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第32話 帰還。





荷馬車に腰をかけている青年を見つけ、声をかける。



「アルフ、終わったか?」


「ちょうど今終わったところです。かなり多いですから少し時間がかかってしまいましたね」


「お疲れ。終わったばっかで大変だろうが少し休憩したら次は資材を運び入れよう。建築士達の荷馬車はすでに王都の入り口付近で待っているらしいからな」


「そうでしたか。それじゃあサクッと終わらせて帰りましょうか。……それにしても疲れますね〜久しぶりに冷たいシュワシュワの何かを飲みたいですね〜」


「わかったわかった。ちゃんと礼はするよ」


アルフがちらっと俺に視線を移し、おねだりをしてくる。可愛くないっつーの。

最近アルフはおねだりを憶えたのか、時たま見返りを求めてくることがある。こいつ俺が領主っての忘れてるよな……全然いいけど。


10分ほど皆を休憩させて次は資材を運び入れる。

さっきは国王様と話していたから手伝えなかったけど、今回は俺もちゃんと手伝う。もちろんシル、フィア、ヘラにも手伝ってもらった。

連れてきた村人や衛兵達が石材や木材など様々な資材を汗を(にじ)ませながら運んでいるが、皆一様に頑張ってくれたためすぐに終えることが出来た——。



「——よーし! 皆お疲れ! じゃあ帰るか!」



気休め程度だが後一息だと労いの言葉をかけ、村へと荷馬車を進める。

現在の時刻は夕方4時半くらいだ。想定の範囲内の時間配分だから、今出れば夜——7時半——くらいには村へと帰れるだろう。


皆には頑張ってもらったし、普段とは違うことをしているからかなり疲れているだろうな……。

帰ってすぐに何かを振る舞うとかはさすがに出来ないけど、明日以降で何か労ってあげたいなぁ……。


とか考えているうちにガタゴトと馬車に揺られているうちに意識が遠のいていくのを感じ、自らにも疲労が溜まっていることを自覚しながら眠りに落ちる——。




「——さん。チサノさん、着きましたよ。起きてください」


「ん……あ、ヘラ……? 着いたのか……」



辺りは既に日の光は無く、暗闇に包まれている。だが真っ暗ではなかった。

それはほのかな明かり明かりが灯っており、それはいくつかの松明(たいまつ)によるものだ。

普段村の皆の夜は早く、あまり松明やランプ等は使わず早寝早起きが主である。



「はい。ほら、(よだれ)垂れてますよ」



何の躊躇いも無く俺の口元を自らの手で拭ってくれる。



「ちょ、大丈夫だって……子ども見たいじゃん……」


「ふふ、寝顔は子どもみたいでしたよ?」



そう言ってヘラは女神のような微笑みを浮かべる。

松明の明かりで照らされたヘラの顔が見え、不覚にもドキッとしてしまう。


ここが俺の部屋なら何事も無く終わってなかったぞ……美女と野獣になっちゃうぞ……。



「ほ、ほら早く降りよう。皆待ってるんじゃないか」


「そうでしたね。行きましょうか」



ヘラと共に荷馬車から降り、久しぶりの——と言っても半日程度だが——村に足をつける。



「あー良く寝たなー。って言っても寝心地は良くないから体中バキバキだなぁ……」


「チサノさん、お疲れさまでした。無事到着出来て何よりですね」


「アルフも長時間お疲れ。俺は寝ちゃってたみたいですまないな」


「いえいえ。領主様なんですからそれくらい気にしないでください」



荷馬車を降りてアルフと話していると後ろでも伸びをしたりリラックスしてる者の姿が伺える。



「皆ご苦労様。もう遅いから今日は帰ってゆっくり休んでくれ」



村人達にはもう休んでもらうことにする。

王都より派遣してもらった建築士達にも住まわせる家に案内しようと思っていたら村長——ヤン爺——がどこからともなく現れた。



「チサノ殿、長旅ご苦労様ですじゃ。こちらが建築士の方々ですかの?」


「おお、ヤン爺いたのか……。この人達がそうだよ」



村人とは別に数十人の一行が辺りを伺いながら一つの塊になっている。

見知らぬ土地に来て、尚かつ視界の悪い現状に多少の不安があるのだろう。



「じゃったら早速儂が家に案内しようかの。皆疲れておるじゃろう。ご飯も用意してあるからこの後のことはお任せくだされ」


「おお、ありがとう! 助かるよ」



ヤン爺の配慮のおかげでスムーズにことが運びそうだ。

建築士達には明日朝に資材を運搬するようにだけ伝えておき、残りをヤン爺に任せこの場を後にし屋敷へと戻りすぐに眠りについた——。






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