第23話 王都の食べ物。そして謁見へ。
「貧困街って、本当に聞いてた通りだな」
「だろォ。まあこんな雰囲気だが、俺らの村よりかはまだマシだぜェ」
検問所を通ると大通りが広がっており、その両脇から貧困街が広がっている。
表現するとしたら、雑然とした無秩序な雰囲気、といったところだろうか。
重々しい雰囲気や路傍に物が乱雑にしてはいるが、これでもちゃんと生活はしているそうだ。
やはり労働や食料などが行き届いていないのだろうか、と改めて感じるな。
かといって、今俺が出来ることはなにもない……。今は国王様の謁見がなにより優先だ。
「……先を急ごう」
「はい……」
ダンテとアルフも神妙な面持ちをしている。
きっと以前までの自分達と照らし合わせたのだろう。似たような環境に身を置いていたわけだしな。
大通りをしばらく歩くと、ある所を境に綺麗に整備された町並みが広がる。
通りには出店もでており、人通りも多い。
「は〜。こっからがほんとの王都ってわけかー。さすがに綺麗な町並みだな」
「ここからはもうずっとこんな感じですよ。ただし技術はありますが、今となっては食べ物に関してだけは僕らの村の方が何倍も美味しいですけどね」
「ここの食べ物はそんなにまずいのか?」
「栄養はあるのかも知れませんが、あまり褒められるものではないですね。昔貯金をやりくりして、念願叶って食事をしたんですが、ガッカリしたのは今でも鮮明に覚えています」
「俺も一度だけ食べたことあるが、まァうまくはねぇよな。栄養はあるのかもしれねェが」
「お前らどんだけ栄養推しだよ。でもこんだけ発展してて食事がまずいって考えられないけどなぁ」
「試しに何か食べてみますか? 見事に期待を裏切ってあげますよ」
「そんなこと自信満々にいわれてもなぁ!」
アルフが提案してくれたので軽く何か食べてみることにした。
市場調査も大切なことだからね。うん。決してお腹空いたからとかじゃないから!
「じゃあ手っ取り早くそこのお店に入りましょう。ダンテはここで馬車と荷物を見張っていてください」
「おう」
そう言いいダンテを残し2人で店に入る。
「いらっしゃい! 好きなことにかけてくれ!」
髭を蓄えたふくよかな中年大男が出迎えてくれた。
なんか、感じのいい人だな。
ただし店の中に客は俺たち以外は誰もいない。
「ほら、メニュー表だ。決まったら呼んでくれよ!」
大男が渡してくれたメニューを見る。
ちなみに一応この世界の文字は読めるようで、何ら問題ない。これは神様のサービスなのか何なのかは、神のみぞ知るってとこだろう。
「アルフ、どれがいいんかな? どれも聞いたことないから分かんないや」
「じゃあせっかくですしこの街の主食にしましょうか」
「ああ、頼む」
アルフが大男を呼び、注文してくれた。
すると程なくして大男が戻ってきた。早いな。
「おまたせ! 熱いから気をつけてくれよ!」
「はい。ありがとうございます」
テーブルの上に置かれたお椀を見やると、どろりとした白粥のようなものが入っていた。
なんか見たことあるようなないような……。この世界にきて、村長の家で初めて口にした食べ物に似ている……『いも』こそ入っていないみたいだけど、同じ物……?
スプーンで掬い、口へ運ぶ。
「…………」
「どうですか?」
「…………」
「まあそんな感じですよね。この店の主人には申し訳ないですが、王都の主食ですらこんな感じです。ですから食べることってあんまり楽しいとは思っていないんです」
「なるほどね」
正直なところ、不味くはない。だけど、美味しくもない。
多分これは穀物を水で煮たものだろう。ちょっぴり塩っ気もある。
たべたことないけど、『オートミール』見たいな感じかな?
でもこれは調味料か何かでなんとかなる感じのものじゃない気がする。この『穀物』自体のポテンシャルに限界があるのだろう。
お椀に入ったそれを全て胃の中へと押し込み、食事を終える。
まだこれしか食べていないけど、なんとなくこの国の食事レベルというものを理解した。
「親父さん、ありがとうございました。また来ますね」
大男の親父に挨拶し店を後にする。
「おまたせダンテ、それじゃあ向かおうか」
「おう。どうだったァ?」
「正直美味しくはないな。食べれなくはないけど……」
「だろォ」
先ほどの感想だったりを話ながら王城へ向かった。
ーーーーーーー
ーーーー
ーー
しばらくすると、立派な城が見えてくる。
おお、これが……。
お城なんて現実に見たことがないからびっくりだよ! 海外旅行とかも全然行ったことないから余計新鮮!!
馬車を止め、3人が降りる。
そして衛兵の元へ行き話しかける。アルフがだ。
「何か用か?」
「はい。この度、北の村からやって参りました。こちらは現在私達の村の領主代理をやっているサカモト・チサノ様です。本日は国王陛下に謁見を願いたく馳せ参じました。こちらに書状も準備してございます。ご確認いただけますようお願いいたします」
「領主代理? 書状を確認させてもらう」
「お願いいたします」
衛兵に書状を渡し、確認してもらう。
「ふむ。これは村長が書いたものでよろしいか?」
「はい。ここ数年の間領主不在だったため、代理として村を支えてもらっています」
「代理……か。そういうことなら。よし、わかった」
「それと、こちらに献上の品を準備してあります。私達の方で直接献上したいのですが、確認をお願いしてもよろしいですか?」
「ほう。お前達に献上できる品があるというのか。確認しよう」
衛兵に積み荷を見せる。
「な、これは?! 食べ物か?! こんなにたくさんの食べ物をお前達が用意したというのか?!」
「はい。こちらのサカモト様に手解きを受け、現在私達の村で育てています。今回はそのことも国王陛下とお話ができればと思っております」
「な、なるほど……にわかには信じがたいがここにある以上そういうことなのだろう……。だが食べ物である以上毒味はさせてもらうぞ」
「もちろんです」
そういうと衛兵がいくつか荷物から作物を無作為に選び、他の憲兵に場内へと運び込ませる。
一応簡単な調理方法や食べ方だけ伝えておいた。
「しばしここで待たれるが良い」
しばらく待たせてもらった。
30分くらいだろうか、経った頃に先ほどの憲兵が戻ってきて俺達とやり取りをしていた衛兵に耳打ちをする。
「な、なんだと……っ! 実に興味深いな……。よし! お前達の謁見を許可が出た!」
「ありがとうございます」
検問の時と同じように、アルフが不安げなく許可を得る。
「こちらも準備があるため、もう少し待っていてくれ」
「わかりました」
きっと国王様の準備があるのだろう。
しばらく待った後、俺は心臓を打ち鳴らしながら入城する。
いや、ていうか国王様に会うって結構緊張するよね。
ラノベとか漫画だとよく異世界召喚とかしてすぐ王様に会ったり、けっこうため口で話す人いるけど、普通に考えたら無理だからね!
俺は軽く震え緊張しながら謁見の間へと足を運ぶ——。




