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第3話 お芋様、至極幸せ也。

 



 ドタドタと屋敷へ入り、広間の掃除をしているフィアを横目に厨房へと向かう。



「あれ、シルじゃないか。この厨房はもう使えるのかな?」


「はいっ! さっき終わったので、いつでも使えますよ!」



 シル、なんて出来る子だ! 大好きだ!



「シル頼みがあるんだけど、火をつけてくれないかな?」


「わかりました!」



 そういうと手慣れた様子で薪に火をつけてくれる。

 現代社会の産物であるガスコンロに慣れているため今の俺にはつけられない。



「ありがとう! あと確か塩があったよな? 良かったら持ってきてくれないか?」



「お塩ですか? わかりました。一度家に帰るのですぐ取ってきますね!」



 そういうとシルは屋敷を後にする。

 ああ、小走りをしているシルもかわいいなぁ。

 っといかんいかん。


 鍋に水をいれ火にかけてっと。



「よし沸騰したな。ここでこのお芋様を投入します」



 くつくつと鍋の中で転がる芋をじっと見る。



「ここだっ!」



 フォークで芋を刺し、茹で具合を確認する。



「よし、芯まで火が通ってるな! 上出来だ!」


「わあ〜、なんだか良い香りがします!」


「おお、シル。早かったね」



 シルが塩を持ってきてくれた。

 聞く所によると近くに海はないらしく、岩塩を山でとってきているらしい。



「ありがとう。ちょっとフィアも呼んできてくれないか? 2人とも美味しいものを食べさせてあげよう!」



 それを聞いたシルは目を輝かせ厨房を後にした。


 その間に俺は茹で芋を皿に盛りつけ、3人分をテーブルへ配置する。



「サカモト様! フィアを連れてきました!」


「おう! じゃあテーブルに座ってくれ」



 返事をしたシル達は席へ着き、目をぱちくりさせている。



「あの、サカモト様これは……イモ……でしょうか? いつも食べているものより大きいですが……」



 美味しいものって言ったから別の物を想像しちゃったかな?

 まあでも、食べてみればわかる。



「ああ、これはイモだ! 正式には男爵芋っていうんだがな」


「ダンシャク……?」


「うむ。それを茹でたものだ」


「サカモト……様。私たちイモならいつも食べてますよ……」



 フィアがちょっと怪訝な目で『男爵芋』をみている。



「まあまあ一度食べてみてよ! 冷める前にねっ」



 そう促すと2人ともフォークを手にする。

 シルはキラキラした目で。フィアは特に感動はしていないみたいだ。

 でも、こういうのは期待値が低いほどいいからな……。ふはははは。



「あっ! これを忘れちゃいけない! 俺らの糧になってくれる命に感謝をするんだ。2人とも真似してくれ」



 サカモトは両の手のひらを合わせ、



「いただきます」


 2人もそれを倣う。


「「いただきます!」」


「うむ」



 シルが茹でイモを口に入れる。



「んっ! あっ! ホ、ホクホクふぃてふー!



 フィアが茹でイモを口に入れる。



「えっ、なにこれ……甘い……っ!」



 2人とも嬉しい反応だ! その美味しそうに食べる姿を見たかったんだ! 農家冥利に尽きるってもんだ!



