゃめちゃ緊張してたんだよな。
さすがにまだ自信満々に出来るとは言えないけど……領主だしやるしか無いんだよなあ……。
っし!
頬を「パンっ」とたたき演説台(自作)の上に立つ。
「皆! 今日も忙しいのに集まってくれてありがとう!! もう聞いているかと思うが今日!『男爵芋』が完成した! だから、今日は『収穫祭』だ! 『男爵芋』全てを掘り起こすのは中々大変なことだが、汗水垂らし、自分たちの手で植え、育て、収穫する! ここまでしてやっと、食物を育てる大変さを感じる事が出来るんだ! だから、皆手伝ってほしい! そしてこれからも村を盛り上げていこう!!」
「「「「「うおーーーーー!」」」」
野太い歓声があがる。
ちょっとびびるわ。
「ほんとにサカモト様がきてくれてよかった……」
「おかげで飢え死にする者もいなくなったのぅ……」
など涙ぐむものもいる。
ちょっと泣きそうになるよ?
しかしまだこれで全てではない。
「皆、これまで俺の言う事を守りちゃんと育ててくれてありがとう!! さあ収穫に行こう!……とその前に!」
皆がなんだろうとどよめきがあがる。
「俺は、今日は『収穫祭』といったはずだ! その名の通り『祭り』だ! 今日は収穫が終わった後にここで『祭り』を開く!」
「ま、祭り?」
「ここで……?」
疑問の声が上がる。
「皆にはこれまで『男爵芋』を作ってもらったが、俺がこの日の為に独自で育てていた【野菜】や【果物】がある! それらはこれから皆に作ってもらう事になるだろう! だからその前に皆に食べてもらいたい! 全て俺の方で準備するから、思う存分働いてくれ!!」
「うぉー!」
「領主様ー!」
「サカモトさまー!」
「かっこいいぞー!」
「三枚目ーー!」
おい誰が三枚目だ。誰だ今言ったやつ出禁にするぞ。二枚目と言え。
演説を締めくくり、皆持ち場の畑へと早々と向かっていった。
「ふー、疲れたなー」
「お疲れさま……私も手伝う……」
「お、おお、いいのか? 皆芋掘りしてるぞ?」
「大丈夫。私の区の畑は人たくさんいるから」
なぜかフィアが残っており手伝いを申し出てくれた。
めちゃめちゃ嬉しい。
まだ簡単な食べ物しか出せないとはいえ、500人分を1人ではさすがに大変だからな。
「シルも呼ぼうか?」
「シ、シルはおじいちゃんいるから、一緒にやるって言ってた! うん……言ってた……」
おいなんで最後弱気なんだ。
まあいっか。ありがたい。
「そっか。じゃ、今日は手伝ってくれな!」
「うん!」
今日も顔がなんか赤いな。最近いつも赤い気がするけど気のせいかな? もともとこんな感じだったっけ?
「よし! じゃあ屋敷に戻るとするか!」
「うん!!」
耳をピンと立たせ、尻尾をぱたぱたと振りながら俺の横についてきた。
うん! 今日も可愛いな!
この時1人の獣の少女が小さくガッツポーズをしていたのには、誰も気づいてはいなかった−−
もう少しで第1章が終わります!