第15話 日本人としての念願。
今回は少し説明が多いかもしれません……。しかし必要なのです……どうかご容赦を……。
恐るべき『熊』との戦いから1週間。
今、俺の目にうつっている文字は間違いではないのか。
何度も確認した。5度見くらいして、『ウィンドウ』を出したり消したりもした。
【種創造】スキルの一覧にそれが書き加えられたのだ。
「——『種麹』……」
まじか……種は種でも、『種麹』って『菌』だぞ……。
今更だけどなんでもありだな……。
だけど、『種麹』さえあれば、『米』が無くても、面倒くさい行程を踏まなくても『醤油』や『味噌』を作ることができる!!
「善は急げ、だな」
少し時間はかかるが、念願の『醤油』作りに取りかかる。
「【種創造】! 『大豆』!」
大量の大豆を作り、水洗いをする。
そして綺麗な水に浸ける。
「よし、これで24時間放置だ」
意気込んだものの、初日はこれだけで終わる。
−−そして次の日。
ここからが本番だ。
浸した水ごと大鍋に移し、2,3時間茹でる。
その間に、
「【種創造】! 『小麦』!」
小麦を収穫し、フライパンで『炒る』。
最初は平べったかった『小麦』だが、『炒る』ことでぷくっと膨れ上がる。
『炒った』小麦を砕き、そのまま冷ます。
次は、と。
「【種創造】! 『醤油種麹』!」
生成し、冷ました小麦に加える。
冷ましてから入れないと、『菌』が死滅してしまうのである。
そして先ほど茹でていた『大豆』の水分を飛ばし、急いで冷ます。
理想は40°以下。
その後先ほどの『醤油種麹入り小麦』を『大豆』に振りかけ、しっかりと混ぜ合わす。
その『大豆』に煮沸消毒をした布を被せ、『培養』させる。
途中で『大豆』の温度が上がりすぎないように適度にかき混ぜ、放熱させる。
−−約48時間後。
「いい感じだな」
『大豆』の表面に緑色の胞子が付着しているのを確認する。
これで『醤油麹』が完成した。
「やっぱ『麹』を作るだけでも一苦労だな……ていうか時間かかる……」
でも苦労すればするほど、達成感はあるからな。がんばるぞい。
できた『醤油麹』を袋に詰めて瓶にセットし、塩水を足し混ぜる。
そして空気を抜き、保管する。
このまま放置するのだがたまに混ぜてあげてるのはかかさない。
「ふぅー。やっと終わった……疲れたぁ……」
これで作業は一旦終わりである。
このまま放置をするのだが、その期間は、
「はぁーでもあと『10ヶ月』も待たなきゃだめなのかぁ……」
そう、実はここから『10ヶ月』は熟成させなければいけない。
ちなみにもっと熟成させればさらに美味しくなる。
普通自分では作らないからあまり知られていないけど、中々に時間のかかる代物だよな……。
今すぐはできないが、この後熟成したらサラシで絞り出して『生醤油』の完成だ。
そのままでは保存が効かないので一度火を通し、微生物の活動を抑える。
それを冷まして瓶に入れ一週間。
これで正真正銘の『醤油』の完成である。
「とりあえずこれを使えるのが一年後って考えると、もっと大量に作っておくべきだな」
今まで何気なくスーパーで買って使ってたけど、一から作るってめちゃんこ大変だよなぁ。
醤油職人さん。神感謝。
——そして俺はこの後も『醤油作り』に没頭するのであった。
ちなみにもしやと思い、スキル【促進】を試してみたのだが効果はなかった。
成長を促進させて退化するまで、という考えだったがどうやらうまくいかなかった。
もしかしたらスキルレベルによるのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
不思議だ……。
ついでに、作るのに同じくらい期間を要する『味噌』の仕込みもしておく。
使用するのは醤油とあまり変わらず、『大豆』『麹』『塩』の3種類で作れる。
行程は……醤油にすこしだけ似てるので割愛させてもらうとしよう。
ーーーーー
ーーー
ーー
「よーし! これで仕込みは完了だ! 一年後が楽しみだ!! あー疲れた疲れた! フィアとシルでも呼んでなんか食べるかなー」
どちらかというと『醤油』と『味噌』作りで蓄積した疲労−−主に精神的な−−を癒してもらいたい願望が9:1の割合で存在していたのは内緒だ。あ、もちろん9が癒し願望ね。
——こうして日本人として念願の『醤油』『味噌』作りを終える。
全国の『醤油』『味噌』職人の皆様、本当にご苦労様です。
またも届かぬ声を異世界で響かせる−−。
この場を借り、全国の醤油・味噌作り職人の方々へお礼申し上げます。私はこうじ味噌が大好きです。
それとともに味噌の説明を割愛させていただきましたが、謝罪申し上げます。もしあれなら書きますので……。
それでは次回にご期待を!