「どうだ2人とも、美味しいか?」


「「美味しいですっ」」



 2人が声を合わせ丸々1個ずつペロリしてしまう。



「なんでこんなに美味しいんですか! いつも食べているお芋は味がしないしパサパサしているのに!」


「こんな美味しいお芋初めて食べたわ……」



 各々感想を口にする。



「まだまだあるぞ? もっと食べるか?」


「いただきます!」

「食べるっ!」



 2人とも元気がいいことで。

 普段ちょっと大人しめのシルのテンションが高い。

 フィアは耳をぴくぴくさせて尻尾を左右にぶんぶん振っている。心なしか顔が赤いな可愛いな。



「ほれ! 食べな!」



 おかわりを差し出すと勢いよく食べ始める。



「そうだっ、次はこの塩をかけて食べると良い」


 2人が塩をかけ、再び食べ始める。



「ん〜! そのままでも十分美味しいのに、お芋の甘みとお塩のしょっぱさがちょうど良くていくらでも食べれますっ!!」



 シルは時折感想を口にしながら食べている。

 一方フィアは「はむっ、はむっ」と黙々と食べ続けている。



 2人が満足げなのを確認し、俺も食べることにする。



 うむ。初めての地で作ったにしては上出来だな。

 欲をいうならバターがあるといいんだけど……もしかしたら今後作れるようになる。かも?



「サカモト様、これは一体なんなんですか?」


「ああ、これはさっきも言った通りイモだよ。正確には【男爵芋】って種類だけどね。シル達がいつも食べているのもイモだ。一緒だが種類が違うんだ」


「そうなんですね……。これはサカモト様が故郷から持ってきたものでしょうか?」


「そ、そうだな。俺の故郷から持ってきたんだ。この他にも色々持ってきたからこれから村のみんなで作ろうと思ってる」



 とりあえずは簡単にだけど、今やろうとしている事を伝える。



「すごいっ! 私も出来る限り協力します! やらせてくださいっ!」



 シルがやる気になってくれたみたいで良かった。

 これから村の皆にも伝えないといけないけど……でも、これが第一歩だな。



「もちろんだ。今この村には食べるものがあまりない。そしてとても美味しいと言えるものではないし、栄養だって全然ない! このままだと村の皆は死んでしまうかもしれない……。だから俺が来たんだ。時間はかかるかも知れないが、俺たちで、俺たちの手で、この村の皆を元気にさせるんだっ−−」




「っ! わ、私もっ! 私も手伝うっ! 私にも作り方教えて!」



 お、意外にもフィアが反応したな。ちょっと俯いているからなんとなくだけど、恍惚の表情を浮かべて俺を見ている。ような気がしないでも無い。

 もしかしてチョロインか。そうなのか。……ってんなわけないよな。会った時から俺の事あんまり好きじゃないっぽいし……。





 ま、とにかく、これがこの村のスタート地点だ!






 ※※※※※※※※※※






 最初は全然行きたくなんてなかった。



 でも村長の命令だから仕方なく領主様のお屋敷に向かった。

 ……あとシルに迷惑かけたくなかったのもあるけど……。



 いきなり村の領主だって言うし、へんな服を着ているし、人間だし、しかも男だし……。



 私を見るなり耳と尻尾をじろじろ見てくるし。シルの事も変な目で見てるし、耳と尻尾じろじろみてくるし。

 ……大事な事だから2回言った……。



 でもいきなり私たちに美味しいものを食べさせてくれるっておかしなこと言って、馬鹿みたいだと思った。

 こんな土地に美味しいものなんてあるはずないのに。



 でも違った。



 見た目は村のお芋よりちょっと大きかったけど、お芋はお芋だ。

 そう思ってた。



 でも一口食べた瞬間自分の考えが間違っていたと思い知った。



 この人は嘘なんていってなかった。



 本気でこの村の事を考えてくれているのかもしれない。



 いつかきっと、この村の皆を救ってくれるかもしれない……。



 心からそう思う事が出来た。





「もちろんだ! 今この村には食べるものがあまりない。そしてとても美味しいと言えるものではないし、栄養だって全然ない! このままだと村の皆は死んでしまうかもしれない……。だから俺が来たんだ。時間はかかるかも知れないが、俺たちで、俺たちの手で、この村の皆を元気にさせるんだっ−−」





 心臓がどくんとはねた。

 鼓動が速くなる。

 なんでだろう。顔まで熱くなってくる。尻尾が震える。耳が伸びる。

 止まれ止まれっ。

 顔をあげられない。

 私、どうしたんだろう……。

 こんなの初めてだ。




 私、この人の事−−。








やっと女の子出せました……。

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